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【消費行動考察シリーズ】 No.3  情報探索行為と消費行動の変化

【消費行動考察シリーズ】 No.3  情報探索行為と消費行動の変化

消費者の消費行動は様々な外的要因によって常に変化しています。したがってその適切な理解は自社の売上を最大化する上で必要不可欠と言えます。本記事は【消費行動考察シリーズ】と題し、消費者の消費行動を多面的に捉え考察を試みたいと考えています。

第1回目は小売の各業態別の売上推移から消費者のリアル回帰の状況を読み解きました。第2回目は、各商材やサービスに対する“消費者の支出額の変化”の視点から、コロナ後の商材カテゴリーごとの現状をさぐりました。第3回目の今回はやや目線を変えて、消費者の情報探索行為と消費行動の変化について解説したいと思います。

従来型の消費行動モデル


マーケティング業務に携わったことがあれば、一度は「AIDMA」と言う用語に触れたことがあるでしょう。AIDMAとは、Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字をとったものです。人間の購買行動はこの順序で行われるという考え方であり、米国で約100年前に産み出された購買行動モデルとして有名です。

またインターネット時代を反映した消費行動モデルとして、たとえば電通が提唱する「AISAS:Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)」など、これに類似するものがいくつか存在しています。それらに共通しているのは、まず分かりやすさでしょう。

それぞれシンプルに定義されており、自分自身の購買行動と照らし合わせて見た際に「なるほどそうかもしれない」と理解できるものとなっています。そしてもうひとつの重要な共通点として、「段階的な意思決定の進行」が挙げられます。つまり、消費者の購買意思決定はAttention → Interestのように人間の購買意欲が段階的に進むことを前提とした消費行動モデルと言うことです。

その一方で、SNSの形態と利用方法がさらに進化している状況下、消費者による情報取得が多様化する中にあって、購買意欲がAttention→Interestのように果たして段階的に進むのか、やや懐疑的に感じるマーケッターも一定数存在しているのではないでしょうか。

バタフライサーキットという新しい情報探索行動


Googleは独自のデータに基づくオリジナルの考察を行っており、その結果を「Think with Google」としてインターネット上に公開しています(https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/)。このなかで同社は「バタフライサーキット」という興味深い消費行動モデルを2020年に発表しています。同社はバタフライサーキットについて次のように説明しています。

「多くの場合で、情報探索行動は、現れたり消えたり、期間を空けて思い出したようにまた現れたり、また「このタイミングで、なんでまたそれを調べるの?」「結局、何も考慮していなかったそれを買っちゃうの?」など、マーケター側からするといわば“ちゃぶ台返し”のような行動が多発していることがわかってきたのです。」(原文のまま)出所:https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/search/butterflycircuit2/

この考えは、消費者の実際の情報探索行動は特定の順序だてがあるものではなく、多面的で無秩序な思考であることを意味しています。そしてGoogleは消費者がこのような情報検索行動をとる8つの動機を挙げています。

出所:Think with Google
さらにGoogleはこの8つの動機のうち①~④を“さぐる”動機として定義し、また⑤~⑧を“かためる”動機として定義しています。そしてこの“さぐる”動機と“かためる”動機による情報検索行為が、以下のようなイメージで繰り返されるとしています。その形状が蝶のようなことからこのモデルを「バタフライサーキット」と同社は名付けた模様です。

出所:Think with Googleによって表現されているモデル化をベースに作成

パルス型消費行動


Googleが「Think with Google」においてバタフライサーキット以外にもうひとつ提唱している興味深い消費行動論「パルス型消費行動」について紹介します。そのパルス型消費行動について同社は次のように説明しています。

「現代の日本人にとって、24 時間すべてが買い物のタイミングであり、空き時間にスマホを操作しながら瞬間的に買いたい気持ちになり、買いたいと思う商品を発見し、その瞬間に買い物を終わらせるという消費行動が広まっていることがわかります。われわれはこのような行動を「パルス型消費行動」と呼び、従来のような、ある程度時間をかけて買いたい気持ちを醸成させる「ジャーニー型消費行動」とは区別すべきと考えました。」(原文のまま)
出所:https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/app-and-mobile/shoppersurvey2019-2/

日常生活のふとした瞬間にあるものが突然欲しくなるといったことがないでしょうか。パルス(Pulse)とは日本語で脈拍、鼓動を意味します。パルス消費はその言葉通り、その瞬間的な鼓動の高まりによって購入に至る事象を説明したものです。Googleは膨大な自社データをもとに分析した結果としてこのパルス型消費行動というロジックに至ったと考えられます。ここで消費行動をよりリアルな感覚で把握できるよう、このパルス型消費行動と先述のバタフライサーキットを組み合わせて考えてみましょう。

次の図はタテ軸を購入意思の高まり、ヨコ軸を時間の経過として、時間の進み方に伴う購入までの道のりを表現したものです。パルス型消費行動は、ある瞬間の突発的な購入意思の高まりとともに購入へと突き進むことですが、その前段としてバタフライサーキットによる情報探索行動が行われていることを示しています。つまり、バタフライサーキットによってあれこれと思考を巡らせているところに、何らかのきっかけによって一気に購入に至るという消費行動になります。

このイメージ図からわかるのは、消費者による購入の意思の高まりはAIDMAのように段階的に順序だてて進行するのではなく、先述した8つの動機がぐるぐると周回しながら突発的なタイミングで一気に購入に至るということです。このように書くと「衝動買いと何が違うのか?」という意見もあるでしょう。衝動買いの場合は事前にバタフライサーキットが存在せず、その場の咄嗟(とっさ)の勢いで購入する行為です。一方パルス型消費行動の場合はバタフライサーキットと言う伏線が事前に存在した上で発生しているという点で、衝動買いとは異なると考えられます。消費者の購買行動が全てこのパターンに当てはまるというわけではないと思いますが、多くのケースで思い当たることが多いのではないでしょうか。

出所:当社作成

背景にあるSNSの存在


ではバラフライサーキットやパルス型消費行動が発生する背景は何でしょうか。想像するに恐らくはSNSの存在が大きいのではと考えられます。次の表は商品・サービスを購入(利用)する際の情報源に関する政府発表のアンケート結果です。これを見ると、非デジタルからデジタルに至るまでに多くの情報入手ルートが存在することを理解できます。

インターネットとスマートフォンの普及によってデジタルでの情報源が増したわけですが、そのなかでもSNSの存在感が際立っている点は注目です。例えばSNSでのクチコミ・評価は全体では31.1%ですが、年代別に見てみると10代は67.1%、20代は72.2%、30代は60.6%と非常に高い値となっています。特に20代の72.2%という数値は全ての数値の中でトップの値であり、いかにSNSが利用されているかがよくわかります。そもそも情報源がこのように多様化していることに加え、利用が深化していることで、消費者による情報探索行為がバタフライサーキットのようになり、かつそれがパルス型消費行動のような突発的な行動につながっているというのは容易に理解できるのではないでしょうか。

出所:「令和3年度消費者意識基本調査」(消費者庁)2021年11月実施 n=5,493

まとめ

最後に本記事のまとめを記します。

従来型の消費行動モデル
従来型の消費行動モデルとして「AIDMA」「AISAS」などが存在しています。

それらに共通しているのは、まず分かりやすさでしょう。また「段階的な意思決定の進行」と言う点も挙げられます。つまり、消費者の購買意思決定はAttention → Interestのように人間の購買意欲が段階的に進むことを前提とした消費行動モデルと言うことです。

バタフライサーキットという新しい情報探索行動
Googleは従来型の消費行動モデル特徴にあてはまらない「バタフライサーキット」という新しい概念の情報探索行動を提唱しています。

“さぐる”動機、“かためる”動機にそれぞれ分類される合計8つの動機がぐるぐると周回しながら消費者は情報探索を行っているという内容です。

パルス型消費行動
加えてGoogleは「パルス型消費行動」という消費行動論も提唱しています。パルス消費はその言葉通り、その瞬間的な鼓動の高まりによって購入に至る事象を説明したものです。

バタフライサーキットとパルス型消費行動を組み合わせてみると、消費者による購入の意思の高まりは段階的に順序だてて進行するのではなく、8つの動機がぐるぐると周回しながら突発的な購入タイミングで一気に購入に至ると考えられます。

背景にあるSNSの存在
そのような背景にあるのはSNSの存在でしょう。

SNSでのクチコミ・評価を年代別に見てみると10代は67.1%、20代は72.2%、30代は60.6%と非常に高い値となっています。買い物においていかにSNSが利用されているかがよくわかります。

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