Rakuten Optimism 2023レポート
去る8月2日から6日までの5日間、パシフィコ横浜において「Rakuten Optimism 2023」が開催されました。Rakuten Optimismが初めて開催されたのはコロナ前の2019年です。2021年、2022年とオンライン形式であったのですが、今回は4年ぶりにリアル形式での開催ということもあり多くの来場者でにぎわいました(※2020年は未開催)。そこで今回のコラムではこのRakuten Optimismについて考察を試みたいと思います。
そもそもRakuten Optimismとは?
Rakuten Optimismは楽天グループが主催するイベントですが、同社によるイベント専用のWebサイトでは次のような定義が記述されています。
“「Rakuten Optimism」は、楽天グループのエコシステム(経済圏)の概念とサービスへの理解促進を図るとともに、多くの方に新たな発見のきっかけとなる場を提供することを目的とした楽天グループ最大級の体験イベントです。”
出所:https://optimism.rakuten.co.jp/2023/about/
今回のイベントは4年ぶりのリアル開催ということもあり「ビジネスカンファレンス」以外に「フューチャーフェスティバル」も催されていました。前者は様々なテーマと登壇者による講演、パネルディスカッション、対話が行われ、後者は体験型のブースや物品購入、飲食を楽しむことができるブースなどが提供されました。
なお“Optimism”という英単語は日本語で“楽観的”“楽天的”という意味です。まさに同社の社名に相通じる単語でもあり、Rakuten Optimismというタイトルで明るい未来を指し示すという意図が含まれているようです。
合計11分野で構成されたビジネスカンファレンス
イベント自体は8月2日から6日にかけて開催されましたが、ビジネスカンファレンスは8月2日から4日までの3日間行われました。次の通り11の分野で構成され登壇者の顔ぶれも多彩でした。各講演テーマからは同社が重視しているキーワードが何なのかを垣間見ることができます。
11分野にわたって実施された講演や対談の中には、著名人の登壇によるものも含まれており、バラエティに富んだ飽きさせない内容となっていました。
~登壇した著名人の一例~
(宇宙飛行士)野口聡一氏、(クリエイティブディレクター)佐藤可士和氏、(元レスリング金メダリスト)吉田沙保里氏、(元なでしこジャパン代表)丸山桂里奈氏、(タレント)バービー氏、(元衆議院議員)杉村太蔵氏、(作家)乙武洋匡氏、(イェール大学准教授)成田悠輔氏
※詳細は以下参照
https://optimism.rakuten.co.jp/2023/conference/
過去のビジネスカンファレンスの構成との比較
ところで過去のRakuten Optimismにおけるビジネスカンファレンスの構成を今回と比較してみましょう。E-Commerce、Mobile、Marketing、Tech(Technology)、Fintechなどは定番分野として毎回設定されていますが、今回はAI、Travelが新たに設定されています。またSustainability、Greenといった環境配慮に関する分野も網羅されています。加えて通信プラットフォーム事業に関する同社の新事業「楽天シンフォニー」も2022年から新たに加わっています。まさに、トレンドや戦略に応じて分野全体のカバレッジが広くなっている点が特徴的です。
楽天グループとOpenAI社との提携発表
ビジネスカンファレンスはバラエティに富んだ構成であり、様々なトピックが盛り込まれていましたが、最も大きなトピックは楽天グループとOpenAI社との提携発表でしょう。
OpenAI社は言わずと知れたChatGPTを提供している米国のAI開発企業です。三木谷会長によるオープニングキーノートスピーチにおいて、OpenAI社のサム・アルトマンCEOがオンラインで登場し、その場で両社の協業が発表されました。2人のやり取りでは、楽天グループが保有する膨大なデータ(※講演内のスライドでは“世界に類のないデータリッチ企業”と称)を活用すればできることがたくさんあるということが語られました。
また、同会長は楽天グループが提供する様々なサービスにOpenAI社が提供するプラグインをつなぐことで、単に楽天グループが生成AIのメリットを享受するのではなく、(楽天グループの顧客企業などビジネスパートナーとしての)企業の業務効率・ユーザーエクスペリエンスを圧倒的にアップすると述べました。生成AIに関しては世界のみならず日本の各企業でも活用が徐々に進んでいることがメディア等で報じられています。楽天グループというEC分野のビッグプレーヤーが生成AIの活用を積極化することで、EC業界全体への波及効果を期待できるかもしれません。なお、楽天グループとOpenAI社との提携については同社によるプレスリリースをご参照ください。
【2023年8月2日付プレスリリース】
楽天、OpenAIと最新AI技術によるサービス開発における協業で基本合意
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2023/0802_01.html
フューチャーフェスティバルの中身
ビジネスカンファレンスは8月2日~4日の3日間であった一方、併設のフューチャーフェスティバルは8月2日~6日の5日間開催されました。合計19の出展ブースでは「食べる」「買う」「学ぶ」「遊ぶ」といった体験ができるものでした。その一部は以下の通りです。
まとめ
今回は4年ぶりのリアル開催ということもあって、前年よりも盛りだくさんの内容だったように思えます。ビジネスカンファレンスにおける著名タレント以外の顔ぶれも豪華であり、内容も濃かったのではないでしょうか。OpenAI社の提携発表や、本コラムでは触れていませんがウクライナに関するニュースリリースもなされており、話題にも事欠かなかったように感じます。
このようスタイルのイベントは通常メディアやイベント会社等が主催するケースが多いのですが、1社単独で開催するケースは多くありません。例えば同じEC業界で競合他社が同規模のイベントを開催したことは恐らくないでしょう。そういう意味で楽天グループの底力を企業や個人に対してアピールしたものと言えます。
今回の開催内容を踏まえれば、今年よりもさらにパワーアップした構成になるのではないかと予想できます。来年の開催にも期待しましょう。