Amazon「Buy with Prime」がもたらすD2C革命

Amazon「Buy with Prime」がもたらすD2C革命

自社D2Cブランドを運営する経営者の皆様にとって、決済画面でのカゴ落ちや、煩雑な入力フローによる離脱は長年の課題ではないでしょうか。

自社サイトは顧客との直接的な繋がりとデータを獲得できる生命線ですが、一方でAmazonが提供する圧倒的な利便性と信頼性(顧客体験の壁)には及ばないのが現実です。

このジレンマを解消するソリューションとして登場したのが、Amazonの「Buy with Prime」です。これは単なる配送オプションの追加ではなく、ECの勢力図を塗り替えるインパクトを持っています。

※重要なお知らせ(2025年12月現在)
本サービスは現在、米国Amazonプライム会員のみ対象ですが、日本市場への上陸を見据え、今からその戦略的価値を理解しておく必要があります。

Buy with Primeとは:自社サイトにAmazonのインフラを移植する


Buy with Primeは、自社D2Cサイトに「Amazonプライム会員向けの決済・配送オプション」を導入できるサービスです。

これにより、事業者は自社ブランドの世界観を維持したまま、Amazonの強力な物流網と決済システムを自社サイト上で利用可能になります。「自社サイトかAmazonか」という二者択一の時代は終わりを告げました。

【重要】Amazon Payとの決定的な違い

混同されがちですが、「Amazon Pay」とは戦略的な役割が異なります。

  • Amazon Pay: 決済情報の入力省略(決済の利便性)
  • Buy with Prime: 決済の利便性 + 「プライム配送(翌日配送・送料無料)」の提供

つまり、Amazon Payでは解決できなかった「配送スピードや物流品質への不安」という購入のハードルを、Buy with Primeは根本から取り除くことができます。

顧客体験の革新:なぜCVRが劇的に向上するのか


ユーザー視点では、Buy with Primeは「面倒」と「不安」を徹底的に排除することが可能です。

圧倒的な利便性と信頼のエンブレム

新規サイトでの会員登録や住所入力は、ユーザーにとって最大のストレスです。Buy with Primeなら、使い慣れたAmazonアカウントでログインし、数クリックで注文が完了します。

さらに、自社サイトに「プライムロゴ」が表示されることで、「Amazon品質の配送と保証」が約束され、初見のユーザーでも安心して購入ボタンを押すことができます。

米国での先行事例では、コンバージョン率(CVR)が平均25%向上したというデータも出ています。

D2Cにおける「独立性」と「信頼性」の両立戦略


Buy with Primeの真価は、売上向上だけでなく、中長期的な資産形成にあります。

「顧客情報(1st Partyデータ)」の獲得

Amazonマーケットプレイスでの販売と異なり、Buy with Primeでは自社サイト経由で顧客情報(メールアドレス、注文履歴など)を直接獲得できます。

これにより、Amazonの集客力や物流を利用しながら、CRMやリピート施策は自社でコントロールするという、理想的なデータ戦略が可能になります。

CVRが25%した事例の戦略的意味

CVR改善により広告費の適正化が進めば、浮いた予算を新商品開発やブランディングへ再投資できます。ただし、CVR向上はあくまで手段です。本質的な目的は、「質の高い顧客データの継続的な獲得」に寄与することにあります。

導入のリスクと対策:コストと依存のバランス


魅力的なサービスですが、導入には冷静な判断が必要です。

デメリットとリスク

1.物流のAmazon依存: FBA(Fulfillment by Amazon)の利用が必須となるため、Amazonの手数料改定や規約変更の影響を直接受けます。

2.コスト構造の複雑化: FBA保管料、配送手数料、Buy with Prime利用料などが発生します。CPA(顧客獲得単価)の改善分でこれらを相殺できるか、厳密なシミュレーションが必要です。

3.データ統合の難易度: 獲得したデータを活用するには、Amazon Marketing Cloud (AMC) 等を用いた高度な分析環境が求められます。

※ECの専門家からの提言としましてデータは獲得するだけでは意味がありません。
弊社では、AMC活用を含めたデータ統合・分析ツールを提供し、これらのお悩みを解決するサポートを行っています。

成功へのロードマップ:構築すべき「360度顧客理解」


Buy with Prime導入を成功させるための3つの重要戦略を提言します。

1.データ統合環境の構築(AMC活用)
自社サイトのデータとAmazonのデータを統合し、顧客を深く理解する必要があります。データレイクの整備や分析人材への投資は、将来の競争優位性を築くために不可欠です。

2.ブランドコンテンツへの投資
決済の利便性が担保された今、差別化の鍵は「ブランド体験」です。商品の背景やストーリー、サステナビリティへの取り組みなど、Amazonの商品ページでは伝えきれない魅力を自社サイトで訴求してください。

3.ロジスティクスの二重化(リスク分散)
全ての在庫をAmazon(FBA)に依存するのはリスクがあります。

  • 高回転商品・新規向け → Buy with Prime (FBA)
  • 限定品・高単価商品 → 自社物流(独自の梱包体験など)

このように商材や目的に応じて物流を使い分ける戦略が有効です。

結論

Amazonの「Buy with Prime」は、D2Cブランドに「独立性の維持」と「Amazonの利便性」の両立をもたらす画期的なソリューションです。

しかし、導入するだけで成功するわけではありません。「利便性」はAmazonに任せ、自社は「ブランド体験」と「データ活用」に徹底的に注力する。この明確な役割分担こそが、次世代のEC戦略の要となるでしょう。

Amazon専門チーム
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株式会社いつもが誇るAmazon専門チームが、Amazonにおける最新の集客支援の施策や運用のポイント、広告戦略についてお送りします。

Amazon専門チームは、Amazon専門のマーケティングセンターとして、全国のAmazon運営企業から大手メーカーまで豊富な実績を有しています。Amazon社内の担当者と都度打合せを行っており、現在のAmazonの動向や今後の動きなどを把握し、「今」ではなく「その後」の動きに合わせた対策を行うことができるのが強みです。

本ブログでは、米国での最新事例から、今後日本でも起こるであろうAmazonでの対応策まで、幅広くお伝えします。

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