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米国におけるサブスクリプションの事例考察

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アメリカにおけるサブスクリプションの事例

前稿「サブスクリプションのタイプ分類で見えてきた特徴と日本の具体的な類型」で、国内のサブスクリプションを整理しました。Googleによる9つのサブスクリプションの類型をもとに、ヨコ軸を「物販系」「サービス系」「デジタルコンテンツ系」という「財」の種別の観点で分類し、タテ軸はビジネスモデルの変化の観点での分類として二軸で整理してみたところ、それぞれの類型毎に消費者にとってのメリットが何であるかが分かりました。

また、サブスクリプションを提供する事業者側のメリットとして、自社商材・サービスへ消費者を誘った上で、ロックインを期待できる点や、例えば食品ロスの解消などSDGsの要素を含んでいる点が特徴的であることもわかりました。そこで今回の記事では、2021年のEC市場規模が日本円で約100兆円程度(※米国政府国勢調査局発表データ(2021年11月)より推測)と日本の約8倍のEC市場規模を誇る米国に目を向け、同国における具体的なサブスクリプションの事例を考察し、その特徴を理解したいと思います。

結論から言うと、細かな相違点はあれども、概ね米国の事例もGoogleによる9つのサブスクリプションの類型のいずれかの類型に合致するものであり、日米両国間で類型に関する違いは特にないと考えられます。しかしながら、それはあくまでも類型に関する日米比較です。そこで物販系、サービス系別に米国における事例を一歩踏み込んで考察し、その特徴を捉えてみたいと思います。

人気のある物販系サブスクリプション

はじめに、米国において人気のあるサブスクリプションを以下の通りピックアップしてみました。一見すると日本でも同様のサブスクリプションが存在するため中身自体はそれほど目新しいようには思われませんが、いずれも2010年代前半に設立されており、日本よりもビジネスの立ち上がりが早いように見受けられます。また、中には大手企業により高額で買収されているケースも見られ、日本とは異なってそのビジネススケールの大きさを感じ取ることができます。

ラインナップの多彩さ

前の項で「一見すると日本でも同様のサブスクリプションが存在するため中身自体はそれほど目新しいようには思われません」と述べました。しかし調べを進めると、ラインナップの多彩さに気付きます。例えば、ECプラットフォーム型のサブスクリプションを提供している「Cratejoy」では、Women、Men、Kids & Teen、Entertainment、Food & Drink、Books、Bath & Beauty、Spiritual、Home、Adultといったカテゴリー分けのもと、合計102のサブカテゴリーが設定されています(一部重複あり)。

日本でも「サブミー」や「サブスク」といったECプラットフォームが存在し、たくさんのサブスクリプションが提供されています。ECプラットフォームというビジネスモデル自体は同様ですが、米国のCratejoyにおけるラインナップ数はとても多く、その多彩さからトータルでの販売額も大きいと推測されます。

例えばBath & BeautyカテゴリーにおけるSkin careだけでサブスクリプションのラインナップ数は80にも及びます。また食品について、Snacksは129、Coffeeは54、BooksにおけるFictionは111です(いずれも2022年1月16日調査時点)。カテゴリーを問わず、万遍なくバリエーションが多彩であることが分かります。

このような状況から、米国ではサブスクリプションの幅広さを知ることができます。ちなみに、このCratejoyというECプラットフォーム型のサブスクリプションは同サイト上で売り手として自身の商品のサブスクリプションを開始する機能を提供しています。同サイト上にはマーケティング戦略の専門家による支援や、サービス開始のためのツール類を提供するとしており、ビジネスを開始するためのハードルを低くするよう工夫しているように思われます。このようなことも、多彩なラインナップの実現に寄与していると思われます。

サブスクリプションの普及を促進する環境

上述の通り、Cratejoyでは商品提供者がサブスクリプションを同サイト上で行いやすくするための支援策を講じています。一方で、例えば、Subblyというサブスクリプション支援企業があります。Subblyは、サブスクリプションを開始したい企業に対し、ホームページの制作、支払い/決済手段の提供、顧客データの収集といった機能を提供しています。

Cratejoyはそれ自体がモールであり、そのモール上でサブスクリプションを提供するスタイルですが、SubblyはあくまでもDtoCとして消費者向けにサブスクリプションを提供するために必要な機能が提供されている点が特徴です。また、Subbly以外にもサブスクリプションに係る機能を個別に提供する支援企業もあります。

例を挙げると、Bold, Recharge, Moonclerk、PayWhirlといった企業があります。これらはShopifyのようなプラットフォーム上でサブスクリプション機能のプラグインを提供する支援企業です。換言すれば、Shopify等で既にネットショップを開設している場合、追加的にそれらのプラグイン機能を活用すれば、容易にサブスクリプションを開始することができるものと思われます。

以上は商品提供者側を支援するサービスや機能についてでした。他方、米国において消費者がサブスクリプションを利用しやすい環境にはどのようなものがあるのでしょうか?

米国で展開されているサブスクリプションに関するレビューサイトとして、Hello Subscriptionというサイトがあります。このサイトはレビューサイトと言っても消費者からの投稿を基にしたレーティングのようなスタイルではありません。Hello Subscription社には専門のレビューワーが在籍しており、あらゆるサブスクリプションサイトをチェックし、そのレビュー結果を同サイトに記載しています。消費者はそのレビュー結果を参考にして、自身に最適なサブスクリプションを選択することができます。同サイトを見るとレビュー以外にクーポンが掲載されていることもわかります。サブスクリプション提供企業によるマーケティング手段の一環として提供されているものと思われます。

以上のように、消費者目線でもサブスクリプションの普及を促進する環境が整っていると言えます。

サービス系サブスクリプションの特徴

ここまでは物販系サブスクリプションについて触れてきました。ではサービス系はどうでしょうか?

以下に米国における興味深いサービス系サブスクリプションをピックアップしてみました。見たところ、その特徴はメンバーシップ形式での利用を前提としている点にあると思われます。

メンバーになることで通常よりも低額または無料で利用できるサービス形態というスタイルです。また、この中で買い物代行のInstacartですが、買い物金額が定額ではなく代行手数料が定額のサブスクリプションです。これは類型で言えば物販とサービスの融合に相当するものと位置づけることができますが、「買い物代行」に特徴がある点を踏まえ、本記事ではサービス系サブスクリプションに包含してみました。

ところで、サービス系サブスクリプションのメリットは次の点であると思われます。消費者の立場で見ると、メンバーシップ形式で利用する方が、月額トータルの料金で比較した場合、利用頻度によって結果的に通常価格での利用よりも安く抑えることができる点がメリットです。また提供者側の立場から見ると、高頻度の利用によって変動費の上振れリスクが想定されるケースもありそうですが、消費者のロイヤリティを高めることができ、総合的に考えて収益性があるとの判断に基づいているものと思われます。

尚、航空便搭乗以外は日本でも同類のサブスクリプションが展開されています。したがって、米国が必ずしもユニークなものばかりであるとは言えません。しかしながら、やはりビジネス規模が大きい点が米国らしい特徴ではないかと感じます。

日本の事業者による米国向けサブスクの事例

最後に、日本の事業者による米国消費者向けのサブスクリプションについて主なものを紹介します。食品系ではスナック菓子、ラーメン、非食品系では可愛らしいキャラクターグッズ、ガチャガチャ、漫画の詰め合わせといったものが、越境ECサブスクリプションとして展開されている事例があります。

スナック菓子についていえば、ポテトチップスやチョコレートといった一般的なスナック菓子、和テイストなスナック菓子、地方で販売されている菓子などバラエティに富んだスナック菓子が販売されている点が特徴的です。スナック菓子、ラーメン、キャラクターグッズ、ガチャガチャ、漫画に共通するのは、いかにも日本らしさが全面に表れた商品である点でしょう。

また、これらのサブスクリプションは米国に限らず全世界に向けて越境ECで販売されています。米国を含む諸外国には、日本の文化が大好きな人々が多くいることはご承知の通りです。そのような方々のためにも、また日本の文化の理解促進のためにも、日本らしいサブスクリプションの拡大には可能性があると言えるでしょう。

まとめ

最後にまとめを記します。

・細かな相違点はあれども、概ね米国の事例は日本で展開されているサブスクリプションの類型に合致するものであり、日米両国間で類型に関する違いは特にないと考えられます。

・米国において人気のある物販系サブスクリプションをピックアップしたところ、中身自体は日本と比較し、それほど目新しいようには思われませんが、いずれも2010年代前半に設立されており、日本よりもビジネスの立ち上がりが早いように見受けられます。また、日本とは異なってそのビジネススケールの大きさを感じ取ることができます。

・米国の物販系サブスクリプションは、商品の種類を問わずラインナップが多彩であることが分かります。米国におけるサブスクリプションの幅広さを知ることができます。

・米国では物販系サブスクリプション専門のECプラットフォーム、ホームページの制作、支払い/決済手段の提供、顧客データの収集といった機能を提供する支援企業が存在しています。このことから、米国ではサブスクリプションの普及を支援する環境が整っていると考えられます。また専門のレビューサイトがある点も消費者にとっては便利であると考えられます。

・米国のサービス系サブスクリプションについては、メンバーシップ形式での利用を前提としており、メンバーになることで通常よりも低額または無料で利用できるサービス形態という点が特徴的です。

・サービス系サブスクリプションの消費者のメリットは、メンバーシップ形式で利用する方が、月額トータルの料金で比較した場合、利用頻度によって結果的に通常価格での利用よりも安く抑えることができる点です。提供者側の立場から見ると、高頻度の利用によって変動費の上振れリスクが想定されるケースもありそうですが、消費者のロイヤリティを高めることができ、総合的に考えて収益性があるとの判断に基づいているものと思われます。

・日本の事業者による米国消費者向けのサブスクリプションには、スナック菓子、ラーメン、可愛らしいキャラクターグッズ、ガチャガチャ、漫画といったものが、越境ECサブスクリプションとして展開されている事例を目にします。いかにも日本らしさが全面に表れています。これらのサブスクリプションは米国に限らず全世界に向けて越境ECで販売されています。諸外国には、日本の文化が大好きな人々が多くいますので、日本の文化の理解促進のためにも、日本らしいサブスクリプションの拡大には期待を寄せたいと思います。

投稿者プロフィール

立川 哲夫(たつかわ てつお)
立川 哲夫(たつかわ てつお)
株式会社いつも 執行役員 DX戦略グループ
D2Cモデル構築支援、販路DX支援、デジタルシェルフ総研の主任研究員を務めている。大手メーカー・老舗企業のECスタートアップ、D2C参入時の戦略・人材育成、海外展開戦略立案サポートを行いながら、企業向けEC研修・セミナーの講師・EC業界専門紙・メディアへの寄稿も多数行う。著書に「EC戦略ナビ」「EC担当者 プロになるための教科書」などがある。

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