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地域商社による地方産品のEC推進

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地域商社による地域産品ECのEC推進

総務省統計局発表の直近の経済センサス(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200553)によれば、2016年時点で国内の企業数は約386万社にも及んでおり、そのほとんどが中小企業だと言われています。中小企業はまさに日本の経済・産業の原動力と言っても過言ではないでしょう。ECの側面でも同様のことが言え、日本の各地域に存在する多くの中小企業によって生み出された製品が、国内外のEC市場にたくさん供給されています。

しかし高い品質にもかかわらず、本来もっと売れてもよいと思われる製品が相当数EC市場に埋もれていると推測されます。限られた経営資源下において、中小企業が自助努力によってそのような状況を打破していくのは容易ではありません。また、高い潜在性があるにもかかわらず、そもそもEC市場に供給されていない魅力的な地方産品も多く眠っているのではないかと考えられます。

そのような状況下、近年国策として “地方創生” が推進されていますが、その担い手として地方産品等を専門的に取り扱う「地域商社」が注目されており、地域商社による地方産品等のEC販売の事例が見られるようになりました。そこで今回のレポートは、地域商社による地方産品のEC推進に関する事例と想定されるキーポイントについて考察したいと思います。

中小企業の定義

はじめに、本レポートの題材である中小企業の定義について押さえておきましょう。中小企業基本法では、次のように中小企業者が定義されています。

出所:中小企業・小規模企業者の定義(中小企業庁)を加工して作成(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html

また中小企業基本法では、小規模企業者は次のように定義されています。

出所:中小企業・小規模企業者の定義(中小企業庁)を加工して作成(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html

日本には膨大な数の中小企業が存在

では具体的にどれくらいの数の中小企業が日本に存在しているのでしょうか?

次のグラフは、総務省統計局経済センサスに基づいて、従業員の規模別に企業数をカウントしたものです。上述の通り、中小企業の定義が業種により異なりますので、その規模をわかりやすく理解できるよう以下の通り従業員の規模別に整理してみました。

出所:経済センサス(2016年調査)(総務省統計局)発表のデータを集計して作成(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200553

3,856,457社のうち、従業員数が4人までの企業が全体の74.0%にあたる約285万社という数値になっています。従業員数の規模が大きくなるにつれその企業数は減少しますが、99人以下の企業数の総計、すなわち100人以上の企業数を除いた総計は全体の98.5%にも及びます。

いかに中小企業の割合が大きいかを理解できると同時に、大企業のみならず中小企業が日本の経済・産業を下支えしている重要な役割を担っていることを、具体的な数字をもって感じ取ることができます。

中小企業の比率に地域差はなし

続いて、都道府県別の中小企業の比率について考察してみましょう。次の一覧表は、総務省統計局経済センサスに基づいて、都道府県別の企業数に加えて99人以下の企業数、およびその比率を付記した表です。先に述べている通り、全国の99人以下の企業比率は98.5%ですが、東京都が97.0%であることを除き、その他の道府県は全て98%以上の数値となっています。

出所:経済センサス(2016年調査)(総務省統計局)発表のデータを集計して作成(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200553

また地域別に従業員99人以下の企業数を集計し、視覚化したものが次のグラフです。関東が全体の29.9%、近畿が16.6%、両方を合算すると46.5%となります。両地方を大都市圏と位置付けたとすれば、それ以外の地域の合計は53.5%になります。中小企業は大都市圏だけに集中しているのではなく、各地方および道県に広く分散して存在していることがよく理解できます。このことから、中小企業の振興を推進するということは、地域企業の振興を推進することと同義であると言えます。

出所:経済センサス(2016年調査)(総務省統計局)発表のデータを集計して作成(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200553

各地域の産業振興を担う「地域商社」

中小企業の振興=地域企業の振興であると述べました。では、その地域企業を力強く支援する地域商社について見てみましょう。繰り返しになりますが、国策として地方創生が政府主導で推進されている中にあって、その推進役のひとつとして地域商社への期待が高まっています。地域商社を推進する政府組織である内閣府まち・ひと・しごと創生本部では、地域商社を次のように定義しています。

「農産品、工芸品など地域に眠る魅力ある産品やサービスの販路を、生産者に代わって新たに開拓し、1円でも高く生産者から産品を買い取れるよう、市場から従来以上の収益を引き出す役割を担う。」

「魅力ある地域の商材に即してマーケティング・販路開拓を行い、その収益と市場の生の声を生産者にフィードバックする。その後段階を追って、他地域との連携、観光等異分野との連携なども進め、域外から投資を呼び込めるようなビジネスモデルをプロデユース。地域の事業インフラ整備にも貢献する。」

出所:地方創生に関する都道府県・指定都市担当課長説明会(平成29年1月17日開催)(内閣府まち・ひと・しごと創生本部)における説明資料より抜粋(https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/tihousousei_setumeikai/h29-01-17-siryo13-2.pdf

また、同本部は地域商社事業の設立・普及を促す支援策として、地方創生推進交付金により、これまで100か所以上の地域商社事業の設立・機能強化に向けた取組を支援してきたと、ホームページ上で説明しています(https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chiikisyousya/index.html)。

それを裏付けるかのように、インターネット上で「地域商社」と検索すると、日本各地に地域商社がここ数年で多く設立されていることがよくわかります。また、その一つひとつを見てみると、物品を仕入れて新たな商流に向けて販売する、いわゆる商社機能にとどまらず、企画・マーケティング、観光業などその役割が幅広いことも同時にわかります。まさに地域商社はその地の産業振興という重責を担った存在であると言えるでしょう。

地域商社によるEC事例

そのような役割を期待されていることから、地域商社にとって、必然的にECを通じた地方産品等の販売は主要なチャネル戦略になりうると容易に想像できます。地域商社による地方産品等のEC販売を調査したところ、次の事例が見つかりました。販売されている製品はそれぞれに地域の特色があるものばかりですが、大半は食品、飲料が占めています。

尚、これらのビジネスモデルのイメージは次の図で表現できます。生産者によって生み出された製品を地域商社がまとめて取り扱い、ECプラットフォーマーまたは自社ECサイト上で消費者に向けて販売するビジネスモデルです。このモデルにおける地域商社の役割は、生産者の束ね役であると言えるでしょう。個々の生産者が自らの力でEC展開している事例は数多ありますが、地域商社が束ね役になることで、生産者はより良い製品の生産または製造に特化することができます。

消費者の絶対数が圧倒的に多い関東や関西の大都市圏向けに、大手百貨店やGMSといった実店舗の販売チャネルを開拓することができれば、商機を見出すことができるでしょう。

しかし、実店舗の新規開拓は容易ではありません。このような点が地域商社によるEC販売を後押しする要因と思われます。加えて、地方産品のEC販売に期待が寄せられる背景に、ふるさと納税の返礼品が挙げられます。ふるさと納税によって質の高い食品を受け取ることができ、多くの消費者が利用しているものと思われます。これにより、現在多くの消費者が地方産品に目を向けているのではと想像されますので、この点も地方産品等のEC推進にプラスに作用していると考えられます。

留意点は?

では、地域商社がECを推進するにあたっての留意点は何でしょうか?

まず1点目ですが、何よりもまず魅力ある地方産品の発掘と取り揃えでしょう。数多ある地方産品の中から物流を含めてEC販売に適する製品をどのように見極めるのか、目利きとなる人材が重要なポイントになると思われます。また選定にあたっては、地元のしがらみに左右されず客観的な目線を持つことも大切でしょう。製品選定をその地域とは関係のない外部の人材に任せるといった取り組み事例も耳にします。そもそも在りものの製品から選定する以外に、新たに製品を開発する手段もあるでしょう。

続いて2点目は販売対象となる製品のブランディングが挙げられます。実物は質が高いとしても、日本全国を見渡せば類似したものも多く存在するかもしれません。他と差別化する上でも訴求力の高いブランディングは何よりも必須であると考えられます。

3点目は収益性です。地方産品は大量生産を前提としていないケースも多いでしょう。したがって、目指す収益レベルについては実際の販売価格や調達コストを含め、関係者間で十分な検討と合意が必要と思われます。

最後に4点目は、ECプラットフォームの選択です。上述の事例では、大手ECプラットフォーマー上で販売しているケースもありますが、自社ECでの販売とどちらを選択するのが適切なのか、その判断も重要と考えられます。

まとめ

最後に本レポートのまとめを記します。

  • 従業員数が99人以下の企業数は全体の98.5%にも及びます。中小企業が日本の経済・産業を下支えする重要な役割を担っています。
  • 従業員99人以下の企業数を地域別に集計したところ、関東が全体の29.9%、近畿が16.6%、両方を合算すると46.5%となりました。中小企業は大都市圏だけに集中しているのではなく、各地方および道県に広く分散して存在しており、中小企業の振興を推進するということは、地域企業の振興を推進することと同義であると言えます。
  • 国策として地方創生が政府主導で推進されており、その推進役のひとつとして地域商社への期待が高まっています。地域商社はその地の産業振興という重責を担った存在です。
  • ECによる地方産品等の販売推進事例が増えてきています。販売されている製品はそれぞれに地域の特色があるものばかりですが、大半は食品、飲料が占めています。
  • 地域商社によるEC販売の留意点として、次の4点が考えられます。
    1. 目利きとなる人材
    2. 製品のブランディング
    3. 目指す収益レベル
    4. ECプラットフォームの選択

本レポートは以上となります。デジタルシェルフ総研では引き続き、地方産品のEC推進や地域商社の役割について着目し、調査報告をしていきます。

投稿者プロフィール

立川 哲夫(たつかわ てつお)
立川 哲夫(たつかわ てつお)
株式会社いつも 執行役員 DX戦略グループ
D2Cモデル構築支援、販路DX支援、デジタルシェルフ総研の主任研究員を務めている。大手メーカー・老舗企業のECスタートアップ、D2C参入時の戦略・人材育成、海外展開戦略立案サポートを行いながら、企業向けEC研修・セミナーの講師・EC業界専門紙・メディアへの寄稿も多数行う。著書に「EC戦略ナビ」「EC担当者 プロになるための教科書」などがある。

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