国内動向

いち早く2021年の個人消費を振り返る

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いち早く2021年の個人消費を振り返る

先日当サイトで公開した「[速報]2021年度の国内EC市場規模予測(デジタルシェルフ総研予測)」では、2021年の国内EC市場規模を2020年比で10%弱の増加と推計しました。金額にすると13兆2,000億円~13兆4,000億円という着地と推定されます。その際、2021年の小売市場(物品購入)の状況についても調査し、2020年と比較してほぼ変わらずと述べました。同レポートにおける小売市場の調査パートでは総務省統計局家計調査を使用しましたが、これは執筆時点での最新情報である1月~6月、つまり2021年の上半期までのデータに基づき推定したものです。その後総務省統計局家計調査は7月~9月分が公開されました。よって、前回と合わせれば1月~9月分までのデータが揃っている状況です。加えて、一部ですが小売に関する10月以降分の統計データについて既に公開されているものがあります。

本レポート執筆時点で個人消費に関する2021年の全てのデータが揃ってはいない状況ですが、上述のデータを基に、2021年の小売市場(物品購入)だけではなくサービス消費も加え、個人消費全体の動向がどうであったか、振り返ってみたいと思います。

緊急事態宣言下ながらも物品購入総額は前年比で横ばい、サービス総額は上向き

次の2つのグラフのうち、上段は総務省統計局家計調査における1家計あたりの各年1月~9月の消費金額合計値を、経年推移の形でまとめたものです。また下段のグラフは、各年7月~9月に限定した経年推移です。上段のグラフ(1月~9月)についてですが、2021年の物品購入総額は1,129,491円と2020年比でほとんど変わりません。しかし下段のグラフ(7月~9月)では、物品購入総額は369,841円と2020年比で8,471円の減少、2019年比では16,959円の大幅な減少となっています。この期間に減少した要因は何でしょうか?

理由のひとつは、この期間中に東京を筆頭に全国の多くの都道府県で緊急事態宣言、またはまんえん防止等重点措置が発令されており、たくさんの人々が外出活動を控えていたことがあげられます。もう一つの理由ですが、8月の天候不良が原因と考えられます。緊急事態宣言に加え、8月の天候不良がダブルパンチで売上に影響を与えたことを、いくつかの企業の決算説明資料で目にします。しかしながら、7月~9月のマイナス分を加算しても、1月~9月のトータルではほとんど変化がないということは、物品購入のエネルギーは衰えていないと言えるのではないでしょうか。

続いてサービス総額を見てみましょう。2021年の1月~9月の総計は777,516円と、2020年比で29,607円増加しています。下段のグラフに目を向けると、緊急事態宣言および天候不良という二重のマイナス要因の状況下であったにもかかわらず、253,507円と2020年比でわずかながら増えています。2019年との比較ではまだ大きな差はありますが、サービス分野の個人消費は大きな落ち込みから復調傾向にあると見てよいでしょう。

 

 

出所:「家計調査」(総務省統計局)を加工して作成

カテゴリー毎の変化

続いて、カテゴリー毎の変化を見てみたいと思います。次の表は、物品購入、サービスについてそれぞれ主なカテゴリーをピックアップし、2019年から2021年までの3年間の各年1月~9月分の合計値をまとめたものです。まずは物品購入から見てみましょう。食品は2020年に大きく伸びましたが、2021年も引き続き同じレベルを維持しています。一方アパレルは2020年に大きく落ち込みましたが、数字を見る限り状況は大きく変わらないように思われます。雑貨・家具については食品と似た状況にあると思われます。また家電は2020年からさらに金額が伸びており、好調さを伺うことができます。しかし、家電量販店の上場企業の決算説明資料を見ると、緊急事態宣言と夏場の天候不良に加え、2020年の好決算が高いハードルとなって必ずしも視界良好というわけでもないようです。

サービスですが、旅行、外食共に2021年も下落傾向が続いています。しかしながら10月に緊急事態宣言が解除され、旅行や外食が賑わう様子がメディア等で報じられていますので、通年で見れば多少盛り返すことと想定されます。非常に興味深いのが家賃です。2021年に前年比で1万円以上増えています。想像ではありますが、おうち時間を有意義に過ごすために、よい物件へと移り住んだと考えられないでしょうか?また教育については2020年に一旦大きく落ち込みましたが、2021年はV字回復していることもわかります。このように、カテゴリー毎にみると具体的な変化がカテゴリー毎に異なっている様子を知ることができます。旅行、外食が上向けば、サービス分野全体の個人消費額も自ずとV字回復になることでしょう。

出所:「家計調査」(総務省統計局)を加工して作成

2021年最後の3か月はどうなのか?

以上は1月~9月の間のデータに基づいた解説です。では10月~12月はどうでしょうか?

経済産業省発表の商業動態統計調によれば、2021年10月の小売業の商業販売額は12,541(単位:10億円)と前年同月比で+0.9%、卸売業は46,949(単位:10億円)とこちらは前年同月比で+5.2%と公表されています。小売業は微増ですが一足先に卸売業が活発に動いているということでしょう。続いて百貨店に関するデータです。

また、一般社団法人日本百貨店協会が発表する令和3年10月全国百貨店売上高概況によれば、10月の全国の百貨店売上高総額は384,836,127(単位:千円)と、前年同月比+2.9%(店舗数調整後)となっています。商品別売上高の前年同月比を見ると、婦人服・洋品が+4.3%、身の回り品(靴、カバン、アクセサリー等)が+7.3%、美術・宝飾・貴金属が+11.7%と売上増加をけん引していることが分かりました。これは女性の購買力が高まっていることを意味します。当レポート執筆時点ではまだ10月分のデータのみではありますが、これらのことから、10月~12月の個人消費は活発であることが予想されます。

2021年の個人消費は前年比でプラスと予想

総務省統計局家計調査および経済産業省商業動態統計調査、一般社団法人日本百貨店協会全国百貨店売上高概況のデータを基に、2021年の個人消費の動向を追ってみました。

おさらいですが、1月~9月までの物品購入総額は前年比でほとんど変わりありません。長引く緊急事態宣言下でこの状況であり、加えて10月のデータを見ると上向きであることから、通年で見れば物品購入総額は2020年よりもプラスになることが予想されます。サービス総額は2020年を上回るペースできていますので、こちらも2020年比でプラスになると想定されます。2021年に関するデータが全て揃っていませんので予想の域を超えませんが、概して2021年の個人消費(物品購入総額とサービス総額の和)は長引く緊急事態宣言を経験しても2020年比でプラスとなると考えられます。これは個人消費のエネルギーが底堅いことを意味します。個人消費の力強さがこのまま継続すれば、2022年の見通しも決して悪くないと思われますが、新型コロナウイルス感染症の第6波が到来すると、個人消費に大きな影響を与えることが予想されます。

今後もデジタルシェルフ総研では個人消費の動向に着目し、適切なタイミングで皆様に情報をお届けしたいと考えています。

投稿者プロフィール

立川 哲夫(たつかわ てつお)
立川 哲夫(たつかわ てつお)
株式会社いつも 執行役員 DX戦略グループ
D2Cモデル構築支援、販路DX支援、デジタルシェルフ総研の主任研究員を務めている。大手メーカー・老舗企業のECスタートアップ、D2C参入時の戦略・人材育成、海外展開戦略立案サポートを行いながら、企業向けEC研修・セミナーの講師・EC業界専門紙・メディアへの寄稿も多数行う。著書に「EC戦略ナビ」「EC担当者 プロになるための教科書」などがある。

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