D2C時代の広告とは? ~従来の広告との違いを説明~
D2Cの広告では多くの媒体に広告を表示させる従来の方法とは違い、SNS広告中心に出稿したり、ほとんど広告を出さなかったり、D2C企業の広告の工夫は様々です。
この記事では、国内外のD2C企業が実際にどのような広告を出稿しているのか、またD2C時代の広告運用のポイント等を網羅的にご説明いたします。
D2C時代の広告とは?従来の広告との違いを説明
D2C時代の広告の背景にあるのは、スマホ中心の社会、SNSの普及、消費者のリテラシー向上などです。ターゲットがデジタルネイティブなミレニアル世代やZ世代であるということもあり、広告の形も大きく様変わりしています。
D2C時代以前の広告といえば、テレビや街頭広告を中心とした「マス向けの広告」が主流でした。また、インターネットで買い物=パソコンを使った買い物というイメージもありました。
しかし、D2C時代は、単にマス向けに広告を打っても結果は出ません。いかに消費者目線で、その人に合ったものを提供できるか?がポイントになります。
D2C時代の広告とそれ以前の広告の違いは、下記の通りです。
- セグメントされた個人向けか、マス向けか
- SNS中心か、検索エンジンからの検索中心か
- 双方向のやりとりか、一方的な宣伝か
- 体験や情緒的価値を重視するか、商品自体に価値を感じるか
それぞれご説明いたします。
セグメントされた個人向けか、マス向けか
D2Cはデジタル広告中心です。デジタル広告はデータを集めやすく、また個人情報をもとに広告を表示させることができます。
従来のマス向けの広告は、個人情報をもとに表示させることはできず、幅広い人に同じ広告を表示させるしかありませんでした。
個人個人に適した広告を表示できる点が、D2C時代の広告の特徴です。
SNS中心か、検索エンジンからの検索中心か
D2CはSNSが主戦場なので、SNSに多くの情報が掲載されています。好きなブランドをフォローして、毎日そのブランドのアカウントをチェックするような仕組みになります。
そもそも検索エンジンを使わないこともあるのです。商品を探す際に、検索エンジンを利用せず、ダイレクトにブランドのページにたどり着くこともあります。
双方向のやりとりか、一方的な宣伝か
SNSを中心に、企業とユーザーが双方向にやりとりする機会が増えました。リプライやDM機能、アンケート機能などが手軽に利用できるためです。
従来の広告は、企業が一方的に表示するものでした。ここにもD2C時代と従来の広告の違いがあります。
体験や情緒的価値を重視するか、商品自体に価値を感じるか
D2C時代は、体験や情緒的価値が重視されます。ブランドが作られた背景や、誰が作ったか?によって購買意欲が変わるのです。従来は「その商品の見た目や機能に魅力を感じるから」という理由で購入されることが多かったはずです。
ユーザーがどこに価値を感じるのか?という面にも変化が現れています。
この章のまとめ
消費者に共感される商品やサービスを、SNSを通じて届けられるか?がポイントになっています。
広告費をかけて幅広くPRすることは、D2Cには馴染まないことも多いのです。
D2C企業が選ぶ広告出稿先はどこ?
そもそもD2CはSNSを主戦場としているため、SNS広告の出稿が盛んです。SNS広告はターゲティングの精度が高いため、年齢や性別、職業や趣味など個人に合わせた広告を打てることが大きな特徴です。
主なSNS広告の特徴についてご説明いたします。
若い女性向けの商品・サービスは、Instagramとの相性が抜群です。アパレルや化粧品、脱毛、雰囲気を重視した食べ物や旅行を宣伝するのに適しています。
タイムラインやストーリーズに自然な形で広告を表示できることもInstagram広告の特徴です。宣伝感の薄い、日常に馴染む広告を作成することがポイントになります。
Twitterの特徴は拡散力が高いこと。「リツイート機能」はTwitterの大きな特徴です。ターゲティングしたユーザーに届くことはもちろん、そのユーザーのフォロワーにも届くという意味では、より遠くまで宣伝できる媒体です。
実名や顔出しが不要なため、マニアックな内容のアカウントも多く存在します。そのため、マニアックなターゲット層を狙った広告出稿も可能です。
Twitter広告の特徴は、ユーザーのアクションによって広告費用の上下が決まること。反応が多ければその分料金も発生しますし、反応が少なければ料金もほとんど発生しない、という仕組みです。
ターゲティングの精度が他のSNS広告よりも高いことが特徴です。Facebookは実名登録で、年齢や居住地など細かい個人情報が正しく入手できるため、ターゲティングの精度が高くなっています。ジャンルは限られますが、「届けたい層に確実に届ける」という意味では、無駄の少ない媒体と言えるでしょう。
LINE
LINEも広告を出稿できます。利用者の世代が幅広いため、ミレニアル世代よりも上の世代に見てもらうことも可能。1日に何度も開くため、多くの人の日常に届けることができます。
ただし、FacebookやTwitter広告よりもターゲッティングで設定できるセグメントの幅が狭い傾向にあります。
TikTok
比較的新しい印象のあるTikTokには、インフィード広告や起動画面広告、チャレンジ広告、Tik Tok Adsなど様々な広告が用意されています。
他のSNSのように利用できる広告形態は、「Tik Tok Ads」。ターゲティングの精度が高い、運用型広告です。
TikTokは他のどのSNSよりも利用年齢層が低く、中高生も多いです。そのためエンタメ系動画の人気は高く、バズった時の拡散スピードはかなり速いです。
一方で、マッチしないジャンルも多くありますし、お金を持っていない(購買可能性の低い)ユーザーが多いのも事実です。
また、最低出稿額が数百万円からと他の媒体に比べると高額です。
YouTube
ご存知の通り、動画を使った広告ですから、画像や文字よりも多くの情報を伝えられます。「広告を10秒間観ないと目当ての動画が再生されない」といった設定もされているため、強制的に広告を観てもらうことができます。
他のSNS広告は、興味がない場合はとばされるでしょう。一方、YouTube広告は、興味がなくとも強制的に視聴してもらえるのです。
「強制的に視聴してもらえる」という特徴は、YouTubeならではです。
D2Cの広告費用と一般的なEC販売の広告費の違い
D2Cはリアルな店舗を持たずにインターネット上のみで展開されることも多く、広告もデジタル広告メインです。デジタル広告は、データが集めやすいことが最大の特徴。データを扱える専門家がいれば、「何に力を入れれば売上に繋がるのか」を的確に出すこともできます。
D2C企業では、1円も広告費をかけずに成功している企業も多いのが特徴的です。
低身長女性向けのアパレルブランドとして地位を確立している「COHINA」は、広告費をかけずに成功したブランドの代表例です。COHINAについてご紹介いたします。
<COHINA:低身長女性向けのアパレル>
・公式サイト:https://cohina.net/
・Twitter(フォロワー約1万人):https://twitter.com/cohina_official/
・Instagram(フォロワー約15万人):https://www.instagram.com/cohina.official/
COHINAは主にInstagramで通常の投稿を上手く活用しています。あくまでも通常の投稿を重要視しており、広告を使っている、という印象はありません。
400日連続で動画を配信したり、イラストやテキスト入りの投稿をしたり、とにかく「通常の投稿を継続的にすること」に重きを置いているようです。
また「#低身長女子」「#cohina倶楽部」といったハッシュタグを上手に活用し、広告費を使わずに十分な宣伝活動ができています。
D2C企業の中には、広告費を使わなくとも上手に情報を届けている企業もあります。
D2Cの広告媒体はSNSが中心と絞られているため、通常のEC販売のようにモールに広告費用を払ったり、リスティング広告などを行ったりしないので、非常にシンプルです。
EC販売では集客方法として広告運用が必須の手段ですが、D2C企業の場合はSNSでの情報発信および拡散による集客がメインです。EC事業ほど広告費用を使わなくても、ターゲット層に情報を届けやすい特徴があります。
ただ、広告費をかけずにSNSを運用するには、ユーザーの心をつかむクリエイティブの作成やこまめなコミュニケーションが必要です。広告費をかけない代わりに、SNS運用の「本物のスキル」や地道な作業が重要になります。
D2C企業の広告例をたくさん集めてみた
実際のD2C企業がどのような広告を出稿しているのか、調査してみました。国内国外合わせて6社をご紹介いたします。
【実例】国内のD2C企業
まずは日本国内のD2C企業をご紹介します。
<BASE FOOD:完全食>
・公式サイト:https://basefood.co.jp/
・Twitter:https://twitter.com/BASEFOOD/
・Instagram:https://www.instagram.com/basefood_tokyo/
SNSの通常のツイートやユーザーの口コミが多い印象のBASE FOODですが、ディスプレイ広告やAmazonのスポンサープロダクト広告も出稿しています。
このように、BASE FOODはSNSにとどまらず、幅広い広告を出稿しています。
一方で、BASE FOODは広告以外の施策が上手であることも特徴的です。ユーザーに口コミを投稿してもらうことで、「身近な人も利用している」という印象を打ち出すような企画を何度も開催していました。
宣伝費を使わないために、口コミを増やす工夫をしたり、メディアに取り上げてもらうよう工夫したり、広告以外の施策も徹底されています。
BASE FOODは一般的なデジタル広告を配信していますが、デジタル広告を使わないアピールも上手なのです。
<ドモホルンリンクル:女性向け基礎化粧品>
・公式サイト:https://www.saishunkan.co.jp/domo/
・Twitter:https://twitter.com/domo_hada/
・Instagram:https://www.instagram.com/domohorn_wrinkle/
ドモホルンリンクルは1974年に生まれたブランドです。D2Cという言葉はもちろん、インターネットやECという言葉が出てくる遥か昔に誕生しました。
そのため、他のD2Cブランドとは違い、テレビCMや紙面での純広告など従来の広告形態から知名度を獲得しています。
SNSのフォロワーは数千人程度なので、COHINAなどに比べると少ないように感じるかもしれません。しかしLINEでは双方向のコミュニケーションが取れるようサービスを作り、お客様の声に真摯に耳を傾ける仕組みを作っています。
D2Cの老舗ブランドだからこそ、本質をとらえながら、使えるところでSNSを上手く活用する手法をとっています。
<BULK HOMME:メンズ向け基礎化粧品>
・公式サイト:https://bulk.co.jp/
・Twitter:https://twitter.com/BULKHOMME/
・Instagram:https://www.instagram.com/bulkhomme/
BULK HOMMEは、Instagram広告や通常の投稿、Twitterのキャンペーン、ユーザーの口コミなどを上手に使って売上を伸ばしたブランドです。
元々はGoogle検索に連動したリスティング広告やアフィリエイト広告を出稿していましたが、良い結果は出なかったようです。また、洗練された写真を用いてInstagram広告を出稿した時も、イマイチだったそうです。
実際に手にとって使っているような写真に変えてから、売上が上がったことは有名です。
タイムラインやストーリーズに馴染むデザインの重要性が分かる事例です。
【実例】海外のD2C企業
続いて海外の事例もご紹介します。
<Away:スーツケース>
・Twitter:https://twitter.com/away
・Instagram:https://www.instagram.com/away/
・雑誌:https://gigazine.net/news/20180709-away-story/
Awayでは、広告を出稿すると費用が巨額になってしまうことから、広告出稿ではなく、雑誌を作ってブランディングをしました。「Here Magazine」という雑誌です。
写真やエッセイ、土地ならではのものを紹介することで、商品そのものだけでなく、体験全体をプロデュースすることに成功しています。
従来の広告でもSNS広告でもなく、雑誌を作ってしまうのは、Awayならではの施策です。
<Casper:マットレス>
・Instagram:https://www.instagram.com/casper/
・Twitter:https://twitter.com/casper/
Awayとは対照的に、テレビ広告やSNS広告に400億円以上をかけたマットレスブランドです。
アメリカやカナダに60以上の店舗を持ち、またAmazonなどとも提携しています。D2C企業ですが、「ユーザーと直接繋がること」にこだわらず、広く周知されるように施策しています。
ユニコーン企業でもあり、「成功したD2Cがどう発展していくのか」の例として世界中から注目を集めています。
この章のまとめ
D2C企業はSNS中心というイメージがあるかもしれませんが、そうとも限りません。
マス向けにテレビCMなどを打ち出しているブランドもありますし、そもそも広告費をかけられないために通常の投稿を上手に活用しているブランドもあります。
D2C企業は小さく始めることも多いはずです。まずはSNSの通常投稿に力を入れ、少しずつSNS広告を出稿し、ある程度ブランドが成長したらその他のデジタル広告に範囲を広げていくと良いでしょう。
今後のD2Cの広告戦略について考察
今後のD2Cの広告においてポイントになるのは、下記の点です。
- SNS中心は当たり前、動画の活用が今後の鍵になる
- 商品自体ではなく「体験」「共感」に価値を感じてもらう
- D2Cで成功している企業をベンチマークする
SNS中心は当たり前、動画の活用が今後の鍵になる
D2CにおいてSNSを活用するのは常識です。ドモホルンリンクルのような老舗を除けば、SNS無しでD2Cを成功させることはほぼ不可能と言ってもいいでしょう。
成功しているD2C企業は、InstagramやTwitterを上手に活用しています。しかし、YouTubeとなると、意外と活用できていない企業が多いです。
D2Cで成功している「北欧、暮らしの道具店」(https://www.youtube.com/channel/)はYouTubeの登録者数が30万人を超えており、人気のチャンネルです。しかし、他のD2Cブランドは、数百〜数千人のことがほとんど。InstagramやTwitterのフォロワー数が多くとも、YouTubeの登録者数が多いとは限らないのです。
「動画の時代」と言われていますが、YouTubeを攻略しているD2C企業は少ないのが事実。
これから差別化をはかるには、InstagramやTwitterはもちろんですが、YouTubeやその他動画を使った販促がキーポイントになるでしょう。
商品自体ではなく「体験」「共感」に価値を感じてもらう
商品の「機能価値」に重きを置かれる時代は終わりました。商品を買う体験や、企業理念への共感が、特に若い世代には重要なのです。
ストーリー性やブランド感を出すためにも、SNSを使った日常的な投稿は大切になります。
D2Cで成功している企業をベンチマークする
D2Cで成功している企業は、まだそう多くありません。海外でも、ユニコーン企業となったのは数社です。
D2Cのブランディングは難しいですが、予算をかけずに真似できることもあります。
ここまで「D2Cの広告」をテーマにご説明してきましたが、D2Cにおいては「広告に頼らないこと」がポイントになることも多いです。
もちろん従来のように、要所要所ではデジタル広告を配信する場面も出てきますが、日常的な日々のSNS投稿の積み重ねが結果に繋がる事例もあります。
「どのような広告を出稿すればいいのか」と考えるだけでなく、「広告以外にどんな届け方があるのか」も重点的に考える必要があります。
※本記事に掲載されている、事例の内容、売上に関する情報、サービスの価格・機能・仕様などの情報は、変更・更新になっている場合がございます。
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D2C時代の広告に関するよくある質問
- D2C時代の広告の背景にあるものは?
- スマホ中心の社会、SNSの普及、消費者のリテラシー向上などです。
ターゲットがデジタルネイティブなミレニアル世代やZ世代であるということもあり、広告の形も大きく様変わりしています。
- D2C時代の広告とそれ以前の広告の違いは?
- ①セグメントされた個人向けか、マス向けか
②SNS中心か、検索エンジンからの検索中心か
③双方向のやりとりか、一方的な宣伝か
④体験や情緒的価値を重視するか、商品自体に価値を感じるか
詳しくは下記でご説明いたします。
https://itsumo365.co.jp/blog/post-12900/