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小売のバイヤーに刺さる商品売込み時のポイントは、『店舗のコンセプト』(連載第1回)

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「デジタルシェルフ総研」バイヤー対談企画。
DtoC攻略のヒントとなる小売業界の仕入れについて、某スーパーマーケットチェーンでバイヤー経験を持つF氏に、株式会社いつも.取締役副社長の望月が伺いました。本企画では、小売店舗とECの「違い」と「共通点」からDtoCを成功させるカギを見つけ、今後の小売店舗とECの役割・共存について考えます。

株式会社いつも. 取締役副社長 望月智之
東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつも.を共同創業。自らデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集しながら、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、ブランド企業に対するデジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

元スーパーマーケットバイヤー F氏
関西の大手グループ系列のスーパーマーケットにて34年間勤務。バイヤー歴25年(カウンセリング化粧品、セルフ品、家庭用品等)、e-コマース営業部(ネット通販、ネットスーパー)部長2年担当。現在はセミナー講師やカウンセラーとして活動。

 

小売店バイヤーの主要な業務

まずはバイヤーをされていた時の経歴をお聞かせ頂けますか?

 

関西にあるスーパーチェーンに34年間勤めておりました。そのうち25年ほど化粧品ないしは日用品のバイヤーを行っており、2年ほどネット通販の部長もしていました。Eコマース事業部でネット通販とネットスーパーの2つをやっていまして、ネット通販の方は楽天さんに出店させて頂いており、楽天さんの上位にもいました。

 

ありがとうございます。本日はDtoCの企業が興味のある小売業界のお話を色々とお聞きできればと思います。まず、バイヤーさんの業務には商品の売り込み対応とか商談など色々あると思いますが、主にどのような業務があるのでしょうか?

 

一口にバイヤーと言っても、どういう役割のバイヤーかによってその業務は異なります。スーパーの場合は、「いつ行っても商品が安定的にある」ということが一番の目的になります。ということは、供給量が正確に確保できる商品が前提になります。

 

なるほど、スーパーのバイヤーさんは常にそういう目線で安定供給可能な商品かを見ていらっしゃるんですね。

 

その通りです。ところが百貨店のバイヤーさんになると、いかに新しいものを揃えることができるかを考える事が重要になります。小売業の品種・職種にもよりますが、お客様の求めるものが違ってくる訳です。私はスーパーにいましたので、品質ももちろん大事ですが、どんなに売れても品切れしないということが大前提になります。そこから離れたところにいるのがドン・キホーテさんですね。彼らは、「いつ行っても何か新しいものがある面白み」を提供しています。ということはバイヤーの活動も全く変わってきます。

なるほど、初めて知りました。ターゲットとしてどこを狙うかによってアプローチの仕方も大きく変わってきそうですね。

 

そうですね。例えばスーパーは、食品を買われるお客様が7割で、大体週平均2回来店されます。ということは、月に10日~15日来店される訳です。その15回のうち一度でも商品が無いということになると、もう売り切れということになるんですね。

 

それは一時も気が抜けないですね。

 

そうなんです。だからスーパーのバイヤーは、そういうお客様のニーズをベースに商品計画を組み立てています。どんな商品を買うかというよりも先に、第一に安定した供給期間があることが求められます。

 

なるほど。これはスーパーを攻略するためには知っておくべき情報ですね。では前提条件となる安定供給をクリアできたとして、他にはどういうところが商品選定のポイントになるのでしょうか?

バイヤー目線でいうと、売場の特異性や差別化に繋がるかは重要です。スーパーは多くの商品がNB商品になりますので、売れ筋の商品も限られてきます。その中で私の場合、バイヤーとしていかに来店して頂いたお客様に満足してもらえるか、『売場のコンセプト』を考えています。

 

売場のコンセプト

取り扱い商材ではなく、売場のコンセプトですか?

 

はい。スーパーは大体、春と秋の年に2回大手メーカーさんが新製品を出すタイミングに合わせて売場を大きく変えています。その際、新しい商品を買う前にその売場のコンセプトを考えるところからスタートします。

 

商品が新しくなるタイミングで売場自体のコンセプトも刷新されるのですね。どれくらいの準備期間で進めているのでしょうか?

 

私の場合、1年前からスタートします。

 

早いですね!?

 

メーカーさんの商品開発は大体発売の3年前からスタートするんですが、商品が生産に入る頃にはバイヤーとして次の商品のネタを掴みに行く必要があります。それらの情報と時代に合わせた消費者のニーズもある程度鑑みて売場の絵を書きます。それが大体1年前から半年くらいの期間をかけてメーカーさんとお話をしています。

 

では、商品を売り込むならそのタイミングまでに準備しておく必要がありそうですね。メーカーさんとは、どういった方とどのようなお話をされるんでしょうか?

私の場合は、営業の方はもちろんですが、製造部門とか開発の方ともお話をして頂きます。どんな商品でも、最初にこんな商品があったらいいなと思って企画する人が開発の中に1人はいると思っています。だからコンセプト作りの参考のため、こんな商品ならお客様が喜ぶなとか、その人の思いをできるだけ探りにいくようにしています。

 

商品の開発意図まで汲み上げて売場に反映されているんですね。

 

はい。彼らの思いが必ず商品に含まれてくるので、バイヤーとしてそれを売場で表現しています。すると、その思いが売場に繋がっていきます。それが自分の考えているコンセプトと当てはまれば、うまく売場を作っていくこともできます。そんな組み立てを半年かけて考えています。

 

そうやって売場のコンセプトを固めていくんですね。売場のコンセプトが決まったらいよいよ商談となるのでしょうか?

 

そうですね。ただし、売場を変える半年前に、こんな売場コンセプトに適合している商品を案内してくれとこちらからプレゼンをかけます。

なるほど、先にコンセプトをお伝えするんですね。

 

はい。コンセプトに沿った商品を取引先さんやメーカーさんがこういうものどうですかと持って来られます。そこで、業界では「棚割り」と言うんですが、ある程度どの位置にどの商品を並べるかを決めていきます。

 

スーパーの商品って、あまり変わっている印象が無いんですけど、意外と変わっているんですね。

思いっきり変わっています。新商品を入れないとお客様が面白くないので、どうしても1割は外さないといけない。ただ、それだとどこも一緒なので、私の場合さらにもう1割外します。そこに他に扱っていない商品を入れてオリジナリティを出します。1割変わるとすごく変わった感じがしますよ。変化があると必ずそこに意識がいきます。

 

なるほど。その1割が大きいんですね。

 

大きいです。それをどうお客様に感じてもらうかも重要なバイヤーの仕事です。よく言うのがゴールデンラインとか、棚の左上・右上とかの変化のバランスや、商品パッケージの色とかも、通路から見てどのように見えるか考えています。

パッケージの色まで見ているんですね。

 

通路からどのように見えるかは非常に重要ですね。

なるほど。年2回、定番を変更して売場に落とし込むということなんですけど、逆に言うと突然ポッと出たすごい売れている商品が入る隙間みたいなのは、あまり無いということなんですね。

 

あ、それはあります。心のなかで分けて持っておきます。

 

フリー枠みたいに?

 

そうです。もともと広めに取っておいて後で縮めて入れるなど色々策は練っています。

 

8割は定番で安定して入れておいて、後は新商品と差別化商品とで1割ずつ変化を入れていくんですね。もっとたくさん新しい商品を入れたり、大きく売場を変更するみたいな話にはならないんですか?

 

スーパーではそれはしません。例えば、月10回以上来てくれるお客様にとっては、いつもの場所に商品がなかったら、それだけでこの店ではもう扱いが無くなったんだと判断されるんです。

あ、他の店に行っちゃうということですね。

 

そうです。売場を変えると「商品が無くなった、もう買わない」と思われる人が結構いらっしゃるんですよ。

 

たしかに、分かります。ありますよね。

 

それはスーパーとして必要な商品で、圧倒的な大多数の大衆向けの売場作りなのでそこは外せません。

 

なるほど。じゃぁうっかりそんな提案をしてしまうと、的外れになってしまうんですね。

 

そうですね。よく売れている商品が、もしいつもの場所に無かったら、それだけでお客様が来なくなってしまいます。

 

確かに。

 

だから絶対に必要なんですよ。ただ、同じ括りの売場の中でも、例えばパーソナルであるとかプロ用であるとか、バランスを取りながら新しい商品を取り入れていく必要があります。

 

定番は外せないけど、それだけでは駄目なんですね。

 

あくまでもスーパーなので、ポートフォリオ的に埋めていかないといけません。極端な話、プロ用ばかり置いていてもお客様は来てくれません。

 

なるほど。勉強になります。

 

今回のまとめ

今回の対談では、私も初めてお聞きする話が多く大変勉強になりました。特に百貨店やバラエティショップなど、小売の種類によってもバイヤーの目的が大きく異なる点は、しっかり押さえておく必要がありそうです。自社商品の売込みをおこなう前に、どんな小売店舗に売り込むのか、スーパーであればまずは安定した供給量を確保できる生産体制が用意できるのかなど、バイヤーさんが求める商品足り得るのかをあらかじめ考えておく必要があるでしょう。

その上で商品の切り替え時期や、バイヤーさんが求めている売場のコンセプトに見合う商品を提案することができるかが、EC系のD2C企業が小売に進出するための1つのポイントとなりそうです。そのためには、バイヤーさんとしっかりコミュニケーションをとって、どのような商品を求めているのか情報を収集しておく必要があるでしょう。

特にD2C企業がスーパーに売り込む場合、ECで圧倒的な売上を作れるような商品でなくては、莫大な資本力を持つ大手と真っ向勝負をしても新商品の枠を奪うことは難しそうです。しかし、F氏のお話にもあったように、最後の1割となる棚を差別化する商品に関してはD2C企業にこそ大きなチャンスがあるのではないでしょうか。

今回の記事はここまでです。
次回は認知の少ない商品を売ることについて、F氏にバイヤー目線でのお話を伺いました。

(連載第1回)
小売のバイヤーに刺さる商品売込み時のポイントは、『店舗のコンセプト』
https://itsumo365.co.jp/lab/12378/

(連載第2回)
小売のバイヤーは、認知の少ない商品を売りたがっている!?
https://itsumo365.co.jp/lab/12431/

(連載第3回)
小売のバイヤーが商品を仕入れる際の判断基準とは
https://itsumo365.co.jp/lab/12539/

(連載第4回)
小売のバイヤーが求める「これから」売れる商品の探し方とは
https://itsumo365.co.jp/lab/12694/

(連載第5回)
小売のバイヤーが考えるPBとNBのバランスの取り方
https://itsumo365.co.jp/lab/12783/

(連載第6回)
バイヤー視点から考えるD2C成功のポイント
https://itsumo365.co.jp/lab/12812/

(連載第7回)
これからの時代に求められるD2C商品とその情報発信
https://itsumo365.co.jp/lab/12847/

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