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世界各国のEC化率から見た日本のEC市場の課題と改善策

世界各国のEC化率から見た日本のEC市場の課題と改善策

インターネットを使って自由に買い物ができる現代。今では、食品や日用品までもインターネットを使って買い物をする人も増えてきています。外に出なくても自由に買い物ができる便利な時代となったと感じる半面で、EC化率という基準で見ると、実は日本はまだまだ後進国と言われています。この記事では、日本のEC化率と世界のEC化率を比較し、日本のEC市場の課題を浮き彫りにし、その改善策を考えます。

日本のEC化率

 

そもそもEC化率とは、全商取引におけるEC市場で取引された商取引の割合を示した値になります。全商取引には実店舗での販売や対面販売といったオフライン商取引と、ECなどのオンライン商取引が含まれており、EC化率はオンラインで行われた商取引の度合いを示す指標です。

そして日本のEC化率(EC活用率)は以下のようになっています。

出典:経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」2021年7月より弊社作成

 

Amazonや楽天市場などを筆頭に、私たちの日常はEC市場の拡大によって更に便利になりましたが、EC市場の急速な拡大を肌で感じる一方で、実際のEC化率はそこまで高くないことが分かります。

上記の「物販系分野のBtoCーEC市場規模」の表でいえば、ECサイトでの取引が印象強い「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」や「書籍、映像・音楽ソフト」もそれぞれ37.45%(2兆3489億円)、42.97%(1兆6238億円)に留まっています。

お隣の中国では盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)に代表されるように、EC機能を融合した実店舗の展開が話題となっており、人々の商取引が徐々に電子取引へと移行しています。

日本でもAmazonフレッシュ等の新サービスが登場しつつも、2019年から2020年の「食品、飲料、酒類」のEC化率の伸び率はわずか0.42%に留まっているのが現状です。また、同様に「化粧品・医薬品」のEC化率の伸び率も0.72%と小幅になっています。

世界各国のEC化率

日本で伸び悩むEC化率ですが、世界各国のEC化率はどのようになっているのでしょうか。結論から言うと、以下のグラフで示した世界市場のEC化率に比べて日本は低い水準となっているのが現状です。

ただし国別のEC市場規模を見た場合、以下のグラフの通り、日本は中国・米国・英国に継ぐ第4位となっており(2020年時点)、先進国の中では比較的大きなEC市場規模を有してることが分かります。

 

 

出典:経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」2021年7月より弊社作成

上のグラフの通り、世界のEC市場において中国のEC市場規模が圧倒的であるといえます。先述した「盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)」を運営するアリババはEC機能と実店舗を融合させたOMO型店舗を展開しており、その革新的かつ大規模な取り組みから話題になりましたが、こうしたECの在り方を作り出したのも中国の圧倒的なEC市場規模に起因していると容易に想像できるのではないでしょうか。

出典:経済産業省「令和元年度電子商取引に関する市場調査」2020年7月より弊社作成

 

上のグラフの通り、中国のBtoCーECのEC化率が2020年時点で44.0%と予測されており、今後もさらに拡大を続けるとみられていることがわかります。日本の物販系分野のBtoCーECのEC化率が8.08%(2020年)であることを考えると5倍以上のEC化率になるため、その浸透率の高さがうかがえます。

また、2021年には全商取引の約50%がECへと移行し、2023年には63.9%に達する見込みとなっています。中国のこのような市場規模・EC化率の拡大予測は中国農村部のEC利用が本格化するという予測に由来しており、世界人口の約2割(14億人)が暮らす中国で今後もEC市場の拡大は続くことは間違いないでしょう。

ECへの参入障壁の低下と、それに伴う競争の激化

世界のEC化率からはやや出遅れている日本も、物販系分野のEC化率は2019年の6.76%から8.08%へと1.32ポイント増となり、徐々にEC化率は拡大しています。身近なサービスとしては「誰でも手軽にECサイトが作れる」ことを売りにした事業展開が浸透しつつあり、各企業・個人の参入障壁は低くなってきたといえます。

しかし、参入障壁が低くなったことで様々な分野のEC市場上の競争が始まり、消費者はより良いサービス・商品を求めて検索行動を行うようになります。様々なマーケティング手法やトレンドが登場する中、企業は消費リテラシーの高まったユーザーを相手にサービス・商品を販売しなければなりません。競合ひしめく中、日々増え続けるマーケティング手法を学んでは実践し、早いスピードでPDCAサイクルを回していく必要があります。

ECサイトの代表的なマーケティング手法にWEB広告やメールマーケティング、レビュー戦略などがありますが、これらのマーケティング手法を用いて売上を維持することは大変難しいものとなっています。

今後のECサイトは「自社サービス・製品が新規参入する競合との差別化を図れているか」や「マーケティング手法においても他社に負けていないか」といった事柄を意識すると同時に、「海外ECの展開」を日々注意深く観察する必要に迫られているのです。

クリエイターたちがモノづくりに専念できる環境整備

EC市場への新規参入が増えることで今後競争が加速すると予想される日本のEC市場ですが、中国や米国といったEC先進国に追いつくには、良いサービス・製品がクリエイターによって生み出され、生み出されたサービス・製品がより良い形でユーザーに届くことがポイントになります。つまり、クリエイターが安心してモノづくりを行える環境を作るため、マーケティングやマネジメントに忙殺される課題を取り除き、優れたプロダクトが世の中に出続ける仕組みを作っていくことが重要なのです。

以下の2つの図表は、中国の消費者が「越境ECで購入している商品」と「越境EC事業者に望む改善点」を表しています。これらの表から端的に分かるのは、第一に中国の消費者は日本のEC化率で伸び悩んでいる「化粧品」を多く購入していることです。

第二に、真正商品(偽物ではなく商標権者・特許権者が販売した本物)を欲しているということです。

また、第三に、より多様な商品を欲していることから、日本の優秀なクリエイターがモノづくりに集中できる環境を作れば、中国の消費者なども想定した越境EC市場への参入も可能であることがわかります。

 

出典:経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」2021年7月より弊社作成

 

事業売却(M&A)も前向きな1つの選択肢

前章で述べた課題の改善策の1つとして「前向きなM&A」を選択することも立派な1つの経営戦略となります。前向きなM&Aとは、売却利益で新しいビジネスチャンスを創出したり、主力事業に経営資源を集中させたりすることを指します。つまり、モノづくり(ブランドづくり)が得意なクリエイター達は、苦手とするECの運営を得意とする企業に任せ、自分が得意とする領域に専念するということです。このような「前向きなM&A」は米国ではすでにトレンドとなっており、近年日本でも注目を集めています。

まとめ

日本のEC化率は世界のEC先進国に比べて劣るものの、EC化率は年々増加傾向にあり、まだまだ伸びしろが残っていると判断しても良いでしょう。しかし、競合の新規参入による顧客の奪い合いや日々変化するマーケティング手法への対応、クリエイターが安心してモノづくりを行える環境の整備など、これからのECサイト運営には様々な壁が立ちはだかっています。

ブランドの核である「モノづくり」を守り次世代へと繋いでいくためには、モノづくりの価値を潰さない販売プロセスを確保することが何よりも重要です。

株式会社いつもはそうした「D2C・ECブランドメーカーの受け皿が必要」という課題に対し、「既存事業の事業継承」という形で価値あるプロダクトを後世に残すお手伝いをしています。手塩にかけて育てたプロダクトを「手放す」のではなく、「襷を繋いでいく」心で最後まで伴走サポートいたします。