伸びしろは最大!?急拡大する食品ECの現状と課題
外食機会が減少し在宅での食事の需要が高まるなかで、食品ECへのニーズが急拡大しています。本記事では数ある業種のなかでも伸びしろが最も大きいと言える食品ECの現状と課題について整理してお届けします。
まずは食品ECの現状を把握しよう!
食品ECの現状①低いEC化率で伸びしろ大きい食品分野
下記の表の通り、経済産業省の2021年7月「電子商取引に関する実態調査」によりますと、日本の物販系全体のEC化率は約8%ですが、食品は市場規模が大きい割に3%前後とECシフトの比率が低い状態です。
コスメもまだまだ低くこのあたりが伸びしろとして大きいということになるので、D2Cブランドが成長できる可能性があるというように見られます。
食品分野の伸びしろが大きい理由①:ネットスーパーの浸透・普及
食品分野といえば、お隣の中国では盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)に代表されるように、EC機能を融合した実店舗の展開が話題です。
いわゆる次世代型小売店舗「OMO(Online Merges with Offline)」の先駆け的存在となっていますが、日本でも中国のようにオンライン施策の発展・展開がオフラインの小売事情を変化させていく機運は大いにあるのです。
例えばAmazonフレッシュは、大手ECプラットフォーム「Amazon」のプラットフォーム上で食品等の日用品を購入できるサービスとなっています。
Amazonフレッシュのラインナップを見てみると、普段スーパーやショッピングモールでよく目にする生鮮食品、冷凍食品、日用品などが並んでいます。
平日の仕事終わりにスーパーやショッピングモールに寄り道して、夕ご飯の食材や週末に必要な日用品を購入する人も多いことでしょう。
しかし「毎日寄る割には同じ商品ばかり買ってしまっている」「好きな食材・好きな加工品は決まっていて、いつも似たような献立ばかりになってしまう」といった状況の人が多いのではないでしょうか。
そうした現状にAmazonフレッシュなどのネットスーパーサービスは市場拡大の余地があるのです。
ただし今のところ配達可能エリアが限られているために、全国的な普及には至っていません。
とはいえ大手食品メーカー「AEON」も「イオンネットスーパー」のサービスを既に展開しており、都心エリアなどをはじめとしてサービスの拡充を図っています。
日本全国、地方エリアにも実店舗を構えるAEONがネットスーパーサービスを始めたとなれば、徐々に人口の少ない地方でもサービスが展開されていく可能性は十分にあります。
とりわけ過疎化が進んでいる地域などは、お年寄りが生活している家庭への宅配サービスなどが需要として見込まれます。
ユーザーがオンラインやオフラインを気にすることなく、どこにいても日々必要とする生鮮食品や日用品を購入できる世界が目の前まで来ているのです。
食品分野の伸びしろが大きい理由②:市場規模の大きさ
また日本のBtoC-EC市場規模は世界第4位となっており、1位の中国や2位のアメリカには遠く及ばないものの、3位のイギリスにはあと少しの所まで迫っています。(経済産業省の2021年7月「電子商取引に関する実態調査」より)
※「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(令和2年度版)」を参考に自社で作図
日本のBtoC-EC市場の市場規模はさることながら、物販系分野(食品含む)のEC化率は約8%、伸長率は前年比21.71%上昇と、高い成長実績を記録しています。
今後ますます様々な分野でデジタルの需要が高まることが予想されますが、食品分野は未だ低いEC化率、伸長率となっているため、どこかのタイミングで急激なデジタルシフトが起きてもおかしくない状況といえます。
お隣の中国やアメリカの先行事例などを踏まえつつ、日本でも予想されるデジタル化への動きを今後も追っていく必要がありそうです。
食品ECの現状②デジタルシフトで高まる「スモールスタート」
まだECがスタートしたばかりの頃は、「大手でEC=100億円くらいから」と言われており、参入までにとても時間がかかっていました。
しかしこの半年くらいで「初年度は数億~10億円くらいで良いから、とにかく早くデジタルの客層を捉えたい」ということに潮流が移ってきています。
特に食品メーカーでは「スモールスタート」が現実に起きてきており、これまで参入しなかったところも入り始めてきています。
食品ECの現状③サスティナビリティ・プラットフォーム・バックヤードがトレンドに
また食品で新しいトレンドとなっているのが、「ストーリーとしてのサスティナビリティ」、「ECプラットフォームの活用」、「D2C事業の人員体制・バックヤード」の3つです。
ストーリーとしてのサスティナビリティは、D2Cでは商品がオンラインで広がっていく上で重要になってきます。この対応はすでにアメリカでは必須となっています。
また、楽天市場やAmazonなどにただ出品するだけでなく、ランキングやベストセラーを獲得するなどECプラットフォームでの展開を最適化する戦略を進めていく必要があります。
さらに、事業においては人とバックヤード、こちらは体制の整備に時間が掛かることですが、最終的に業績に影響が出てきますので、きちんと組み上げていく必要があります。
食品ECの現状④倍増した食品EC出店と競合の増加
楽天市場の食品カテゴリーにおける新規出店数は弊社調べでは、2018年の586店舗から2021年には1259店舗とここ数年で倍増しています。
市場規模と拡大スピード自体はマーケットとして良いことですが、今から参入すると「なかなかの数の競合がいる」ということでもあります。
これは自社ECサイトでも同じ状況ですので、なんとなくの知見では勝てない状況が現実にはあるということを理解しておきましょう。
食品ECの成功ポイントについて
食品ECで成功させるには、食品ECが普及していない原因を知ることがポイントです。
先述したように日本国内のBtoC-EC市場の市場規模は年々拡大を続けているものの、食品分野はなかなか成長できていないのが実情です。
その原因としてまず挙げられるのが、「生鮮食品の取り扱いが難しいこと」です。
全国スーパーマーケット協会「消費者調査2015」によると、「食品や生鮮品を通信販売で購入しない」と回答した人の理由で最も多かったのが「自分の目で見て商品を選べない」というものでした。
次いで「送料がかかる・送料が高い」「配達時間に家にいないといけない」「商品の品質に不安」が理由として挙げられています。
加工品などはまだしも、生鮮食品などは文字通り「新鮮さ」が命の商品ですので、ユーザーが「自分の目で見て確かめたい」と思うのは必然といえます。
実際にスーパーやショッピングモールの売場に足を運び、生鮮食品の状態をチェックできる「安心」をユーザーは同時に購入しているといえるでしょう。
その「品質面への不安」という部分をネットスーパーが払拭できれば、多くのユーザーが「1度利用してみよう」と重い腰を上げる可能性があります。
また「食品・日用品の配達料」もクリアしなければならない課題となります。
やはり食材を各家庭へと配達する以上、事業者は一定の配達料をユーザーに請求する必要があるでしょう。
しかしスーパーやショッピングモールなどで購入できる生鮮食品・日用品に対して、配達料を支払うことに抵抗があるユーザーも少なくありません。
おそらく生鮮食品や日用品の購入が「日常」の域から出てないために、「なるべくお金をかけたくない」というユーザー心理が働いていると考えられます。
そうしたユーザーが日常に感じている部分をいかに「非日常」の域へとずらしていくのか、といった部分を考えることが「食品・日用品の配達料」の課題を克服する糸口になるかもしれません。
例えばコロナ禍で活躍が目立った「フードデリバリーサービス」は、緊急事態宣言下の外出制限時でも「店舗の本格的な味が楽しめる」という非日常感を演出したことでしょう。
生鮮食品や日用品をネットスーパーで購入しない人も、フードデリバリーサービスを利用した経験があるかもしれません。
仮にそうだとすれば、フードデリバリーサービスに支払う配達料と、生鮮食品や日用品のデリバリーに支払う配達料の差を考えてみる必要があるといえそうです。
以上のような現状を踏まえると、多くのユーザーが「未だ食品EC(ネットスーパー)を利用していない」あるいは「数える程しか利用していない」といった状況があると推測できます。
現状では食品ECを利用するユーザーが少ないために「サービス利用後の改善点」などはユーザーの声としてあまり挙がっておらず、まずは「利用する壁」を越えてもらう必要があるでしょう。
そこで実店舗を構える事業者は、自社ECを利用してもらうためのキャンペーンなどを展開すると効果や課題が見えてきます。
「なぜ自店舗のユーザーはECサイトで食品を購入しないのか」「実店舗における体験をECサイトでも同じように提供できないのか」といった問いを出す所から自社の食品ECはスタートするはずです。
どのような施策を行うにしても、まずは利用してもらい、フィードバックを社内に蓄積していくことがポイントとなります。
食品ECの成功事例6つ紹介!
ここからは弊社がサポートした事業者様の食品ECの成功事例をいくつか紹介していきます。「失敗しやすい」といわれる食品ECで各事業者がどのようにして成功してきたのか、その一端をご紹介します。
食品EC成功事例①:月商昨対1722%!精米加工、販売(宮城県)
宮城県を中心に東北地方のお米の仕入れ、精米加工、販売を手がけている某企業は、楽天市場の運営強化に努め、2021年9月の月商は前年同月比1722%に増加しました。
きっかけはコロナ禍における外出自粛等で飲食店などへの卸売りが減り、D2C・EC事業を自社の新たな経営の柱とするためでした。
楽天市場では様々な施策に取り組み、売上が大幅に伸びたことから、2021年7月度の楽天ショップ・オブ・ザ・マンス「米・雑穀ジャンル賞」を受賞しています。
食品EC成功事例②:月商昨対130%以上!玄米、雑穀米、加工食品販売(東京都)
本社を東京に置き、玄米や雑穀を中心とした加工食品販売を続ける某企業は、ブランドの認知度向上、新たなターゲット顧客との接点の創出を図るため、ECプラットフォーム販売の強化に踏み切りました。
当該事例では楽天市場店とAmazon店で検索対策や、検索連動型広告の運用強化などに取り組み、2021年6月の月商がどちらも前年同月比130%を超える成果を出しています。
D2Cブランドとして「ECプラットフォームへの出店」は意見が分かれる部分ではあるものの、「必要とするユーザーがいる」その思いで出店を決意した結果、このような成果へと繋がっています。
食品EC成功事例③:アクセス数3ヶ月で1.7倍!冷凍食品、乾燥野菜販売(北海道)
北海道産の農水産物を使用して冷凍食品、乾燥野菜販売を行っている某企業は、独学で運営していた楽天市場にて、弊社のコンサルティングサービスによる検索対策に取り組んだ結果、2021年5月のアクセス数が契約直前の2021年2月と比べて177%(約1.7倍)に増えました。
具体的には楽天市場で使われやすいキーワードや、購入に繋がりやすいキーワードの見つけ方を知り、商品ページに盛り込むなどして成果を上げています。
食品EC成功事例④:売上昨対150%!牛丼チェーン(東京都)
国内で1200店舗を展開する某牛丼チェーンは、2013年から開始しているネット通販事業のうちAmazon店の成長を加速させるため、弊社サービスを活用いただきました。
契約から半年後には月商が前年同月比約150%に増え、2019年12月に月商が過去最高を更新するなど、大きな成果を上げています。
運営時の課題であった「リソース不足」と「知見不足」を解消し、「売上を伸ばすための本質的な部分に手が届いた」と嬉しい報告のあった事例となりました。
食品EC成功事例⑤:Amazon店の売上1.8倍!お弁当宅配(東京都)
弁当宅配サービスを手がける某企業は、2019年に開始した冷凍弁当のEC事業の成長を加速させるため、弊社サービスを利用し、Amazonにおけるサイト運営やページ制作、広告運用改善などに取り組むことで、Amazon店の月商が契約前の約1.8倍に増えました。
Amazon店の運用全般を弊社がワンストップで担当することで、サポート事業者様のリソース問題を解消し、施策の実行やECサイトの改善をスムーズに進行できた事例となります。
食品EC成功事例⑥:自社EC注文数昨対150%!自家焙煎コーヒー販売(京都府)
自家焙煎コーヒーを提供する某喫茶店運営事業者様は、2004年から行っているコーヒー通販の売上をさらに伸ばすため、弊社のコンサルティングサービスを利用いただきました。
自社ECサイトの集客や転換率向上につながる施策に取り組み、広告を使うことなく月間注文件数が前年同月比150%以上に増えるなど大きな成果を上げています。
喫茶店の経営が本業ということもあり広告は利用していませんでしたが、口コミ等で徐々に増えるオンライン注文に関して、本格的にテコ入れすれば売上が伸びる手応えがあった事例です。
具体的にはオーガニック検索流入を増やすための検索対策や、自社ECサイトにおける商品導線の改善などに取り組んでいます。
まとめ
日本のEC市場規模は年々拡大を続けるものの、食品ECはEC化率・市場規模ともに伸び悩んでいる状況です。しかしそのような状況でも着実に成果を上げている事業者が存在します。
これらの事業者に共通しているのは、各ECプラットフォームに精通しているプロから実際的な食品ECの運営方法、施策展開のアドバイス、さらには運営代行などを実施してもらうことで実現している、ということです。
ここに挙げた事例は弊社サポート事業者様の成功事例となりますが、自社の食品ECの今後のマーケティング施策を検討する際に役立てられますので、是非この機会にご請求いただければと思います。