EC市場の成長と課題~「事業継承」が1つの潮流に~
みなさん、こんにちは。
ECマーケティング支援・D2C支援を提供する株式会社いつものコンサルタントです。
今後さらなる競争激化が予想されるEC市場ですが、日本国内で克服しなければならない課題として、下記の3つが挙げられます。
1.オンラインとオフラインの垣根を越えた顧客体験の提供
2.Google対応のさらに快適でスムーズなECサイトの構築
3.「後継者不足」の問題
本記事では順にEC市場の課題を解説し、今後の潮流を展望します。
1.オンラインとオフラインの垣根を越えた顧客体験の提供
「OMO(Online Merges with Offline)」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。オンラインとオフラインを融合して一つのものとして捉えるという意味ですが、この言葉はもともと、2017年12月のザ・エコノミスト誌で中国のベンチャーキャピタルであるシノベーションベンチャーズの創業者「李開復(リ・カイフ)」によって提唱され、日本国内でも広く認知されるようになりました。
ユーザーが使用するスマートフォンなどのモバイルデバイスを起点としたマーケティング戦略で、オンラインとオフラインの垣根が無くなるほどシームレスな購買体験を提供したのが始まりです。
実店舗とEC機能を融合したOMO型店舗として有名なのは中国のアリババグループの傘下である「盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)」で、「オフラインでありながら配送力に優れたサービス」を展開しています。
盒馬鮮生は「ECで注文した商品を半径3Km以内であれば最短30分で配送する」というコンセプトで展開していますが、このような小売業界の動きが日本国内で登場するのは時間の問題といえるでしょう。
2.Google対応のさらに快適でスムーズなECサイトの構築
Googleが2016年3月に発表した調査データによると「消費者の53%がモバイルでの読み込みに 3 秒以上かかるサイトを放棄する」ことが分かっています。
またGoogleは2021年6月以降、こうした「ユーザーの為にならないサイト」(いわゆるUXを損なうサイト)を評価せず、ユーザーの検索体験を心地よくスムーズなものにするサイトを評価するアップデート(コアウェブバイタル)を実施しました。
コアウェブバイタルの要素には「LCP(Largest Contentful Paint):読み込み時間」が組み込まれており、ページの表示速度が2.5秒以内のサイトに対して「GOOD」(良好)、4.0秒以上かかるサイトを「POOR」(不十分)と評価します。つまり「ユーザー体験を損なわないための指標としてページの表示速度が重要視されている」のです。
以上のように、世界の検索市場シェアの多くを占めるGoogleは、検索アルゴリズムにおいて「快適なユーザー体験の提供」にフォーカスしてきていることになります。
ECサイト運営者はこうした検索アルゴリズムを左右するGoogleの最新の動きを追いながら、自社ECを日々アップデートしていく必要性に迫られているのです。
3.「後継者不足」の問題
また日本国内では「後継者不足」の問題が表面化しています。中小企業庁が2016年に発表した「事業承継に関する現状と課題について」の調査資料では、1995年に47歳だった中小企業の経営者分布が、2015年で66歳へと移動しており、2020年には数十万の団塊世代の経営者が引退時期にさしかかる旨が記載されています。
過半数の企業で事業承継の準備が進んでいないことが分かっており、60歳以上の経営者のうち、50%超える経営者が廃業を予定していることも同調査から判明しました。
他方で、事業者が交代した企業や、若年の経営者への事業承継によって利益率や売上高を向上させている企業が多いことも調査から分かっています。また、早期段階で事業承継計画を立てることが中小企業の生き残りをかけた分かれ道になっており、後継者がいない場合の解決策の一つとして、中小企業のM&Aニーズは増加傾向にあることが示されています。具体的には60~65歳の年齢で事業承継について計画を立てる必要があり、積極的な支援機関の利用が求められます。
EC市場が日本に登場してわずか20年のうちに、EC市場は大きく成長し、また大きな変化を遂げました。モバイルデバイスを起点とした新たなマーケティング戦略やECサイトと密接な関係にある検索エンジンにおけるユーザーファーストを起点としたアルゴリズムアップデートなど、ECサイトの運営者はさらに過酷な環境での競争を強いられています。また、そんな中で後継者不足はさらに深刻化を増しています。
こうしたEC市場の成長と変化に対し、企業が取れる選択肢の1つに「事業承継」があります。世界規模でEC市場が激化する中、「事業承継としてのM&A」と、「事業成長を視野に入れたM&A」が増えています。大資本を持った大企業の参入によって競争が激化するEC市場で、中小企業は生き残りをかけた重要な局面に立たされているといえるでしょう。
この機会に事業承継の問題を自分事として捉え、事業成長を視野に入れたM&Aが実現できるかどうか考えてみてはいかがでしょうか。