小売業態別の売上高の状況

小売業態別の売上高の状況

消費者の消費行動は様々な外的要因によって常に変化しています。したがってその適切な理解は自社の売上を最大化する上で必要不可欠と言えます。

今回は、①スーパーマーケット、②ドラッグストア、③百貨店、④家電量販店の10年間の売上高を取り上げ、その推移から消費行動の状況を読み解きます。日本のEC化率は他国と比較し高くないので、実店舗メインの業態の売上状況の把握は、消費者理解の点で役立つと考えます。特にコロナが終息した現状においてどのような変化が見られるのか、また長期的なトレンドから今後どのような展開になるのか、データを基に探ってみたいと思います。

全体比較

全体概要

売上高の大きい順に ①スーパーマーケット > ② ドラッグストア > ③百貨店 > ④家電量販店となっています。

①スーパーマーケットは2014年から2019年まで横ばいでしたが、コロナを境に売上高が伸びています。ただしコロナ終息後の伸びは明らかに物価高が要因でしょう。当面売上高は伸びるでしょう。

②ドラッグストアは、2014年は4.94兆円に過ぎませんでしたが、急成長を遂げており2019年には百貨店を上回りました。2024年には8.92兆円と10年間で4兆円も積み増す結果になっています。

③百貨店は長期トレンドとして下落傾向でしたが、2024年はコロナ前の2019年の水準に戻りました。消費者のリアル回帰に加えてインバウンドニーズもあり、復活した印象があります。

④家電量販店はコロナ禍でやや伸びましたが、他業態と比較するとこの10年間は大きな波がなく推移していることがわかります。安定的な消費者ニーズに支えられているという見方ができるかもしれません。

小売業態別売上高の推移(単位:兆円)

出所:経済産業省 商業動態統計を基に作成

①スーパーマーケット

直近の売上高

2024年の売上高は合計で16兆793億円となりました。前年比でプラス2.73%です。カテゴリー別では食品が12兆9,192億円とやや増加しましたが、これは間違いなく物価上昇の影響によるものでしょう。一方で、アパレルが7,757億円と前年から減少しています。その他(日用雑貨、コスメなど)については2兆3,844億円大きな変化はありません。その他についても物価高の影響があると思いますので、若干消費者ニーズが減少し、そのことと物価上昇が相殺されたのではと想定されます。

長期トレンド

スーパーマーケット業界では食品が占める売上比率の高さが特徴的ですが、売上高を見るとさらに食品シフトが鮮明です。その反面アパレルは年々縮小しており、食品にシフトせざるを得ない要因ともなっています。アパレルはユニクロなど専門店での消費者ニーズが高まっていることの証明でもあるでしょう。スーパーマーケットは物価高騰が最も直撃する業態ですが、売上高の上昇を見る限り、競合との価格競争ではなく、商品への価格転嫁がある程度行われているように思われます。当面物価上昇は続きそうですので、売上高も必然的に伸びると思われます。

スーパーマーケットの売上高推移(単位:億円)

出所:経済産業省 商業動態統計を基に作成

②ドラッグストア

直近の売上高

2024年の売上高は8兆9,202億円となりました。前年比でプラス6.89%の大幅増です。カテゴリー別では「その他」を除いて4カテゴリー全て前年比で増加しています。特に「食品・健康食品」が伸びていますが、スーパーマーケットの伸びよりも高いため、単に物価高騰だけの要因ではなさそうです。また医薬品も大きく増加していますが、消費者のリアル回帰に加え、訪日外国人による日本の医薬品の購入が寄与していると考えられます。

長期トレンド

ドラッグストアと言えば、医薬品やコスメのイメージがありますが、実は売上高に占める「食品・健康食品」の比率が最も高いのが実状です。2014年と比較して2.35倍に増加していますが、店頭に安価な食品を大量に並べて消費者の関心を引き寄せ、店内において利益率の高い医薬品やコスメを購入してもらおうとする作戦にように思われます。また「ビューティ・ヘルスケア」も安定的に増加しており、EC側から見て、同商品カテゴリーの実店舗チャネルとしての強さを再認識させられます。

ドラッグストアの売上高推移(単位:億円)

出所:経済産業省 商業動態統計を基に作成

③百貨店

直近の売上高

2024年の売上高は合計で6兆3,272億円となりました。前年比でプラス6.23%です。カテゴリー別では、「食品」が微減となりましたが、「アパレル」、「その他(コスメ、日用雑貨など)」が伸びています。ドラッグストア同様、訪日外国人によるコスメ等の購入が、売上増に寄与しています。また消費者のリアル回帰の影響も大きいと思われます。一方で物価上昇にもかかわらず、「食品」の減少が気になります。

長期トレンド

百貨店は長期トレンドとして売上高が減少傾向でした。さらにコロナが追い打ちを掛けましたが、コロナが終息した現在は、消費者のリアル回帰、および訪日外国人による購入によってV字回復を遂げている最中です。2024年の売上高はコロナ前の2019年時点の売上高を超えましたが、訪日外国人も今後さらに増えると予想されており、また物価高騰もあってもう一段売上高は増加すると想定されます。ただし、そのような状況下でも「食品」が伸び悩んでおり、売上高上昇に向けた課題のひとつとなりそうです。

百貨店の売上高推移(単位:億円)

出所:経済産業省 商業動態統計を基に作成

④家電量販店

直近の売上高

2024年の売上高は合計で4兆7,288億円となりました。前年比でプラス4.59%です。カテゴリー別では「生活家電」「スマホ関連」「カメラ」「その他」がプラスとなっています。家電は電子部品や物流費の高騰で全体的に価格が上昇していますが、「生活家電」の伸びはわずかに止まっています。「PC関連」は減少していますが、一時的なものでしょう。「AV系」も同様に減少しており、コロナ禍での購入増加の反動と思われます。

長期トレンド

コロナ禍で家電量販店の売上高はやや伸びたものの、長期トレントとしては大きな変化は見られません。良く言えば安定的、ネガティブに捉えれば売上高が伸びていない業態だと言えるかもしれません。そのような状況下、「その他」が伸びていますが、これは食品や日用品が該当します。家電量販店はもはや家電専門というわけではなく、あらゆるジャンルの商品を取り扱う総合小売業を目指しているように見えます。また家電は定期的な買い替え需要に支えられていますが、近年美容家電、キッチン家電のバリエーションが増えており、消費者ニーズには細分化の傾向が見られます。このことが家電量販店にとって長期的にはプラスに作用すると考えられます。

家電量販店の売上高推移(単位:億円)

出所:経済産業省 商業動態統計を基に作成

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