国内動向 調査報告

【定点観測】宅配便主要3社の宅配便個数~2021年は約46億個~

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【定点観測】宅配便主要3社の宅配便個数~2021年は約46億個~

国土交通省は毎年宅配便取扱実績を同省のサイト上(https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000235.html)で発表していますが、4月から翌年3月までの年度単位であり、かつその発表タイミングも毎年夏頃となっています。

一方で、宅配便主要3社であるヤマト運輸、佐川急便、日本郵便は、自社サイト上で月別の宅配便取扱実績値を迅速に公開しています。それらは月別の数値として公開されていることから、自在な集計期間で計算することが可能です。2022年2月時点で既に3社の2021年12月分のデータが公開されていますので、今回のレポートでは当該主要3社の宅配便個数を2019年から2021年にかけて暦年ベースでデジタルシェルフ総研独自に集計し、その推移を考察してみたいと思います。

※正確には、ヤマト運輸はヤマトホールディングス株式会社、佐川急便はSGホールディングス株式会社、日本郵便は日本郵便株式会社のデータとなりますが、本レポートでは表記の簡便化を目的に、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便とします。

集計対象のデータは次の通りです。

ヤマト運輸:宅急便・宅急便コンパクト・EAZY・ネコポス

佐川急便:飛脚便

日本郵便:ゆうパック

2021年は前年比4.1%の増加

ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便各社公開の宅配便取扱実績値をもとに2019年、2020年、2021年を集計したところ、次のグラフのようになりました。2019年は3,996百万個ですが、2020年はコロナ禍1年目ということもあって、前年比10.4%増の4,413百万個と大幅な増加となっています。また、コロナ禍2年目の2021年は前年比4.1%増の4,594百万個となっており、2020年よりも少ない伸長率となりました。

4,594百万個を365日で割ると、1日あたり12,586,301個となります。日々多くの宅配便が取り扱われていることを、この数値でよく理解できます。尚、この数値にはEC以外での宅配便も多く含まれている点を理解しておく必要があります。また、ECに関してもBtoC以外にフリマのようなCtoCも多く含まれている点を、併せて留意しておきましょう。したがって、2021年の伸長率4.1%の値は、EC市場の伸長率推計の参考値にはなりますが、EC市場の伸長率と近似値ということにはなりません。

出所:以下のサイトよりデータを取得・集計して作成

ヤマト運輸:各月の小口取扱貨物実績(ヤマトホールディングス株式会社)
https://www.yamato-hd.co.jp/news/

佐川急便:各月のデリバリー事業の取扱個数実績(SGホールディングス株式会社)
https://www.sg-hldgs.co.jp/newsrelease/ir/

日本郵便:各月の郵便物・荷物の引受物数(日本郵便株式会社)
https://www.post.japanpost.jp/newsrelease/

各社毎の実績値

各社毎の実績値を集計したところ、次の通りとなりました。各社とも2020年は巣ごもり消費によるEC市場拡大の効果で、前年比で大きく増加しています。一方2021年に入ると、ヤマト運輸は引き続き増加ペースを維持していますが、佐川急便は微増、日本郵便は前年比マイナスとなっています。

出所:同上

 

また、2021年の各社のシェアを次の通り円グラフで表現してみました。ヤマト運輸が48.7%と全体の半分弱を占めています。

出所:同上

 

月別推移

続いて、宅配便個数の月別推移を2019年、2020年、2021年毎に集計してみたものが次のグラフおよび表です。まず目に入るのは、月別で比較した場合7月と12月の数値が高い値を示している点でしょう。これは、お中元およびお歳暮、年末商戦による影響と推測されます。そして注目すべきは新型コロナウイルス感染症拡大が始まり、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月を境目に、宅配便個数が前年同月比で大きく伸びている点です。

表中に赤い字で示している期間は、東京都で緊急事態宣言が発令されている期間を表しています。この期間中、2021年の5月と7月を除き、前年同月比でプラスとなっています。尚、マイナスとなった2021年の5月と7月ですが、これは前年の5月は第1回目の緊急事態宣言下によるECの増加によるものであり、7月は宣言が解除されたものの引き続きECでの購買行動が盛んであったためと想定されます。このように、宅配便個数のデータからも巣ごもり消費によるEC市場の拡大を見て取ることができます。

宅配便主要3社合計の宅配便個数の月別推移(単位:百万個)

出所:同上  表中の赤い字の部分は東京都で緊急事態宣言が発令されている期間

ラストワンマイルの多様化

ところで、経済産業省発表の令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)によれば、2020年の物販系BoC-EC市場規模は前年比で21.71%の増加とされています。そして、当サイトで公開しているレポート[速報]2021年度の国内EC市場規模予測(デジタルシェルフ総研予測)(https://itsumo365.co.jp/lab/13668/)では、2021年のEC市場規模を前年比10%弱の増加と予想しました。一方で、上述の通り宅配便主要3社合計の宅配便個数の伸長率は、2020年が10.4%、2021年が4.1%です。宅配便1個あたりの平均購買単価が同じと考えれば、宅配便個数の伸長率とEC市場規模の伸長率は理論上同じになります。しかし、相違しているのは何を意味しているでしょうか?

先に述べたように、宅配便個数にはEC以外のものも含まれますし、フリマのようなCtoC-ECも含まれています。それ以外にも、次の要素によって相違が生じていると考えることができます。

1.主要3社以外の宅配便事業者による配送分
2.Amazon、楽天等ECプラットフォーマー自身による配送体制下での配送分
3.販売企業自身による配送分
4.店舗受け取り分

2.については、例えばAmazonや楽天は独自での配送網の強化に取り組んでいることが、メディア等で報じられていますので、容易に理解できると思います。また、4.についてはBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)と言われています。事業者側にとってBOPISは物流コストの削減効果を期待でき、消費者側にとっては配送料金を必要としないメリットがあります。一部の事業者はBOPISでの販売が全体の7割を占めるところもあるようです。このように、必ずしも主要3社以外に頼らない配送手段、配送体制が強化されている印象を受けます。

今後1.~4.の比率が上昇すれば、EC市場規模の増加率と主要3社の宅配便個数の増加率との乖離が少しずつ大きくなることも予想されます。他方、日本郵政グループと楽天グループが2021年に資本・業務提携を発表しているように(https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2021/0312_02.html)、宅配の世界は多次元的に複雑化してきており、個々の様々な動向が折り重なることで、全体的なバランスを維持しているように見受けられます。宅配分野は常にホットな世界であり、今後も多様な動向が予想されますので、引き続き着目が必要でしょう。

投稿者プロフィール

本谷知彦
本谷知彦株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役
元大和総研チーフコンサルタント。1990年大和総研入社。証券系SE、IT特化の主任研究員、金融システムコンサルタントを経て、2013年より同社のコンサルティング部門にて企業の海外進出やデジタル事業に係る調査・コンサルティングに従事。2014年から2020年にかけて7年連続で経済産業省の電子商取引市場調査を手掛ける。2021年12月末に同社を退職し、2022年1月、ECを含むデジタルコマースに特化した日本初のシンクタンク「デジタルコマース総合研究所」を設立。現在に至る。

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