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【消費行動考察シリーズ】個人によるSNSの利用を多角的に考察する

【消費行動考察シリーズ】個人によるSNSの利用を多角的に考察する

Instagram、X(旧Twitter)などSNSはもはや個人の社会生活に溶け込んだ存在となっています。また若年層を中心にTik Tokの利用が急速に拡大するなど、数年単位でSNSのトレンドを捉えると変化も生じています。個人の消費行動の観点からもSNSは無視できない存在であり、SNSを活用してECでの販売額を伸ばしたという実例も多く目にするようになりました。SNSはマーケティングには欠かせない手段となっており、企業側の関心も不可逆的に高まっています。そこで今回は個人によるSNSの利用にフォーカスをあて、具体的な複数のデータをもとに多角的に考察を試みたいと思います。

EC市場規模に占めるスマホ経由比率の高まり


はじめに、スマートフォン経由のEC市場規模、およびEC市場規模全体に占める比率の推移について見てみましょう。2015年のスマートフォン経由EC市場規模は1兆9,862億円、金額ベースでの比率は27.4%でしたが、2022年には7兆8,375億円であり比率も56.0%と過半数を既に超えている状況です。

2015年から2022年までの7年間のスマートフォン経由EC市場規模の伸長率を計算すると、3.95倍になります。この間のスマートフォンを含むEC市場規模全体の伸び(※1)を計算すると1.93倍ですので、スマートフォン経由でのEC市場がいかに拡大しているか、これらの数字から容易に理解することができます。

X(旧Twitter)やInstagramといったSNSは、主にスマートフォンで使用されているケースが多いと考えられます。例えば、とある個人がInstagramの他人の投稿画像を参考にしてECで購入するといったシーンは非常に多いでしょう。よってスマートフォン経由のEC市場規模が拡大している状況から見ても、個人のSNS利用の動向を押さえておくことは重要と言えます。

■スマートフォン経由EC市場規模の推移(単位:億円)

出所:「電子商取引に関する市場調査」(経済産業省)を基に作成  ※1も同じ出所

個人によるSNSの利用率の拡大


次のグラフは、個人によるSNSの利用率に関する2012年から2022年までの10年間の推移です。この数値は総務省が毎年実施している「通信利用動向調査」の結果をまとめたものであり、「過去1年間にインターネットで利用した機能・サービス」というアンケートの問いに対し、「SNS」と回答した個人の比率を表しています。

SNSの利用率は、2012年はわずか36.2%に過ぎませんでしたが、2022年には75.4%と10年間で約2倍に拡大しています。特に興味深い点は、コロナ禍の2020年の利用率が70.2%と、前年の58.6%から急上昇している点です。自宅で有意義な時間を過ごすことを目的に、それまでSNSを利用していなかった個人が積極的に使い始めたと考えるのが自然でしょう。

2020年に急上昇したにもかかわらず、その後下落することなく少しずつ利用率は伸びています。SNSが社会生活の一部となっている現状を考えれば、SNSの利用率が今後横ばいで推移することはあっても、突然下落して70%を下回るといった状況は想像つきません。したがって、SNSの動向をウォッチしておくことは、個人の消費行動のトレンドを適切に把握する上で重要と考えられます。

■個人によるSNSの利用率推移(単位:%)

出所:「通信利用動向調査」(総務省)を基に作成

年代別/SNSツール別の利用率はバラツキあり


SNSの利用率が高いことは前項で説明したとおりですが、その詳細を把握するために年代別/SNS別の利用率を見てみましょう。LINEは全年代に万遍なく利用されていることがわかります。一方で、X(旧Twitter)とInstagramは若者世代ほど利用率が高く、高齢になればなるほど利用率が低下している傾向が見て取れます。Tik Tokはその傾向がより顕著に表れており、60代は11.8%、70代はわずか4.4%と高齢者の利用率は低い状態です。

Facebookの利用者は30代で46.5%、40代で38.2%となっており、ビジネスパーソンが多く利用していると考えられます。また、YouTubeはLINEほど万遍ではありませんが利用率は総じて高く、特に60代、70代の高齢者もよく利用している点が特徴的です。以上のように年代ごとにSNSツールの利用傾向は異なっています。マーケティング戦略を立案する際にはこの傾向に沿うことが基本条件となるでしょう。

尚、前項でSNSの利用率が75.4%と言う数値を紹介しました。その数値にはどのSNSツールが含まれるのか明確ではないのですが、数値の内容からLINEは含まれていない可能性が高い、またはアカウントはあるが利用していない個人が多いと推測される点を付記しておきます。

■年代別/SNSツール別の利用率(単位:%)(2022年時点 n=1,500)

出所:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成
参考までに、各SNSツールの推定ユーザー数も押さえておきましょう。最もユーザー数が多いのはLINEで推定9,500万人以上とされています。先述の通り、LINEは年代を問わず万遍なく利用されていますので、ユーザー数の多さは納得いくでしょう。次いでX(旧Twitter)、Instagram、Tik Tok、Facebookという順になっています。

■SNSツール別推定ユーザー数
出所:
LINE:「LINE Business Guide2023年4月〜9月期版 v1.2」(LINE株式会社マーケティングソリューションカンパニー)記載の2023年3月末時点の月間アクティブユーザー数を参照
X(旧Twitter):「We Are Social; Twitter; DataReportal; Meltwater」(DataReportal)による2023年1月時点の数値(Statista経由で取得)を基に作成
Instagram:「We Are Social; DataReportal; Meltwater; Meta Platforms」(DataReportal)による2023年1月時点の数値(Statista経由で取得)を基に作成
Tik Tok:「DataReportal; We Are Social; TikTok; Meltwater」(DataReportal)による2023年10月時点の数値(Statista経由で取得)を基に作成
Facebook:Statista発表の2022年予想値を基に作成

SNSの利用時間は若者層ほど長い傾向


続いて1日あたりのSNSの利用時間について見てみましょう。次に示す棒グラフは年代別/平日・休日別でのSNS利用時間(単位:分)に関するものです。この利用時間にはYouTube等の動画共有サイトは含まれておらず、LINE、X(旧Twitter)、Instagram等のツールの利用時間となっています。

平日では20代は87.3分と最も長く、次いで10代64.2分、30代48.2分となっています。その傾向は休日でも変わらず、20代が115.7分、10代も100.3分と平日よりも長い時間利用していることがわかります。やはり高齢になればなるほど利用時間は減っている傾向がはっきりと見られます。

10代から30代にかけては平日よりも休日の利用時間が長いですが、一方40代以降は平日と休日で利用時間にそれほど大きな差がない点は特徴的でしょう。30代までと比べて40代以降の利用時間はそれほど長くありませんが、SNSの利用が時間の経過とともにより深く浸透するとの仮定を置けば、これから先数年後には平日・休日を問わず40代以降のSNSの利用時間が長時間化する可能性も想定されます。

■1日あたりのSNSの利用時間(単位:分)(2022年時点 n=1,500)
※動画共有サイトの利用時間は除く

出所:「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

商品購入におけるSNSの活用は高レベル


では、商品の購入におけるSNSの活用度についてチェックしてみましょう。次の表は、商品を購入する際の参考とする情報源に関するアンケート結果です。情報源についてはわかりやすいように「非デジタル」「デジタル」に分けて表記してみました。

非デジタルについては、①店頭・店員、②TV・ラジオの番組等が年代に関係なく参考とされている点が特徴的です。また③新聞・雑誌の記事等は高齢化するほど参考率が高い一方で、④リアルの友人・知人についてはその逆で高齢化するほど参考率は低くなっています。

デジタル系についてですが、特筆すべき点は⑥SNSのクチコミ・評価について10代から30代の参考率がとても高い点です。特に20代は72.2%と表内の数値の中で最も高く、商品購入時、若年層がいかにSNSを参考にしているか、そのレベルの高さを理解することができます。

■商品を購入する際の参考とする情報源(単位:%)(2021年時点 n=5,493)

出所:「令和3年度消費者意識基本調査」(消費者庁)を基に作成

年々増加するソーシャル広告費市場規模


個人によるSNSの利用の高まりに歩調を合わせるように、企業側もSNSを活用したソーシャル広告を積極化させています。ここでいうソーシャル広告とは、SNSを通じた広告、およびYouTube等動画共有系の広告を含むものと定義させていただきます。

次のグラフで示されているように、2019年のソーシャル広告費市場規模は3,419億円、総広告費に占める比率は4.9%に過ぎませんでした。しかしながら3年後の2022年にはソーシャル広告費の市場規模は6,727億円、比率は9.5%と急上昇しています。恐らく個人によるSNSの活用度はさらに高まると考えられるため、ソーシャル広告費市場規模はさらに拡大し、同時に総広告費に占める比率も10%を超えてくるものと推測されます。

■ソーシャル広告費市場の推移(単位:億円)

出所:「日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(株式会社電通)を基に作成

まとめ

最後に本コラムのまとめを以下の通り記します。ご参照いただけますと幸いです。

1. EC市場規模に占めるスマホ経由比率
・2022年のスマートフォン経由EC市場規模は7兆8,375億円と2015年比で3.95倍です。
・またEC市場規模全体に占める比率は56.0%と過半数を既に超えています。

2.個人によるSNSの利用率の拡大
・SNSの利用率は、2022年には75.4%と2012年比で約2倍に拡大しています。
・特に興味深い点は、コロナ禍の2020年の利用率が70.2%と、前年の58.6%から急上昇している点です。
・SNSが社会生活の一部となっている現状を考えれば、SNSの利用率が今後横ばいで推移することはあっても、突然下落して70%を下回るといった状況は想像つきません。

3.年代別/SNSツール別の利用率
・X(旧Twitter)、Instagram、Tik Tokは若者世代ほど利用率が高く、またFacebookは30代、40代の利用率が高いことからビジネスパーソンの利用が多いと想定されます。
・YouTubeは高齢者の利用率も高い点が特徴的です。
・推定ユーザー数は、多い順にLINE>X(旧Twitter)>Instagram>Tik Tok>Facebookとなっています。

4.SNSの利用時間
・10代から30代にかけてSNSの利用時間は長く、また休日は平日よりも利用時間が長くなっています。
・SNSの利用が時間の経過とともにより深く浸透すれば、これから先、平日・休日を問わず40代以降のSNSの利用時間が長時間化する可能性も想定されます。

5.商品購入におけるSNSの活用
・商品購入時にSNSのクチコミ・評価を参考とする率は、10代から30代がとても高くなっています。
・特に20代は72.2%と非常に高く、商品購入時、若年層がいかにSNSを参考にしているか、そのレベルの高さを理解することができます。

6.ソーシャル広告費市場規模
・個人によるSNSの利用の高まりに歩調を合わせるように、企業側もSNSを活用したソーシャル広告を積極化させています。
・2022年にはソーシャル広告費の市場規模は6,727億円、総広告費に占める比率は9.5%と急上昇しています。

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