公開日:2021年12月23日

宅配便の“再配達率”の考察(2) ~再配達率下げ止まりの可能性~

宅配便の“再配達率”の考察(2) ~再配達率下げ止まりの可能性~

当サイトにおいて、2021年11月に「宅配便の“再配達率”の考察 ~率下落への期待感がある一方でゼロにはなりづらい根深い原因を探る~」というタイトルの記事を公開しました。同記事では、「再配達率の推移を見ると、長期的に下降トレンドになっている可能性が想定されます。ただし、もう少し今後の実態調査の結果を見る必要があります」と述べました。

もともと同記事の執筆にあたっては、国土交通省が年に2回、4月と10月に実施している宅配便の再配達率に関する実態調査の結果を参照していましたが、同省は2021年12月17日に最新の実態調査である10月分の結果を公開しましたので、今回はその最新の結果を加味し、あらためて宅配便の再配達率を考察したいと思います。

前回調査結果(2021年4月)から微増


はじめに、10月の調査結果を次の通りお伝えします。

・都市部   13.0%(2021年4月比 +1.0ポイント)
・都市近郊部 11.3%(2021年4月比 +0.6ポイント)
・地方    10.4%(2021年4月比 +0.2ポイント)
また、2017年10月分から半年ごとの推移は次の折れ線グラフに示す通りとなっています。

(出所:国交省「宅配便の再配達率サンプル調査」より作成)
都市部、都市近郊部、地方、いずれにおいても同年4月と比較し再配達率が上昇しています。この半年間は、多くの都道府県で緊急事態宣言が発出されていましたので、一般的に考えれば在宅率は低くなかったと想定されます。同時にこの期間は、置き配も少しずつ浸透していた期間であったとも思われます。にもかかわらず、わずかではありますが再配達率は上昇しています。前回の記事では、上述の通り「再配達率の推移を見ると、長期的に下降トレンドになっている可能性が想定されます。ただし、もう少し今後の実態調査の結果を見る必要があります」と述べましたが、現状に基づけば次の二つの仮説が考えられ、いずれかの状態であると思われます。

(仮説1)現在の状態は、もう一段下落する前の踊り場的な状態である

(仮説2)再配達率は下げ止まり状態にあり、これ以上下落することはない

いずれにせよ、もう少し国土交通省の実態調査の結果を見てみる必要がありそうです。

都市部>都市部近郊>地方の順で再配達率が高い点は変わらず


もう1点、直近の調査結果から見逃すことができない点があります。それは今回の結果も都市部>都市部近郊>地方の順で再配達率が高い点です。この結果は2020年4月時点の結果を除けば、全ての調査時点でこの順序は同じです。これは何を意味しているのでしょうか?前回の記事では次の仮説を置きました。

  • 地方よりも若い方の単身世帯の比率が高いために、都市部ほど再配達になりやすい
  • 都市部は交通渋滞によって時間通りの配送を達成しづらい
  • 都市部はそもそもの宅配便の量が物理的に多い
  • 都市部は大小道路が入り組んでおり、当日の宅配便の状況に応じて最適な配送ルートを見出すことが容易ではない

尚、国土交通省は同調査結果に関する報道発表資料のなかで、次のように述べています。

「国土交通省では、引き続き再配達の発生状況を継続的に把握するとともに、民間事業者や関係省庁と連携しながら、宅配ボックスの活用や置き配の普及・促進等に向けた施策を進め、引き続き宅配便の再配達削減に取り組んでいくこととしています。」

無論、宅配ボックスの活用や置き配の普及・促進は有効です。しかしながら、上に記述した4つの仮説が正しければ、宅配ボックスの活用や置き配の普及・促進だけでは解決できない根本的な原因が存在する可能性が考えられます。例えば、都市の規模別に交通インフラの特性に合わせた対策の検討<宅配便事業者>や、中央政府と地方自治体一体での、それぞれの土地にあった政策の推進<中央政府・自治体>といった施策が必要かもしれません。

宅配便の再配達率の改善は物流事業者のコスト削減、業務負荷軽減に寄与し、同時にCO2排出量の抑制といったメリットもたらします。これはEC業界にとっても喜ばしいことです。

デジタルシェルフ総研では、今後も国土交通省による宅配便の再配達率調査に着目し、最新の結果に基づいて考察を続けたいと考えています。

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