ショッピングテックの破壊と創造

私の前著『2025年、人は「買い物」をしなくなる』は、店に行くことや現金を用意することなど、さまざまな「買い物のプロセス」が大幅に省略され、やがて「買い物をしている」という感覚さえ消えることを指して〝「買い物」をしなくなる〞と表現した。
これは、デジタル消費の専門家として、米国・中国の動きを現地で観察し、多くのEコマースのコンサルティングに携わってきた経験から導き出した答えだった。

内容にも書名にも大きなインパクトがあったのか、おかげさまで約4万人を超える方々にお読みいただき、刊行後には、想定していた以上のさまざまな反響を頂戴した。
同書は2019年11月に刊行したものだ。つまりその内容は、2020年の世界の激変を経験する前に書いたもの(2020年6月の第7刷以降には新型コロナウイルス感染症に関して数行追記)だったが、コロナ禍の中でいただいた読者の方々の反応は特徴的だ。

その多くは、「コロナでまさに本の内容の通りになっている」といった声だった。

時代が「早送り」されたことで、「買い物」の潮流にも変化が生まれている。
その動きを確認しつつ、これから数年先、10年先、私たちの買い物がどう変わっているのか

「2025年にこうなる」と予測していることが、
コロナ禍によって5年も前倒しで起こり始めている

われわれの身近な「買い物」についてのさまざまな変化を取り上げつつ、5年あまり未来を鋭く予測していた。しかし、「人が外に出なくなる」など同書の大きな予測のいくつかは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、図らずも2020年のうちに現実化してしまった。

つまり、「2025年にこうなる」と予測していることが、コロナ禍によって5年も前倒しで起こり始めているのだ。

本書では、こうした大きな変化を踏まえながら、「人と人のつながり」をテーマに設定。

・Eコマース(インターネット通販)が急成長する中国で起こっている「リアル店舗」出店ブームの謎
・全米で広がる、顧客が足を運ばない「ダークストア」とは?
・密かに増加する「モノを売らない店舗」
・今やレビューをまったく気にしない人はたった3%だけ
・創業わずか2年半でユーザー3億人を超えた中国「ピンドゥドゥ」成長の理由
・Amazonの無人店舗「Amazon Go」が狙う「次の展開」とは?

など、世界の最新の動きをわかりやすく紹介していく。テレビなども凌駕し、デジタル時代に最強の訴求力を持つようになった「口コミ」。その歴史なども振り返りつつ、われわれの身近な「買い物」を科学し、あらためて2020年代を予測する一冊である。

著 者

望月 智之

もちづき ともゆき

望月 智之

望月 智之

もちづき ともゆき

1977年生まれ。株式会社いつも.取締役副社長。
東証プライム市場の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつも.を共同創業。
同社はEC・D2Cコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。

自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。
消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。
ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、
「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

目 次

  • 序 章 「デジタル時代の買い物」を科学してみる
  • ・デジタル時代に広がる6つの「買い物の仕方」
  • ・兆円単位の売上が実店舗からデジタルに流出!?
  • ・自動化される「目的系」、SNSで広がる「発見系」
  • ・買い物はデジタルのあとで
  • ・同じ「目的系」のAmazonと楽天の大きな違い
  • ・TikTokでバズった「泡動画」の衝撃
  • ・SNSとの相性がいい「発見系コマース」
  • ・「目的系コマース」との品質の差
  • ・「人のつながり」よりも「コトのつながり」
  • 第1章 2020年、私たちの買い物はこう変わった
  • ・ついに現れた「100%ネットで買い物男」
  • ・急増した近所とオンラインの買い物
  • ・リアルの一等地からデジタルシェルフ一等地へ
  • ・店員のデジタル武装化が始まる
  • ・レビューをまったく気にしない人は3%だけに
  • ・レビューなしでは実店舗の買い物もできない!?
  • ・オンラインで語り合う「ソーシャル映画鑑賞」
  • ・PtoCで「1億総メーカー時代」が幕を開ける
  • ・コロナでイノベーションは起こらなかった
  • 第2章 生活者をつなぐ口コミはどう進化したか
  • ・電話の普及で最初の口コミ革命が起こった
  • ・ポケベルで文字による「つながり」が可能に
  • ・情報革命(インターネット)での口コミの変化
  • ・匿名でもいいから「誰かの本音」が知りたい
  • ・口コミがビジネスとつながったブログ時代
  • ・日本人がTwitterを好きな理由
  • ・中国発ショートムービー系SNSが世界を席巻
  • ・今後の「口コミの一等地」はどこに?
  • ・口コミのソーシャル化でレビューの価値が向上
  • ・口コミの根っこは「間違えたくない」こと
  • 第3章 EC先進国の米中で今、起こっていること
  • ・Eコマース市場が伸びる中国で出店ブームの謎
  • ・ライブコマースが日本で流行らない理由
  • ・店舗ビジネスが衰退する米国の「ダークストア」
  • ・Amazonはもはや「最速」ではない
  • ・ウォルマートは広告メディアとして成長する
  • ・Amazon Goの「次の展開」とは?
  • ・Amazonが与える「高い満足度」の秘密
  • ・大手に割って入る「goPuff」のガレージ戦略
  • ・ウォルマートとアップルの社名変更の意味
  • ・リーバイスが「ソフトウェア会社」になる日
  • ・ルンバは掃除機から家のプラットフォームに
  • ・メーカーはプラットフォーマーを目指す
  • 第4章 リーディングカンパニーが最前線で仕掛けていること
  • ・「GAFAからの通知」に支配される私たち
  • ・マックシェイクはなぜ飲みにくいのか
  • ・「目的を買う」ショッピングパーパス理論
  • ・実は意外にデジタル化が進んでいるユニクロ
  • ・メルカリが世界の覇者になる日
  • ・循環を生み出すメルカリの「中毒性」のその先
  • ・ワークマンの「1人でなく2人で来る店づくり」
  • ・ボタニストは4点以下の商品を〝出さない〟
  • 第5章 2030年、買い物の未来
  • ・昨日の記憶は脳の「ラベリング」が鍵になる
  • ・脳からデジタルへ、記憶領域の拡大
  • ・現実が映画『レディ・プレイヤー1』に追いつく
  • ・悪人も「善人にならざるを得ない」スコアリング
  • ・「モノを売っていない店舗」が増加する
  • ・Eコマースに勝てるのは小商圏ビジネスの店舗
  • ・「目的」「発見」から、次は「楽しい」へ
  • ・「楽しい」から生まれる、企業との「共創」
  • ・買ってから始まる顧客体験
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