EC/D2C関連法制の基礎知識②~知的財産権
ECやD2Cに係るビジネスはB2B、B2CそしてC2Cとその形態を多様化しながらその取扱製品の種類・量ともに取引を拡大しています。またその拡大に伴い、様々な関連する法律による規制を受けるようにもなっています。
EC/D2C関連法制の基礎知識として、EC/D2Cを展開する上で注意すべき規制についてご紹介する本連載の第二回は知的財産権についてご説明します。
関連する法令を順にご紹介します。
特許法
発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とした法律です。
発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。
実用新案法
保護の対象が「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限られる点で特許制度での保護の対象と異なります。
自然法則を利用した技術的思想の創作であって、物品の形状、構造又は組合せに係るものを保護の対象としますが、方法に係るものは対象となりません。特許と比較すると、簡易な発明となります。
意匠法
製品の独創的なデザイン(意匠)を知的財産権(意匠権)として守る法律です。
意匠とは、物品(物品の部分を含む)の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものとされています。
商標法
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。商標を守ることは、ブランドイメージを維持し、もって産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護することにもつながるとされています。
商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが商標権です。商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。
著作権法
著作物などに関する著作者等の権利を保護するための法律です。著作権の保護期間は,原則として著作者の生存年間及びその死後70年間です。
インターネットに関連して、違法ダウンロード刑事罰化に係る規定も整備されています。
また、著作物の創作者ではなくとも、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利に著作隣接権があります。
不正競争防止法
不正競争防止法は、事業者間の公正な競業秩序の維持を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律ですが、知的財産権を保護する上でも重要な役割を果たしています。
不正競争行為に該当する例としては以下が挙げられます。
・周知な商品等表示の混同惹起行為(混同惹起行為)
・著名な商品等表示の冒用行為(著名表示冒用行為)
・他人の商品形態の模倣品の提供行為(形態模倣行為)
・営業秘密の侵害行為(営業秘密侵害行為)
最後に最新の動きをお伝えします。
経済安全保障法案
2022年3月現在、政府は経済安全保障法制に関する法案を通常国会にて成立させる見込みとなっています。
同法案では特許出願の非公開化が定められ、核兵器や先進武器開発に用いられるような技術など公にすることにより国家や国民の安全を損なうおそれが大きい発明などがこの対象となるとされています。
諸外国では、機微な発明の特許出願について、出願を非公開とし、特許出願人等による当該発明の取扱いに対して流出防止の措置を講じ、もって当該発明が外部からの脅威に利用されるのを未然に防ぐ制度が存在しており、日本においても同様の法整備が進むことになります。
(参照:経済安全保障法制に関する提言骨子(特許出願の非公開化)2022年1月19日 経済安全保障法制に関する有識者会議)
EC/D2Cにおいては取り扱う商材によって、関わってくる知的財産権に関する法律は変わってきますが、今回ご紹介した法律は特に重要なものとなりますので、ぜひおさえておきましょう。
以上、EC/D2C関連法制の基礎知識として知的財産権をお伝えしました。