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【定点観測】上場企業の決算発表資料に見るEC事業のリアル(2) ~アパレル事業者および化粧品事業者編~

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【定点観測】上場企業の決算発表資料に見るEC事業のリアル(2) ~アパレル事業者および化粧品事業者編~

デジタルシェルフ総研のサイトでは以前に「上場企業の決算発表資料に見るEC事業のリアル」というタイトルで、上場企業による決算発表資料に基づく業種毎のEC市場の考察を行いました(https://itsumo365.co.jp/lab/13844/)。有価証券報告書、決算説明資料といった決算発表資料には、投資家が当該上場企業の経営状態をわかりやすく理解できるよう、売上、利益、費用等に関する様々な角度からの自己分析や、今後の経営方針等が記載されています。本レポート執筆時点でEC事業を展開する上場企業の2022年2月決算期までの資料が発表されています。そこで今回は定点観測的に2021年の暦年ベースにおける各社のEC事業概況を把握し、業種毎の状況を理解したいと思います。前回の(1)ではECプラットフォーム事業者およびスーパー・食品事業者に焦点をあてましたが、今回はその第二弾としてアパレル事業者および化粧品事業者を対象に、2021年のEC販売の状況を以下の通り考察してみました。

 

【留意点】

決算月は企業毎に異なっています。四半期決算のタイミングの都合上、数値を計算しても1月~12月の暦年に合わないケースがあります(例:5月決算月の場合、四半期決算のタイミングは8月、11月、2月、5月なので、1月~12月の集計ができないという意味です)。本レポートでは2021年の暦年での数値を捕捉したいと考えていますので、そのようなケースは極力2021年の暦年に近い12か月分の数値を計算の上掲載する方針とします(例:2022年5月決算の場合 → 20年12月~21年11月分を独自に集計)。

 

■アパレル事業者

アパレル事業者のEC売上(※注意:ZOZOの場合は流通金額)に関する結果を次の通り取りまとめました。プラスの伸長率であった企業が多いのですが、中にはPALやZOZOのように大幅に売上を伸ばした事業者もいれば微増であった事業者も見られました。中身は様々ですが、総じて良い結果であったのではないかと思われます。2021年は緊急事態宣言が発令されていた期間が長く、その分EC事業にとっては追い風であったと言えるでしょう。2020年はコロナの影響1年目で消費者が実店舗へ足を運ばなくなったことにより、アパレル業界にとっては実店舗向けの在庫リスクが高まった年であったと思われます。コロナの影響2年目の2021年は在庫対策の観点および引き続いての巣ごもり需要の観点から、ECへのシフトをさらに強める事業者も多かったように見受けられます。しかしながら同年10月に宣言が解除されたことによって実店舗へと消費者が流れた結果、2021年の10月~12月のEC売上が前年同期間比で微増に止まった、あるいはマイナスとなってしまった事業者も散見されました。このことが市場規模拡大の足枷となった可能性が考えられます。EC市場には未だ勢いがあることに間違いはありませんが、やはり実店舗とのトレードオフの関係は変わっていないことをあらためて理解させられます。

各社決算の参照元

ZOZO:https://corp.zozo.com/ir-info/
ファーストリテイリング:https://www.fastretailing.com/jp/ir/
アダストリア:https://www.adastria.co.jp/ir/
オンワード:https://www.onward-hd.co.jp/ir/new.html
TSIホールディングス:https://www.tsi-holdings.com/ir.html
パル:https://www.palgroup.holdings/irinfo/
ユナイテッドアローズ:https://www.united-arrows.co.jp/ir/index.html
ABCマート:https://www.abc-mart.co.jp/ir/
ロコンド:https://www.locondo.co.jp/ir

 

■化粧品事業者

続いては化粧品事業者に関する状況です。決算説明資料上、化粧品事業者は他の業種ほどECに関する経営データを明確に示していない傾向が見られ、またその記載方法も各社各様となっています。したがって以下の様式での整理となっていることについて予めご了承ください。化粧品事業者の数は非常に多く、以下に記載する6事業者だけでの判断はやや難しいのですが、2021年は1年を通じて概ねECの売上は好調であったと思われます。ECを除く化粧品の販売チャネルは百貨店、専門店、ドラッグストア、コンビニ、TV通販、訪問販売と多彩です。そもそも化粧品はブランドの分類が多彩であり、ブランド毎に販売チャネルに関する戦略が異なっていることから、結果的に販売チャネルが多彩になっています。とはいえ、コロナ禍にあってECを重視する化粧品事業者が増えてきている印象を受けます。例えばアパレルのECモールを展開するZOZOですが、2021年3月にコスメに関するECモールを開設しました。そして1年後の2022年3月時点で既に600以上のブランドを取り扱っていると同社は発表しています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000096287.html) このように業界全体で捉えればECシフトが鮮明となっていることが分かります。2022年も引き続きその傾向が継続しているものと予想されます。

各社決算の参照元

資生堂:https://corp.shiseido.com/jp/ir/
花王:https://www.kao.com/jp/corporate/investor-relations/library/
ファンケル:https://www.fancl.jp/ir/index.html
ポーラ・オルビスホールディングス:https://ir.po-holdings.co.jp/ja/Top.html
プレミアムアンチエイジング:https://www.p-antiaging.co.jp/ja/ir.html
アイスタイル:https://www.istyle.co.jp/ir/

 

投稿者プロフィール

立川 哲夫(たつかわ てつお)
立川 哲夫(たつかわ てつお)
株式会社いつも 執行役員 DX戦略グループ
D2Cモデル構築支援、販路DX支援、デジタルシェルフ総研の主任研究員を務めている。大手メーカー・老舗企業のECスタートアップ、D2C参入時の戦略・人材育成、海外展開戦略立案サポートを行いながら、企業向けEC研修・セミナーの講師・EC業界専門紙・メディアへの寄稿も多数行う。著書に「EC戦略ナビ」「EC担当者 プロになるための教科書」などがある。

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