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【消費行動考察シリーズ】 No.4 シニア層向けの関心事項と有効なマーケティング手段とは

シニア層向けの関心事項と有効なマーケティング手段とは

ご存じのように日本では、全人口に対する高齢者の比率は高まるばかりであり、世界に先駆けて高齢化社会が進行しています。そのような高齢者(以降シニア層)はインターネットの活用度が低いと言う固定観念を持たれている方は多いでしょう。しかしながら、シニア層のデジタルリテラシーは近年高まっていると言われています。

シニア層は日常の支出額を低く抑えている一方で、保有する金融資産額は大きく、特定の消費事項について強い関心を示しているとも考えられています。そこで本記事では、シニア層に有効なマーケティング手段としてYouTube等動画活用の可能性を題材とし、加えてシニア層がどのような消費事項に関心を持っているのか、考察を試みたいと思います。

※本記事ではシニア層の定義を60代、70代とさせて頂きます。

意外に高いシニア層のYouTube利用率


次のグラフは「LINE」「X(旧Twitter)」「Instagram」「Facebook」「Tik Tok」「YouTube」の年代別利用率に関するデータです。グラフを見ると、SNSツールごとに特徴が異なっていることがよくわかります。

例えば、LINEは全年代に万遍なく利用されています。これは連絡用ツールとして普及していることがその理由でしょう。X(旧Twitter)やInstagramは年齢が上がるにつれて利用率が減少していますが、20代はXの利用率が高く、30代~60代まではInstagramの利用率の方がXを上回っています。また、XやInstagramに比べれば、Tik Tokの利用率は全ての年代で少なく、利用率の上昇には伸び代があると思われます。

この中で注目したいのがYouTubeです。LINEを除けば全年代でトップの利用率となっています。特に60代で66.2%、70代でも34.4%の利用率であり、シニア層も積極的に利用していることがわかります。高齢者はデジタルが苦手という先入観があるかもしれませんが、YouTubeに関してはその考え方は適当ではないでしょう。

■年代別SNS利用率(%) 調査時点:2022年11月

出所:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

シニア層のYouTube視聴人口は1,540万人


ではそのYouTubeについて、シニア層の利用人口を算出してみましょう。

2023年12月時点の人口(概算値)を見てみると、60代の総人口は1,483万人、70代は1,623万人となっています。前項で説明したYouTubeの利用率をそれぞれ乗じると、60代のYouTube利用人口は982万人、70代は558万人と言う計算になりました。両者を合計すると、60代~70代のYouTube利用率は1,540万人という巨大な規模になります。

なお、この1,540万人というのは2023年12月時点での推定値です。日本では高齢化社会が進行しており、今後高齢者の人口は増加の一途を辿るでしょう。加えて、例えば既にデジタルに慣れ親しんでいる50代が加齢とともに60代にいずれシフトするため、シニア層のYouTube人口はますます増加すると思われます。

YouTubeは誰でも手軽に利用できるSNSツールです。シニア層の利用人口の絶対値が大きいため、シニア向けマーケティングでのYouTubeの活用は有効である可能性が想定されます。また、YouTubeに限らずネット系の動画を活用したマーケティング自体、有効ではないかと考えられます。

出所:「人口推計」(総務省)を基に作成

動画の平均視聴時間も長いことが判明


シニア層のYouTube視聴人口が多いことはわかりましたが、あわせて視聴時間の長さについても見てみましょう。

次のグラフは、動画系メディアの休日1日あたりの平均視聴時間に関するデータです。ご覧の様に高齢になるにつれテレビの視聴時間は増加しています。一方YouTube等ネット系動画については20代こそ261分と長いものの、40代~60代では150分前後と決して低い値ではありません。60代であっても見る人は2時間半という長い時間見ていることになります。

以上のことから、シニア層のネット系動画の視聴度合いは高いことが理解できます。したがって平均視聴時間の観点からも、シニアに向けた動画を活用したマーケティングの有効性は高い可能性が考えられます。

なお、このデータは視聴する人の平均値であり、視聴しない人の分は計算に含まれない点、ご留意ください。また70代についてのデータがないのですが、60代の数値から類推すると、あくまでも推測ですが100分前後、動画を視聴している可能性も考えられます。

■動画系メディアの年代別視聴時間(単位:分)
<休日1日あたりの平均値> 調査時点:2022年11月
※視聴する人の平均値であり視聴しない人の分は計算に含まれません

出所:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

シニア層の支出総額と保有する金融資産額の状況


はたしてシニア層はマーケティングのターゲットとして魅力があるのか、支出力と金融資産に関する統計データをもとに考察を試みます。

次のグラフは1世帯あたり平均年間支出総額(左図)および平均金融資産保有額(右図)に関するものです。60代になると定年退職等で離職する方々が多いことから、必然的に支出総額は50代をピークに以降は少なくなる傾向が見て取れます。また、子供が独立し家計への経済的な負担が小さくなっていることも、支出額の減少につながっていると想定されます。

一方で平均の金融資産保有額は、50代は1,705万円ですが、60代は2,217万円、70代は2,257万円と年齢とともにその額は上昇しています。ここで言う金融資産とは、預貯金および株式等の有価証券、個人年金保険等を指します。多くの方々が老後に備えて長期間貯蓄してきたことが、この数値から理解できます。

以上の点を総括すると、シニア層は日常生活では50代までのようなお金の使い方はしない一方で、興味や関心の強い事柄に関しては、保有する金融資産をもとに支出を行うといった消費行動をとるのではないかとの仮説が考えられます。

出所:「令和4年家計の金融行動に関する世論調査」(日本銀行金融広報中央委員会)を基に作成

出所:「家計調査」(総務省統計局)を基に作成

消費に関するシニア層の関心事項は何か?


それでは、シニア層はどのような消費に強い関心を示しているのか、見てみましょう。

次の表は60代、70代の方々が「現在意識的にお金をかけているもの」に関するアンケート結果です。60代、70代共にトップ5は「食べること」「医療」「健康・リラックス」「こどもや孫に関する費用」「理美容・身だしなみ」となっています。すなわち、キーワードとして“食”、“健康・医療”、“孫”、“美容”が挙げられます。反対に「ファッション」「家電・AV機器」に関しては60代、70代共に高い関心がないこともわかります。

これらの点をシニア層向けのマーケティングに活用されてみるとよいのではないでしょうか。その際、重要なマーケティング手段として先述の通りYouTubeを中心とした動画の活用が有効であると目されます。

■現在意識的にお金をかけているもの 調査時点:2022年11月

出所:「令和4年度消費者意識基本調査」(消費者庁)を基に作成

まとめ

最後に本記事のまとめを記します。

・YouTubeの利用率は60代で66.2%、70代でも34.4%と、シニア層も積極的に利用していることがわかります。高齢者はデジタルが苦手という先入観があるかもしれませんが、YouTubeに関してはその考え方は適当ではないでしょう。

・60代~70代のYouTube利用率は1,540万人という巨大な規模です。シニア向けマーケティングでのYouTubeの活用は有効である可能性が想定されます。また、YouTubeに限らずネット系の動画を活用したマーケティング自体、有効ではないかと考えられます。

・シニア層のネット系動画の視聴度合いは高いことが理解できます。したがって平均視聴時間の観点からも、シニアに向けた動画を活用したマーケティングの有効性は高い可能性が考えられます。

・シニア層は日常生活では50代までのようなお金の使い方はしない一方で、興味や関心の強い事柄に関しては、保有する金融資産をもとに支出を行うといった消費行動をとるのではないかとの仮説が考えられます。

・シニア層の消費に関するキーワードは“食”、“健康・医療”、“孫”、“美容”が挙げられます。

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