競争激化する中国ECから学ぶ攻略のヒントとは

競争激化する中国ECから学ぶ攻略のヒントとは

中国ECマーケットは100兆円を大きく超え、世界的に見ても圧倒的な規模を誇りながら成長率も30%を超えるなど、世界中から非常に大きな注目が集まるマーケットです。
超巨大な市場環境で競争は激化し、中国ECユーザーの目も厳しくなっており、いかに信頼できる情報を提供できるかがECプラットフォームとして売上を大きく左右する重要なポイントとなっています。

特に売りの強い広告は嫌われ、信頼できる人からの口コミが重視されることから、中国版Instagramと呼ばれるREDに注目が集まっていましたが、その信頼度を揺るがす事態が中国でニュースとなっています。

今回は、そんな中国ECで話題となっているニュース記事から、現在問題視されている2つの重要なキーワードについてご紹介しましょう。

http://www.ebrun.com/20190513/333572.shtml?eb=com_chan_lcol_fylb

中国ECでキーワードとなる『KOL』と『种草』

中国では、ある領域で商品に詳しい人や信頼度の高い個人が、中国のSNS、Weibo(微博・ウェイボー)で商品紹介を行ったり、LIVE配信を行ったりして商品の販売促進に繋げ、広告収入などの報酬を得るKOL(Key Opinion Leader)という職業が成り立っています。KOL専門の事務所が存在し、人気KOLの単価がLIVE配信1時間で100万円を超えるなど、人気の職業となっています。

そして、もう一つのキーワードとなる『种草』とは、近年中国で流行しているネット用語としてよく用いられている言葉で、日本語の解釈では『商品の優れた品質を宣伝して人を惹きつける行為そのもの』を指し、動詞として使用されることが多い言葉です。日本でインスタ映えする対象を『映える』として使用するような感覚に近く、中国でよく用いられるようになりました。この『种草』をビジネスモデルにしたのが、中国版Instagramと呼ばれるREDだと言われています。

しかし、人気職業であるKOLの人数は肥大化しており、REDで『种草』に熱中して取り組む人数は急激に増大。管理が行き届かず低品質な記事が多くなったことから、REDの信頼が揺らぐ事態にまで発展していると報じられているのです。

特に問題視されているのが、偽情報と禁止カテゴリへの投稿記事です。REDは元々高品質なコミュニティサイトとして運営されていますが、最近多くのメディアで『种草』に関する偽情報があると報道されており、いいねやリツイートが二次的に操作できることが問題視されています。また、たばこやサプリに関する投稿には規制が入っており、SNSへの投稿が禁止されるなど厳しくなっているにも関わらず、REDへの禁止カテゴリの記事が散見されるなど、プラットフォームとしての信頼度低下が続いているのです。

業界関係者によると、REDの代筆や偽物投稿はわずか十数元という低コストで発注可能なほか、発注から3時間で投稿・オンライン上で確認できるという手軽さもあり、問題が深刻化していると語ります。このような偽造『种草』の量産に加えて、REDには9.5万件のタバコ関連の投稿があるということがWeiboのランキングニュースに出たことで話題に火が付き、多くの人がその事実を知ることになりました。

現在タバコに関連するネット上の投稿はREDから消えていますが、「RED_ライター」と検索すると、いくつかのコミュニティサイト上で執筆代行募集の求人情報がヒットしてしまう状態で、なかなか消えない状況が続いています。

それまでREDは、良質なUGC(画像や動画などユーザーが生成したコンテンツ)をシェアするサイトとして信頼されてきました。しかし、消費者が見ると偽造『种草』の記事はすぐに『広告っぽい』と判断できる状態になっており、不信感を拭うことができない状態に陥っていたのです。

REDが行った2つの対策

このような状態を打開すべく、REDはKOLの基準引き上げと不正行為への対応を行いました。5月10日にREDが発表した内容によると、ブランドパートナー(=KOL)に対するプラットフォームのアップグレード説明書を発表。その内容は、KOLの定義となる基準を上げるというもので、フォロワー数と露出量に対して高い要求を行うというものでした。

REDには6,000人のKOLがいましたが、この基準に合わないKOLはブランドパートナーとしての資格を取り消されることとなり、その影響を受けたKOLは2,000人に達すると言われています。資格を取り消されると広告依頼を受けることができないため、この発表を受けたKOL達は『ブラックフライデーを迎えた』と語り、危機感を感じているようです。

また、数十人の反カンニングチームと500人の審査チーム、100セットのテンプレートからなる代筆・偽トラフィック造りなどのカンニング行為を防ぐ大規模な対策を進めており、2019年1月から3月までに不正ライターのブラックユーザーを138万件、不正行為を行ったユーザーを38万件、不正投稿121万件を処理したと発表しています。

中国のEコマースアナリスト李成東氏によると、「REDは中国の人気口コミサイト『大众点评』の買い物分野に相当し、信頼度の高いユーザー層が多く集まるため、企業の商品宣伝の標的にもなりやすい」と語ります。しかし、客観的には偽記事問題はREDの責任ではないものの、ユーザーからの信頼は危機的状況に直面し、ユーザー流失や成長の鈍化などを引き起こす可能性があるとし、「プラットフォームとしての活性度を保証すると同時に、コンテンツの品質と豊富さを保証し、管理運営を最適化し規範化させるべきである」と語っています。

苦戦するECプラットフォームとしてのRED

REDの歴史を遡ると2014年8月に『福利社』という、InstagramにおけるECカートのような自営事業を試し始めたのがきっかけで、現在もREDの買い物かごを見るとオフィシャル商品には『福利社』と表示してEC事業を行っています。

しかし、EC分野は激しい競争に直面しており、艾媒諮問(iiMedia Research)が発表した「2019年第1四半期市場監視レポート」によると、Kaola・T-Mall国際・JDグローバルといった巨大ECプラットフォームが目立ち、3社で市場の60%以上を占め、REDのシェアはわずか6.5%というのが現状です。

REDのユーザーは2億人と、数字だけ見ると非常に多くのユーザーに利用されているように見えますが、RED設立の3年後に設立されたPinduoduo(拼多多)の2019年ユーザー総量は4億人近くと、他のECプラットフォームに比べると中国国内での成長スピードでも劣っています。REDのユーザー層も国内で成熟したECビジネス業態であるT-MallやJDと同じため、同じ土台で大手と比べるとREDには競争優位性がなく、特徴がないプラットフォームと言えます。

アナリスト楊洋氏によると、「天猫を運営するアリババは、REDに投資しているためREDがある程度トラフィックやアクセスを天猫に流入させる必要と責任があり、そのトラフィックの流出で、自営に影響が出ていることも確かだ」と述べており、REDのEC事業は苦戦が続く状況となっています。

ユーザーの消費行動から見る中国EC攻略のヒントとは

3年間REDを利用しているユーザーの声を見てみると、REDはコミュニティサイトとして大好きだが、『种草』になってからは、基本的にRED上で気に入った商品があってもRED上では買い物せず、信頼できる代理購入先や越境プラットフォームで買い物をすると言います。代理購入を行っている人も、商品を購入する際はRED上でのシェアを参考にするものの、購入自体はREDでは行わないようになっていると言います。

中国のECプラットフォームも価格が透明になってきており、すぐにネットで調べられるようになりました。価格と品質に対して強い関心を持つユーザーが増えているため、プラットフォーム自体の信頼度が増している反面、キャンペーンやイベント次第で購入先が変わるなど、プラットフォームに対する忠誠度は低く、同じ店で買う人は少なくなっています。

特に前述したように、偽物に対しては非常に敏感になっており、少し相場と値段が安いだけでも不信感を募らせて比較することが当たり前の状況で、これらを確認するためのルートも多く、証明書があるか確認するなどユーザー側に知識もついてきたため、一つの商品を購入するために、3つ以上のサイトを見て買うのが当たり前となっているのです。

このような中国ECユーザーの消費行動は、中国ECを攻略する上で非常に重要な情報と言えるでしょう。情報収集先と購入先を分けて捉え、確かな商品を信頼感のある情報と共に提供することが、消費意欲がまだまだ旺盛な中国ECユーザーから求められているのです。

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