公開日:2022年8月1日

ライブコマース市場の展望

ライブコマース市場の展望

中国のEC市場では、以前よりライブコマースの人気が高く、現在もその状態が続いています。日本でもライブコマースが一部のEC事業者によって開始されましたが、日本を含む中国以外の諸外国のライブコマース経由でのEC(以降“ライブコマース”と称す)に関する市場規模は、中国と比較するとそれほど大きいサイズとはなっていません。

しかしながらコロナ禍において自宅で過ごす時間の増加とともに、全世界的に徐々にライブコマースのニーズが高まっているように思われます。日本でも同様に今後ライブコマースが本格化する可能性が想定されます。そこで本レポートでは海外のライブコマース市場の状況を参考に、日本における同市場規模のポテンシャルを推定することとします。

世界の地域・国のライブコマースに対する関心度


はじめに、ライブコマースに関する消費者の関心度に関する統計を紹介します。次のグラフは月に1回以上ECを利用する消費者を対象とした海外のアンケート調査です(調査方法の詳細はグラフ下部の記述を参照)。全世界では11%が“関心がある”と回答しています。地域・国別に見ると、アジア太平洋が17%と最も高く、次いでUAE16%、米国14%となっています。情報リソースに明確な記述はないのですが、アジア太平洋が最も高い理由は中国が含まれているからと推測されます。

 

ライブコマースに関する消費者の関心

出所:「The Future Shopper 2021」(Censuswide社およびWunderman Thompson社共同)のデータを加工して作成

中国と米国におけるライブコマース市場規模


では具体的な市場規模を見てみましょう。次のグラフは中国におけるライブコマース市場規模の経年推移を表したものです。中国では2021年には日本円で43兆1,243億円と推定されています(19円/中国元で計算)。またEC市場規模全体に占める比率は15.5%にも及びます。元々のEC市場規模が巨大な上、ライブコマース市場の比率も15.5%と他の地域・国より相対的に高いため、43兆円以上の巨大な市場規模を形成しています。2020年の日本の物販系BtoC-EC市場規模が12兆2,333億円ですので、比較するとその巨大さを実感することができるでしょう。また、今後もライブコマース市場規模は増加し続けると予想されています。

 

中国におけるライブコマース市場規模(単位:億円)およびEC市場に対する比率

出所:ライブコマース市場規模
「China’s E-commerce Livestreaming Research Report 2021」(iResearch社)のデータを加工して作成。2021年以降は予想値。為替は19円/中国元で計算。

ライブコマース市場比率 同上
https://www.statista.com/statistics/1188550/china-gmv-of-ecommerce-livestreaming/

一方米国ですが、2021年で1兆3,970億円と推定されます(127円/USドルで計算)。中国と比較するとその規模は小さく、EC市場規模全体に占める比率も1.4%と低い状況です。しかしながら、以下のグラフの通り今後その規模は徐々に拡大すると見られており、2024年にはEC市場規模に占める比率は3.0%、金額ベースで4兆4,450億円にまで拡大すると予想されています。

年々比率が高まる予想ですので、長期的には米国でも数パーセントの後半まで比率が上昇することがあるかもしれません。中国と米国ではEC市場の成り立ちや個人消費に対する考え方が必ずしも同じではないため、両国を単純比較することは難しいですが、いずれにせよ先進国である米国においてもライブコマースが徐々に浸透しているとみることができると思われます。

米国におけるライブコマース市場規模(単位:億円)およびEC市場に対する比率

出所:ライブコマース市場規模 「Retail TouchPoints」(Coresight Research社)のデータを加工して作成。為替は127円/米ドルで計算。
ライブコマース市場比率 「Statista Digital Market Outlook」(Statista社)のデータを分母として算出。2021年以降は予想値。

日本でのライブコマース市場規模の展望


では本レポートの本題である日本でのライブコマース市場規模のポテンシャルを予測してみたいと思います。

中国は2021年でライブコマース市場規模の比率が15.5%と高く、消費者の消費行動が日本とは異なりますので、中国をベンチマーク対象にするのは適切ではないでしょう。一方米国は日本と同様に先進国です。EC市場のトレンドも日本は米国に3年程度遅れていると一般的には言われています。したがって米国のライブコマースに関する状況は、この先の日本にとって良い参考になるかもしれません。

そこで2024年に想定される米国のライブコマース市場規模比率を、その3年後の2027年における日本のライブコマース市場規模比率と置いてみたいと思います。ただし、日本ではライブコマース市場の形成が始まったばかりと考えられますので、2024年の米国のライブコマース市場規模比率3.0%の半分に相当する1.5%を仮の数値として置いてみましょう。

日本の2020年の物販系BtoC-EC市場規模は12兆2,333億円です。今後の拡大ペースをやや控えめに年率7.0%と仮置きし、2027年の同市場規模を算出すると、19兆6,440億円となります。この市場規模に1.5%を乗算すると2,947億円となります。あくまでも机上の計算ではありますが、日本でも最大で3,000億円近い市場規模が見込まれる計算になります。

尚、この数値は仮定としての最大理論値である点にご留意ください。実際にはこの数値を下回る可能性が想定されますが、EC市場規模が引き続き拡大基調にあり、諸外国を参考にすればライブコマースへの関心も高まると思われますので、中長期的には日本でも大きなマーケットが形成される可能性が想定されるでしょう。

日本で想定されるライブコマース市場規模の最大値予想

出所:EC市場規模は経済産業省令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)の2020年の物販系BtoC-EC市場規模の数値を基に計算

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