公開日:2024年8月15日

データで捉える個人のインターネット利用時間の変化

データで捉える個人のインターネット利用時間の変化

「テレビ離れ」ということがメディアを通じて報じられることがあります。これはインターネットの利用が進んでいることの裏返しです。ではインターネットはどのように消費者に利用されているのでしょうか。今回の記事はインターネットにおけるSNS、動画視聴、オンラインゲームの利用時間の状況や過去からの変化を具体的なデータで明らかにし、これから先、EC事業者として押さえておくべきポイントを解説します。

「テレビの視聴時間」と「インターネットの利用時間」の変化


はじめに、1日あたりのテレビの視聴時間とインターネットの利用時間について触れたいと思います。2023年における平日では、テレビが135分、インターネットが194分、休日では136分、175分となっています。平日、休日ともにインターネットの利用時間の方が長い結果となっています。

ところが過去からの推移を見てみると、2017年では、平日はテレビが159分、インターネットが100分、休日は214分、123分と、圧倒的にテレビの視聴時間が長かったことがわかります。そして両者の関係が逆転したのは、グラフの通り平日は2020年、休日は2022年です。

近年テレビ離れということが言われていますが、このように数字がその実態を表しています。この流れは不可逆的と思われるため、今後テレビの視聴時間がインターネットの利用時間を上回るといった再逆転は、事実上難しいのではないでしょうか。

ただし、休日のインターネットの利用時間の推移を見てみると、2020年から大きく変わっていません。平日についても、2023年は194分と前年から19分伸びていますが、こちらも2020年から2022年の間は横ばいです。インターネットの利用時間は今後大きく伸びるとは限らず、増加したとしても微増で推移するのではと予想されます。

テレビとインターネットの1日あたりの利用時間(単位:分)
【平日】

【休日】

出所:「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

SNS・動画視聴・スマホゲームの利用時間の伸び


ではインターネットの利用時間について、少し掘り下げてみましょう。次のグラフは「SNS」「動画視聴」「スマホゲーム」それぞれの利用時間の推移に関するものです。2023年の平日は、合計117分、休日は合計で161分となっています。2017年は平日が57分、休日が83分なので、2023年までの6年間で平日、休日共に約2倍になった計算です。

内訳を見てみましょう。2023年の平日はSNSが39分、動画視聴が54分、スマホゲームが24分、休日はそれぞれ47分、80分、34分となっています。このなかで注目したいのは動画視聴です。平日は54分、休日になると80分も動画視聴に費やしています。2017年からの推移を見ても、動画視聴の時間の伸びの大きさが一目でわかります。

一方でSNSに費やす時間ですが、平日では2020年から2023年にかけて横ばいで推移しています。休日の場合、2022年に55分とやや伸びたものの、2023年は47分と減少しており、2020年とほぼ同じ水準です。このことから、SNSの利用時間は今後大きく増えないのではと想定されます。

SNS、動画視聴、スマホゲームの1日あたりの利用時間(単位:分)
【平日】

【休日】

出所:「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

年代間で大きく異なる利用時間


ここまで説明してきた利用時間は「全年代の平均値」にあたります。そこで年代別の数値についてチェックしてみましょう。平日のSNS、動画視聴、スマホゲームを合せた利用時間は、全年代平均で117分ですが、10代は235分、20代は221分です。一方で50代は67分、60代は48分と極端に少なくなっています。

表の通り、休日の場合でも同様の傾向です。つまり年代別で捉えると、SNS、動画視聴、スマホゲームの利用時間には大きな開きがあります。長期的な視野に立てば、10年後には現10代が20代になり、現20代は30代になります。歳を重ねることで生活様式は変化しますので、この利用時間がそのまま維持されるかどうかはわかりません。しかしながら少なくとも全年代の平均値は今以上に増加することが容易に予想できます。

年代別の1日あたりの利用時間(単位:分)
【平日】

【休日】

出所:「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)を基に作成

動画視聴時間が増加している背景


SNS、動画視聴、スマホゲームのなかで最も利用時間が長いのは動画視聴です。前出のグラフにあるように、平日で10代は112分、20代は101分、そして休日には10代は174分、20代は135分と、とても長い時間動画を視聴しています。

動画視聴の歴史を紐解いてみると、ニコニコ動画は2006年12月に開始し、YouTubeは2007年6月に開始しました。2017年時点で動画視聴は全年代平均で平日15分、休日26分と長くはありません。

しかし2017年10月にショート動画のTik Tokが登場してから状況が変化します。翌2018年にTik Tokは新語・流行語大賞にノミネートされるほど、利用度が高まり始めました。トレンドを追いかけるように2020年8月にはInstagramリールがスタートし、2021年7月にはYouTubeショートが開始されました。

このような動きと共に動画視聴時間が急増し始めます。つまり、ショート動画の登場と利用の拡大が動画視聴時間の増加につながったということができます。今やTik Tokは自らがトレンド大賞を発表するようになっています。このことからも、いかにショート動画が普及しているかが理解できるでしょう。

動画視聴ツールの登場の歴史

EC事業者はどのように立ち向かうべきか


SNS、動画視聴、スマホゲームの利用時間が増加していることをお伝えしました。また、その中で特に動画視聴の時間が若年層を中心に伸びていることも説明しました。裏を返せば、それら以外の時間が削られていることを意味しています。

人間に与えられた時間は誰でも等しく1日あたり24時間です。食事や睡眠、仕事や勉強の時間もあるでしょう。個人消費の観点から今のトレンドを捉えると、SNS、動画視聴、スマホゲームの利用時間の増加により、その分買物の検討に費やす時間や労力が少なくなっている可能性が考えられます。

これに対しEC事業者はどう立ち向かうのかが問われています。ポイントは大きく2点ありそうです。1点目は限られた個人の時間を自社製品に向かわせるための戦略です。「アテンションエコノミー」という用語が存在するように、製品の良さもさることながら、注目度の高まりがその製品の価値を高めるといったことが今後も継続するでしょう。

2点目はショート動画の活用です。前述のとおりTik Tokに始まったショート動画の盛り上がりが動画視聴の時間の増加につながっています。そうであるならば、ショート動画を重要なマーケティング手段として活用することが、有効な打ち手の一つになり得るのではないでしょうか。今回ご紹介したデータを参考に、今後のEC戦略を練っていただければと思います。

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