アプリのトラフィック価値についての評価報告
中国トップクラスのモバイルビッグデータソリューションプラットフォーム、「極光(Aurora Mobile, NASDAQ:JG)」が『2019アプリトラフィック価値評価報告』を発表しました。今回は、この報告書から中国を代表するBATのトラフィック価値を皆様にシェアします。
BATアプリのトラフィック価値
『BAT』とは中国ネット業界を代表する3つの企業で、Bはバイドゥ(百度)・Aはアリババ(阿里巴巴)・Tはテンセント(騰訊)を指し、それぞれの頭文字をとってBATと称しています。
極光が発表した内容によると、『2019アプリトラフィック価値評価報告』はトラフィック価値分布、主要業界トラフィック価値分析、業界事例などの面から業界トラフィック価値の洞察を提供するもので、数多くのアプリを紹介しています。今回はその中から『BATアプリのトラフィック価値』を抜粋してご紹介します。
※ここで言うアプリのトラフィック価値とは、アプリに集まるトラフィックそのものを様々な形で現金化することによってもたらされる総収入を指します。
テンセントは主にソーシャルにトラフィックが集中しており、バイドゥは検索広告、アリババはECにそれぞれ集中しており、その比率はいずれもそれぞれの領域で6割を超える数字となっています。
テンセント
テンセントのトラフィック価値は、膨大なトラフィックを集めるSNSによる広告トラフィック価値が高く、まだ非常に大きなポテンシャルを秘めている状況です。中国人がSNSと聞いてすぐに思いつく3つのソーシャルを見ると、Wechat(中国におけるLINEのようなメッセージアプリ)のトラフィック価値が700億元を超え、QQ(Wechat以前によく使われたSNS)が約400億元、Weibo(中国版Twitter)が約200億元となっています。
特にWechatのトラフィック価値は膨大で、ユーザーの依存も強く、トラフィックの質も非常に高くなっています。さらにWechatは多くの広告露出領域を持っており、Wechatで実現できる広告価値も高いという評価を受けていますが、現状では広告展開は控えめで、まだ広告によるマネタイズにおいて大規模な推進を行っておらず、今後さらに莫大な利益を生み出す可能性を秘めていると言えるでしょう。
また、Wechatのミニプログラム(チケット購入やストア検索、サービス検索などができる機能)が急速に発展しています。ユーザー1人あたりの1日平均アクセスは前年同期比54%と急速に増加しており、Wechat全体として急拡大を続けながらも、まだまだ大きな伸びしろを残しています。
中国版TwitterのWeiboのトラフィック価値は205.2億元で、広告収入が主な収入源となっており、『SINA(新浪)』というテンセントが展開するプラットフォームの中でWeiboが大きな柱となっています。SINAは、広告トラフィックのマネタイズを深く研究開発しているため、広告露出の仕方も多様で、検索広告・露出広告・インフィード広告の3つの広告を展開しており、今後も堅調な伸びを見せるでしょう。
アリババ
ECにおける広告の転換率は高く、ECサイトのマネタイズ能力も高くなっています。中でも、CtoCプラットフォームであるタオバオアプリのアクセス価値は最も高く、394.3億元に達しており、次いで地方を中心に支持を集める低価格帯のECプラットフォームであるPinduoduoが200億元を上回る価値となっています。タオバオは言うまでもなく、Pinduoduoは広告枠と様々な商品ページへの誘導方式を採用しており、商材も低価格の位置付けで展開していることから、膨大なトラフィックを集めて広告価値に転換することに成功しています。
バイドゥ
検索エンジンは中国人ユーザーにとって主要な入り口となるためアクセス量も多く、ユーザーの検索もアクティブです。検索結果もユーザーのニーズにマッチしており、ECにも強いため広告効果も併せて高い評価がなされています。
特にバイドゥアプリの価値は、中国検索エンジン業界の中でも高く、携帯アプリのオリジナル版と急速版(アップグレード版)を合わせると、PC版との使用比率が95%を超えるなど、非常に多くの人がバイドゥアプリを活用していることになります。
中国のネット三大企業BATのアプリトラフィック価値分析を見ると、アプリ毎の特性と膨大なトラフィックに合わせたマネタイズ戦略を垣間見ることができます。日本でも、広告で収益を上げる事業を行う際の参考になる部分も多くあるため、今後も注目する必要があるでしょう。