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【ECのM&A】米国と日本の市況を比較、今後の予測と課題を展望

【ECのM&A】米国と日本の市況を比較、今後の予測と課題を展望

EC業界は様々な新たなビジネスモデルの登場や、消費者の高リテラシー化により競争が激化しています。成熟したM&Aマーケットがある米国では、EC業界における経営資源の集中化や販路拡大といった「前向きなM&A」がトレンドとなっています。また、M&Aの歴史が浅い日本でも米国の後を追う形で「前向きなM&A」が浸透しつつあります。

 

しかし、いまだに日本には、米国のM&Aマーケットのように「積極的にM&Aを行いたい個人・企業がスムーズかつ安全に取引ができる環境」は整備されておらず、EC事業を営む経営者・担当者は手探りで自社ECのM&Aを検討せざるを得ない状況です。

そこで本記事では、ECにおけるM&Aの基礎知識やメリットとデメリットの解説、米国・日本のM&Aの動向をお伝えしていきます。

 

ECにおけるM&Aとは

ECにおけるM&Aは、EC事業の譲渡・売却を行う企業(以下、譲渡企業)から同事業を譲り受ける企業(以下、譲り受け企業)に株式譲渡・事業譲渡することで成立します。

 

譲渡企業は、ECサイトやそこに関わる事業を売却することで、

1.売却利益を獲得したり、

2.獲得した売却利益で主力事業に経営資源を集中させること

が可能です。

また譲り受け企業は、譲渡企業から株式譲渡・事業譲渡を受けることで、

1.EC事業へ低リスクで参入できたり、

2.販売ノウハウ獲得・販路拡大といったメリットを享受できます。

さらにECにおけるM&Aは、事業承継問題の解決策として認知され始めており、日本の価値あるプロダクトを廃業の危機から救い、後世へと継承していく大きな意義を持っています。

 

昨今、中小企業経営者の高齢化とそれにともなう事業の廃業により、EC事業で培ったノウハウやブランド、従業員の雇用までも失ってしまう事態が発生していますが、1つの事業・会社が廃業することで取引先の企業が連鎖して廃業や倒産するリスクが高まります。連鎖倒産が続くと、地域の伝統を維持するための製品・サービス・繋がりが失われ、様々な業界・分野への負の連鎖が始まる恐れがあります。

つまり、事業承継は価値あるプロダクトを後世へ残す目的がありますが、伝統や付随する地域の繋がりを残すためにも最適な選択肢となり得るのです。

 

米国のM&Aの動向について

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社「世界の M&A 事情 ~アメリカ~」2019年によると、米国のM&Aマーケットは「2019 年上期において前年同期比で件数ベースではやや落ち込んでいるものの、金額ベースでは上昇している」ことが分かっています。

 

対米外国投資委員会(CFIUS)の審査強化や米中貿易戦争の影響を受けて、活発だった中国企業による買収は2017年以降大きく減少していますが、M&Aの歴史が古く、戦略的かつ前向きなM&Aの文化が根付いている米国M&Aマーケットには今後も多くの資金が集まると予測できるでしょう。

 

また、昨今の米国M&AではECのM&Aがトレンドとなっており、資金を多く保有する大企業がAmazonで販売実績を持つ小規模ブランド・事業を買収する動きが活発になっています。元々米国のM&Aでは小規模事業者・個人がM&Aによって事業譲渡するケースが多く、そこで得た売却利益で更なるビジネスチャンスを獲得する前向きなM&Aが続いてきました。「Amazon売却」の動きは売り手側の前向きな姿勢と、買い手が潤沢な経営資源でスピード感のある事業拡大を目指すニーズのもとで成立していると考えることができます。

 

さらに米国のM&Aの動向を考える上で避けられないのが「成熟したM&Aマーケット」です。米国のM&Aは1970年代に、自社と関係のない異業種を買収して巨大化・多角化していく「コングロマリット化」が進み、マーケットが急速に拡大しました。

また、1980年代には資金調達マーケットが効率化したことで不必要な多角化が徐々に減り、効率的な企業経営への転換が始まりました。さらに、資金調達が容易になったことを背景に、敵対的な買収を仕掛ける企業や、M&Aを通じて経営者に脅しを行う(グリーンメール)といった行為が横行したため、ポイズン・ピルやスタッガード・ボードといった敵対的M&Aの防衛策(社内制度)が取られていきました。

 

米国M&Aは以上のような歴史を経ているため、積極的にM&Aを行いたい個人・企業がスムーズかつ安全に取引ができる環境が整備されています。例えば買収額の分割払いや、M&Aノウハウを共有するコミュニティ、交渉開始1~2週間で契約が成立するなど、米国M&Aは今後も積極的にM&Aが行われるマーケットとして在り続けるでしょう。

 

日本のM&Aの動向について

結論からいうと、日本のM&Aは米国ほど盛り上がっていないものの、徐々に浸透しつつあります。

 

特に2018年以降は日本企業同士のM&Aが急増していることから、日本国内においてM&Aが浸透していることが推測できます。また、ビジョナル・インキュベーション株式会社と株式会社M&Aサクシードが2020年10月に発表したM&A動向レポートでは以下の2点が強調されています。

・2020年6月以降、外出抑制と在宅需要の拡大の状況をチャンスと捉えた譲り受け企業の動きが活発化
・2021年1月以降、外出抑制と在宅需要の拡大の影響を受けた企業の売却ニーズが増加(動向予測)

また、今後のM&A動向予測として、2021年以降において外出抑制と在宅需要の拡大などの影響を受けた企業の売却ニーズが増加することを指摘しています。従来の日本におけるM&Aは事業承継が主でしたが、外出抑制と在宅需要の拡大の影響を受けて、既存のビジネスモデル・事業戦略では経営が難しくなった企業の成長を見据えたM&Aが増加すると予想されています。

米国では更なるビジネスチャンスを見据えてM&Aを利用した売却利益の獲得や、経営資源を集中させるためのM&Aが積極的に行われていますが、日本のM&Aマーケットも後を追う形で「前向きなM&A」へと転換を図っていく機会となるでしょう。

日本のM&A市場の今後の予測と課題

日本のM&Aは米国のM&Aほど歴史がないものの、外出抑制と在宅需要の拡大の影響を受けて、徐々に成長戦略としてのM&A(前向きなM&A)として浸透しつつあります。日本のM&Aは今後も事業承継問題の解決策の1つとして認知を広めていくと予想されますが、様々なビジネスモデルの登場・消費者の高リテラシー化によって競争が激化するEC業界では、経営資源の集中化や販路拡大といったメリットを享受するために経営戦略としてのM&Aが一層求められていくことでしょう。

とはいえ日本の企業の多くはM&Aの経験が少なく、事業売却にかかる手間やコスト、リスク等を正しく認識できていない場合が少なくありません。また事業売却相場などを事前に調べてもM&A仲介会社がECのプロでないこともあり、ECビジネスの事業価値を適正に査定できないケースがあることも懸念点の一つといえるでしょう。

おわりに

株式会社いつもはD2C/ECのプロとして積み重ねた豊富な経験と知見によって、ECビジネスのM&Aに関わるリスクを最小限に留めることが可能です。

ECのM&Aに関わるご相談もWEBで気軽に受け付けておりますので、ぜひこちらからご連絡いただけますと幸いです。