中国・米国のライブコマース市場規模
これから先、企業にとってライブコマースは間違いなく重要な販売手段の一つとなると考えられています。そこで当社ではライブコマースをテーマに複数回にわたってご紹介しました。第1回目は、ライブコマース実施方法、第2回目はライブコマースの“歩み”について述べました。
第3回目の今回のテーマは「ライブコマースの市場規模」です。ライブコマース大国である中国、そして米国のライブコマース市場規模について触れたいと思います。加えて両国のライブコマース市場に関連する情報もご紹介します。既にライブコマースに取り組んでいる方々のみならず、これから検討しようとしている方々も含め、本ブログが皆様の参考となれば幸いです。
※※注意 文中の為替レートは140円/USドル、20円/中国人民元で計算しています。
中国のライブコマース市場規模と関連情報
膨大なサイズの市場規模
中国はライブコマース大国として知られていますが、その市場規模は膨大です。2017年はわずか196中国人民元(約392億円)でしたが、2023年には4兆9,168億中国人民元(約98兆円)にまで拡大しています。グラフで示している通り、中国のライブコマース市場規模は右肩上がりで急成長しており、その勢いは衰えていません。2024年には日本円で100兆円を突破することは確実と見られます。
第2回でお伝えした通り、中国におけるライブコマースを語る上で欠かせないのが、インフルエンサーの存在です。中にはライブコマースを通じて日本円で年間数十億円の利益を稼ぐインフルエンサーもいるように、同国ではインフルエンサーがライブコマース界をけん引している点が特徴です。
ライブコマースの3大プラットフォーム
ここで、中国で人気のあるライブコマースプラットフォームを見てみましょう。最も人気があるのはDouyin(抖音)でライブコマースプラットフォーム上の流通総額全体の47%を占めています。DouyinはTik Tokを運営するバイトダンス社が提供しています。Douyinに次いで多いのがKuaishou(快手)で27%、そして第3位がTaobao Liveで23%です。
3者合計の流通総額を算出すると約4.5兆中国人民元(約90兆円)です。上で示したように中国のライブコマース市場規模は約98兆円です。つまり、中国のライブコマースの大半はライブコマースプラットフォームを通じて行われており、かつDouyin、Kuaishou、Taobao Liveの3者によってシェアが占められているということになります。
人気商品
ではどのような商品が中国では人気があるのでしょうか。次のグラフは中国のインターネット利用者を対象にした、ライブコマースで購入したことがある商品に関するアンケート結果です。「アパレル・靴・帽子」が63%でトップ、次いで「食品・飲料」62%、「コスメ」52%と続いています。また「果物・農産物」が51%と高い回答率である点も特徴的です。
グラフの通り、回答率が低い商品もありますが、全体的に様々な商品がライブコマースで取り扱われていることがわかります。中国のこのデータから、アパレル、食品、コスメ等が人気ではあるものの、ライブコマースに適さない商品ジャンルというものは無く、広く可能性があると見てよいでしょう。
米国のライブコマース市場規模と関連情報
米国の市場も着実に拡大
続いて米国のライブコマース規模について見てみましょう。2022年は200億USドル(約2.8兆円)でしたが、翌2023年は500億USドル(約7兆円)と2,5倍に急拡大しています。その後やや成長ペースは緩み2026年には680億USドル(約9.5兆円)に拡大すると予想されています。
中国のライブマース市場規模は突出していますので、中国と比較すると米国の市場規模は小さく見えてしまうかもしれません。しかしながら2023年の7兆円というのは絶対額で見れば非常に大きな規模です。参考までに日本の2022年の物販系BtoC-EC市場規模が14兆円です。その半分の規模であると考えれば、米国のライブコマース市場規模の大きさを実感できるでしょう。
ライブコマースの実施方法は様々
中国ではDouyin、Kuaishou、Taobao Liveといったプラットフォームを通じてライブコマースが実施されていますが、米国の状況は異なります。第2回のコラムでもお伝えした通り、米国では2016年頃にFacebookやInstagramがライブ配信機能を提供し始め、現在でもそれらを使用して多くの企業がライブコマースを実施しています。また、Amazonによる「Amazon Live」や大手スーパーマーケットチェーンのWalmartによる「Walmart Live」のように、大手EC事業者主導によるライブコマースの動きも見られます。
米国でもインフルエンサーによるライブコマースの事例は多く見られますが、それ以外にメーカーの設立者やマーケティング担当者自らが出演するケースや、例えばWalmart Liveの場合は店舗スタッフが出演するといったケースもあります。いずれにせよ、インフルエンサー主体の中国とは異なり、様々な出演者が登場する点が特徴的です。
人気商品
次のグラフは、ライブコマースを通じて過去1年間に商品を購入した経験のある消費者を対象としたアンケート結果です(調査時点は2022年9月)。“何を購入したか”との質問について「アパレル」が43%と最も多く、次いで「コスメ」32%、「アクセサリー」31%、「ボディケア商品」31%、「ヘアケア商品」30%となっています。
アパレルがトップである点は中国と同じですが、それ以外はほぼ横並びとなっています。ライブコマースの市場規模が異なるため、米国と中国を一様に比較することは難しいのですが、ライブコマースでの人気商品について、米国は中国とはやや様相が異なっていると思われます。ただし、ライブコマースの歴史は古くないため、今後のトレンドには注目しておきたいところです。