公開日:2022年4月6日

重要性が高まり続ける、インターネット広告の今

重要性が高まり続ける、インターネット広告の今

デジタルシェルフ総研では以前に「[日米比較]インターネット広告費の比較から見えてくるもの」というタイトルでレポートを公開しました。
その中で2021年の予想として、日本のインターネット広告費がはじめてマスコミ4媒体広告費を上回る可能性について言及しています。その予想の基となっているデータは電通より毎年公開されているのですが、2021年版が2022年2月24日にリリースされました。結果は予想が裏切られることなく、インターネット広告費がマスコミ4媒体広告費を大きく上回る数字となっています。本レポートではあらためてそのデータに焦点をあて、日本のインターネット広告費の現状について考察したいと思います。

ついにマスコミ4媒体広告費を上回ったインターネット広告費


次のグラフはインターネット広告費とマスコミ4媒体広告費を経年推移で比較したものです。表示の通り、2021年は前者が2兆7,052億円、後者が2兆4,538億円となっており、はじめてインターネット広告がマスコミ4媒体広告費を上回った記念すべき年となりました。長期トレンドとして前者は増加傾向、後者は2014年をピークに逓減傾向にありますので、必然的な結果といっても過言ではありません。2011年のインターネット広告費は8,062億円ですので、10年間で3.36倍に拡大したことになります。2022年に入ってもその勢いは衰えていませんので、恐らく2022年のインターネット広告費は3兆円に近い値となるのではないでしょうか。一方でマスコミ4媒体広告費ですが、2014年以来7年ぶりに前年比プラスとなりました。しかしながらこれはコロナ禍1年目の2020年の極端な落ち込みからの反動であり、長期トレンドとしてはインターネット広告に押されて逓減傾向です。したがって2022年の広告費は横ばいかやや減少といったことが予測されます。

なお、インターネット広告費、マスコミ4媒体広告費にプロモーションメディア広告費を加えた総広告費ですが、2021年は6兆7,998億円と前年比で10.4%と大幅な伸びでした。ただし、2019年が6兆9,381億円であったことを考えれば、2021年はコロナ前の水準にまだ戻っていません。元々総広告費も逓増傾向でしたので、いかにコロナが広告に大きな影響を与えたのかがよく理解できます。そのような状況下でもインターネット広告費は前年比マイナスになっていませんので、その力強さをまざまざと見せつけていると言えるのではないでしょうか。

インターネット広告費とマスコミ4媒体広告費の経年推移(単位:億円)


出所:2022年02月24日発表の「日本の広告費」(株式会社電通)を加工して作成

個人消費10万円あたりのインターネット広告費も10年で3.38倍に拡大


インターネット広告の力強い成長を違う角度から捉えてみましょう。先のレポート「[日米比較]インターネット広告費の比較から見えてくるもの」では、インターネット広告費と個人消費支出総額(内閣府経済社会総合研究所発表の「家計最終消費支出」)を用いて、個人消費10万円に対するインターネット広告費の投入額を求めました。先のレポートでは2020年のみの算出であったため、本レポートでは過去からの時系列でその数値を見てみることにします。以下のグラフに表記の通り、2011年は個人消費10万円あたり283円のインターネット広告費が投入されている計算になりますが、2021年はその値が957円にまで増加しています。この10年間で3.38倍に拡大した計算になります。ちなみに2021年の個人消費支出総額は282兆5,729億円です(内閣府経済社会総合研究所による2022年3月9日二次速報値における2021年の名目暦年の数値)(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2021/qe214_2/tables/gaku-mcy2142.csv)。長らく個人消費支出総額は横ばいで推移していますので、結果的にインターネット広告費が増加した分だけ、個人消費10万円あたりのインターネット広告費も増加しているということになります。換言すれば、ECを含む小売業界においてインターネット広告への依存度が年々高まっていると言えるでしょう。

個人消費10万円に対するインターネット広告費の投入額の経年推移(単位:円)


出所:日本のインターネット広告費:2022年02月24日発表の「日本の広告費」(株式会社電通)を加工して作成
日本の個人消費支出総額:「国民経済計算(GDP統計)」(内閣府経済社会総合研究所)の「実額・年度」を加工して作成

販売チャネル超越で影響力を持つようになったインターネット広告


もうひとつ異なる角度でインターネット広告を捉えてみます。次の2つのグラフですが、上段は国内のBtoC-EC市場規模の経年推移を表したものであり、下段はインターネット広告費の経年推移を表したものです。共に2011年から2021年までの10年間で比較してみましょう。上段の国内のBtoC-EC市場規模ですが、2011年から2021年にかけての10年間の年平均成長率を計算したところ、9.6%となりました。一方で下段のインターネット広告費の同じ期間の年平均成長率は12.9%となりました。BtoC-EC市場規模よりも拡大幅が大きいことが分かります。この差は何を意味しているのでしょうか?インターネット広告はインターネットという媒体を活用した広告であるため、必然的にBtoC-ECに与える影響が大きいことは容易に理解できますが、同時に実店舗チャネルに対しても大きな影響力を与えていると言えるかもしれません。EC化率はまだ10%を超えておらず、諸外国と比較しても決して高い水準ではありませんので、インターネット広告が実店舗チャネルに対しても大きな影響力をもつと考えても不思議ではありません。例えば自動車のインターネット広告を目にする機会は多いでしょう。一部の自動車メーカーが自動車のネット販売を始めるとのニュースが昨年報じられましたが、基本的に自動車は実店舗で契約、購入されるものです。このように、インターネット広告は販売チャネルを超越して個人消費全体に対して大きな影響力を持つ広告手段となったと言えるでしょう。

国内BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)


出所:2021年07月30 日発表の「電子商取引実態調査」(経済産業省)を加工して作成

インターネット広告費の経年推移(単位:億円)


出所:2022年02月24日発表の「日本の広告費」(株式会社電通)を加工して作成

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