物流アウトソーシングの利用メリット・デメリット|選び方もわかりやすく解説
近年、企業は物流業務において、コスト増加や深刻な人手不足といった問題を抱えています。
特にEC販売をおこなう企業では、市場の急速な拡大に伴って出荷量が増加し、従来の物流システムや倉庫設備では対応が困難になっているケースも多いでしょう。
こうした状況下で注目されている課題解決の方法が「物流アウトソーシング」です。
しかし、物流を外部に委託していいのか、どうやって業者を選定したらいいのかなど、不安を抱えている事業者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
株式会社いつもは、これまでに数々の国内EC事業者に対して、物流を含めた支援をおこなってきた実績があります。
本記事では、株式会社いつもが培ってきた経験をもとに、物流アウトソーシングについて以下の項目を解説します。
- 物流アウトソーシングとは?
- 物流アウトソーシングでできること
- 物流アウトソーシングのメリット・デメリット
- 物流アウトソーシングの必要性
- 物流アウトソーシングの種類
- 物流アウトソーシングの選び方
物流アウトソーシングで業務効率化をはかりたい・物流にかかるコストを削減したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
また、物流アウトソーシングに関する具体的な質問や相談がある方は、お気軽に株式会社いつもまでお問い合わせください。
※閲覧時期により本記事でご紹介の情報は変更・更新されている場合がございます。
物流アウトソーシングとは?
物流アウトソーシングとは、企業が自社の物流業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することを指します。
物流業務は、専門的な知識や設備・高度なシステムが必要とされる分野であり、自社で全てをおこなうとすると大きなコストや労力がかかります。
また、季節やキャンペーンによる繁忙期と閑散期の差が大きいため、人員や設備の調整が難しいという課題も出てくるでしょう。
しかし、物流アウトソーシングにより物流業務をプロに代行してもらうことができれば、配送品質の向上や業務効率化だけでなく、人手不足の解消まで期待できます。
さらに、最新の物流システムや設備を利用できるため、急速に変化する市場にも柔軟に対応可能です。
物流アウトソーシングでできること
具体的には、以下のような業務が挙げられます。
- 商品の保管や在庫管理・検品・ピッキング・梱包、そして出荷準備
- 商品の発送や配送ルートの最適化などの配送業務
- 商品の検品や再梱包・再出荷・在庫への戻しなどのアフターフォロー業務
また、上記に加えて物流に関する問い合わせ対応やトラブル時の迅速な対応を行うカスタマーサポートも受けることができます。
最適な物流アウトソーシングが実現できれば、物流業務にかかる負担を軽減し、社内リソースを企業のコア業務に集中させることが可能です。
物流アウトソーシングのメリット
物流アウトソーシングを利用するメリットは4つあります。
- コスト削減
- 業務効率化
- 品質向上
- 人材不足の解消
それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
コスト削減
1つ目のメリットは、固定費と変動費の両方でコスト削減できることです。
倉庫の建設や物流システムの導入など、大規模な初期投資が不要になるため、設備投資にかかるコストを削減できます。
また、物流業務に必要な人材の採用・教育・管理にかかる人件費の削減や、出荷量に応じて費用が変動するため、閑散期には無駄なコストが発生せず、運用コストの最適化を図ることができます。ただし後述しますが、独自の業務プロセスが多い場合は注意が必要です。
業務効率化
2つ目のメリットとして、物流のプロが業務フローを分析し、非効率な部分を改善することで、業務フローの最適化が期待できます。
また、高度な物流システムを利用できるため、情報の一元管理やリアルタイムでの在庫確認が可能になり、業務スピードと正確性も向上するでしょう。
品質向上
3つ目のメリットは、配送品質や顧客満足度の向上が期待できることです。
正確な出荷作業により、誤出荷や破損のリスクを最小限まで抑えるだけでなく、配送ルートの設定や複数の配送業者との連携によって、配送時間を短縮し納期の遅延を防ぐことできるでしょう。
また、物流に関する問い合わせやトラブルにも迅速かつ的確に対応できるため、顧客からの信頼やブランドイメージの向上にも繋がるでしょう。
人材不足の解消
最後は、物流に関わる人手不足を解消できることが挙げられます。
物流業界は深刻な人材不足に陥っているため、人材の採用自体が難しく、採用できたとしても一人前に教育するまでに時間とコストがかかります。
しかし、物流アウトソーシングを利用すれば、採用・教育コストをかけずともプロの人材に業務を担当してもらうことが可能です。
人手不足の解消に加え、法令遵守や労災リスクを業者に一任できるため、人材を抱えるうえでのリスクも軽減できます。
物流アウトソーシングの注意点
物流アウトソーシングには、メリットだけでなくデメリットも存在します。
- 自社のニーズに合わせたカスタマイズが難しい場合がある
- 物流コントロールの低下
- 情報漏洩リスク
- ナレッジの蓄積に工夫が必要
それぞれどのよう点に注意すべきか、対応策と併せてみていきましょう。
自社のニーズに合わせたカスタマイズが難しい場合がある
物流アウトソーシングでは、業者によって提供できるサービス範囲が異なり、自社の特殊なニーズに完全に対応してもらえない場合があります。
定型業務をパッケージ化している業者も多いため、特殊な商品の取り扱いや独自の業務プロセスに対してカスタマイズが難しいのです。
自社専用のサービスを求めると追加コストや時間がかかることもあり、コミュニケーションや管理に、かえって工数が増えてしまう可能性があるため注意しましょう。
柔軟性の高い業者に委託する、あるいは定型化できる業務のみを委託するなど、選択肢ごとに時間・金銭コストを試算したうえで、最適な選択をおこなうことが大切です。
物流コントロールの低下
物流業務を外部に委託することで、自社での物流コントロールが難しくなるリスクがあります。
具体的には、リアルタイムでの情報共有が困難になることで、在庫状況や出荷状況の把握に遅れが生じ、問題に対して即座に対応できなくなってしまうことが想定されます。
物流コントロールの低下に対しては、自社と物流業者間で情報共有システムを導入し、在庫や出荷情報をリアルタイムで共有する方法が有効です。
また、定期的なコミュニケーションを重ねることで、業務状況や課題を共有でき、問題の早期発見と迅速な対応が可能になるでしょう。
さらに、緊急時の対応方法やサービスレベル合意(SLA)を設定し、物流業者との間でサービスレベルを明確に定めることで、品質管理の基準を共有し、物流コントロールの低下を防ぐことが可能です。
情報漏洩リスク
企業内部の業務を委託することになるため、機密情報の漏洩リスクはどうしても高まってしまいます。
業者の情報管理体制が不十分であれば、顧客情報が漏洩する可能性があるため、大前提として、個人情報保護法に対応しているかを確認することが重要です。
また、業者が情報セキュリティに関する国際標準(ISO/IEC 27001など)を取得しているかを確認し、セキュリティ体制をしっかりと見極めることも必要です。
契約書には、必ず情報漏洩時の対応策や補償範囲・秘密保持義務を明記し、法的なリスクを最小限に抑えるようにしましょう。
そのうえで、業者に対して定期的な監査や評価を行い、情報管理体制をチェックすることも欠かせません。
ナレッジの蓄積に工夫が必要
物流に関するナレッジが社内に蓄積されにくくなることも注意しておきましょう。
社内にナレッジがないと、物流業務の詳細を把握できず、意思決定に影響を与える可能性があります。
また、物流に関するスキルや知識を持つ人材が育ちにくくなり、社員の成長機会も失われてしまいます。
物流アウトソーシングを利用しながら社内にナレッジを蓄積するためには工夫が必要です。
対策としては、一部の物流業務やプロジェクトに社員を参加させ、現場の知識や経験を蓄積することも有効です。
業者を単なる委託先ではなく、パートナーとして長期的な協力関係を築き、ナレッジの共有と蓄積を実現しましょう。
物流アウトソーシングの必要性
物流業界は「2024年問題」と呼ばれる大きな課題に直面しています。
2024年問題とは、働き方改革の一環としてトラックドライバーの労働時間に上限が設けられたことで、物流の現場に深刻な影響が及んでいる状況を指します。
すでに稼働可能なドライバーの数が不足しており、その結果、ブランドメーカーの納品予定が遅延する事態も発生しているほど事態は深刻です。
この影響は仕入れ側のEC企業にも波及し、顧客からの注文に対して発送が遅れてしまう事案も起きており、これまで可能だった業務が困難になり、単なる業務効率化では解決できない状況に陥っている場合もあります。
ビジネスモデルそのものの見直しが求められている中で、物流アウトソーシングの必要性も高まっているかもしれません。
内部リンク先:【EC事業者向け】物流・運送業界の2024年問題とは?与える影響や対策も解説
物流アウトソーシングの種類
物流アウトソーシングにおける委託先の業者は、大きく2種類に分けられます。
- 定額系
- カスタム系
それぞれの料金体系やメリット・デメリットをみていきましょう。
定額系
定額系の物流アウトソーシングは、月額固定料金でサービスを利用できます。
基本的な物流業務がパッケージ化されており、料金が明確で予算の管理がしやすいという特徴があります。
コストの見通しが立てやすく、毎月の費用が固定されているため、予算計画が容易になる点は大きなメリットでしょう。
また、パッケージ化されたサービスのため、導入までの期間が短く済み、シンプルな契約内容で手続きが簡単です。
しかし、パッケージ化されているため、自社の特殊なニーズに対応できないというデメリットがあります。
また、必要のないサービスまで含まれているため、無駄なコストが発生する可能性もあるでしょう。
パッケージ外のサービスを求めると、別途料金が必要になることもあるため、自社の物流フローを分析したうえで、委託するか判断することが重要です。
カスタム系
カスタム系の物流アウトソーシングは、サービス内容に応じて料金が変動します。
自社のニーズに合わせてサービスをカスタマイズでき、柔軟性が高いことが大きな特徴です。
特殊な商品や業務プロセスにも対応でき、必要なサービスだけを選択できるため、費用対効果の向上が期待できる点は大きなメリットでしょう。
しかし、委託内容が複雑になるとコストの予測が難しくなり、料金の変動が大きくなる傾向があります。
また、カスタマイズに時間がかかるため、導入までの期間が延びる可能性がある点は、デメリットとなるでしょう。
定型業務のアウトソーシングには不向きなため、自社の独自性を客観的に分析したうえで、委託するか検討しましょう。
物流アウトソーシングの選び方
物流アウトソーシングを成功させるためには、下記のポイントを押さえて業者を選ぶことが重要です。
自社の課題とニーズを明確にする
どの業務を委託したいのかを具体的に洗い出し、コスト削減・効率化・配送品質の向上など、何を改善したいのかを明確にしましょう。
業者の実績と信頼性
同業種や類似業態での実績があるかをチェックし、他社からの評価や口コミを調べ、信頼性を確認します。ISO規格などの品質認証を取得しているかも併せて確認しましょう。
サービス内容と柔軟性
自社のニーズに合ったサービスを提供しているか、特殊な要件に柔軟に対応できるかを確認しましょう。料金体系(初期費用・月額費用・追加料金など)すべてのコストを明確にし、費用対効果が得られるかをシミュレーションすることが重要です。
セキュリティとコンプライアンス
個人情報や機密情報の管理が適切か、関連する法規制や業界標準に準拠しているかをチェックしましょう。コミュニケーションとサポート体制も重要で、問い合わせやトラブル時の対応が迅速か、定期的なレポートや打ち合わせが行われるかも確認することがおすすめです。
技術力・システム対応が可能か
最新の物流システムやテクノロジーを活用しているか、自社のシステムと連携が可能かを確認しましょう。急な出荷量の増加にも対応できるか、事業拡大や新規事業にも対応可能か検討することも大切です。
業者選定の際には、自社の状況を正確に把握することが最も重要です。
自社の課題やニーズを明確にしたうえで目的を設定し、その目的に見合う業者を選定しましょう。
物流アウトソーシング導入の流れ
物流アウトソーシングの導入の一般的な流れを解説します。
特に物流アウトソーシングにおいては、提案依頼書(RFP)の作成が重要です。
提案依頼書が不十分だと、委託後に物流事業者が把握していない業務が発覚するなどのトラブルに発展してしまいます。
現状のシステム状況や詳細な業務フローなどを確実に共有できるよう、提案依頼書は丁寧に作成しましょう。
まとめ
本記事では、物流アウトソーシングの概要から、メリットやデメリット・業者の選定ポイントまで解説しました。
物流アウトソーシングは、企業が直面するコストの増加や人手不足・配送品質といった課題を解決する有効な手段です。
専門業者に業務を委託することで、業務効率化やコスト削減・顧客満足度の向上が期待できます。
しかし、自社のニーズに合わない業者を選んでしまうと、期待した効果が得られず、かえって工数が増えるリスクがある点には注意が必要です。
物流アウトソーシングを効果的に活用して物流業務を改善し、長期的なビジネス成長を実現しましょう。
物流アウトソーシングに関するよくある質問
- 小規模な企業でも物流アウトソーシングは可能ですか?
- 可能です。規模に関わらず、ニーズに合わせたサービスが提供されています。
- 物流アウトソーシングの契約期間はどれくらいが一般的ですか?
- 一般的には1年から数年の長期契約が多いですが、業者によっては短期契約やスポット対応も可能です。
- 複数の物流業者を使い分けることはできますか?
- 導入には注意が必要ですが、業務内容や地域によって最適な業者を使い分けることで、さらなる効率化が可能です。