グローバルビジネスの基礎知識⑪~輸出マーケティング
海外渡航が困難な状況が長期化する一方で、貿易取引については依然として活発に行われています。
国内でのEC事業から、新たに海外進出を計画されている方も多いのではないでしょうか?
グローバルビジネスの基礎知識をお伝えしている本連載の第十一回は、輸出マーケティングについてお伝えします。
海外へ輸出戦略を展開する上で基本となる分析や戦略をご紹介します。
※海外展開に向けた調査手法としては以下の記事をあわせてご覧ください。
標準化戦略
グローバルビジネスを展開する上では各国間に存在する衣食住や習慣、宗教などの文化の違いや法令、経済状況等に対応して、製品やサービスを顧客に提供する際の調整をどうするかが課題になります。
標準化戦略とは、輸出先の市場との共通性に着目して、同一の商品を販売することです。つまりは、自国と均質性の高い市場をターゲットとして、物やサービスを販売することと言い換えることもできます。この場合には、新たに開発や変更を行う必要がないため、生産や在庫の関係で経済性を担保し、効率的に運用することが可能になります。他方で、文化や規制の違い等により適合せずに齟齬が生じる恐れもあります。
適応化戦略
それに対して、適応化戦略とは、輸出先の現地の顧客の嗜好の違いに注目をして、市場で受け入れられる商品を開発し提供することです。メリットとしては輸出先の消費者のニーズに合致した商品を展開できることがあります。他方で、各国で異なる仕様に修正をしなくてはならない分、コストが上振れしやすくなります。
このことは製品・サービスに限らず価格に関しても同様に、世界的に統一価格を設定する標準化戦略と、輸出先の市場ごとに消費者の所得水準や競合などの市場環境を踏まえて価格に反映、最適化する適応化戦略を取るかについてが判断のポイントとなります。
4つのPの再調整
マーケティングにおける4つの構成要素として「4つのP」、すなわち製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)およびプロモーション(Promotion)が知られており、これらの最良な組み合わせ(ミックス)が大切です。
そして、その上で、海外へと輸出する際には、現地特有の市場環境に合わせて、国内において設定したマーケティングを再度、海外版へと調整し直す戦略が求められます。
日本で売れているからといってその商品が輸出先でそのまま売れるとも限らず、反対に国内でピークを過ぎた商品であっても、海外では販路が拡大することは十分考えられます。
4Pの最適な組み合わせを再度、海外向けに見直しつつマーケティングを展開していきましょう。
ブランド戦略
新たな市場でどのように自社商品のブランドを輸出先にて確立していくのかも課題になります。
例えば、輸出先の市場において「日本産=クオリティ」というようなイメージがあれば、「Made in Japan」はブランドとして購買意欲を高めることになります。
地域の産物などで、地域ブランドとして確立することを目指して、認知度やイメージ向上の集合的な施策が展開されることもあります。
この取り組みとしては、日本の農産品の輸出額が2021年には1兆円を突破するなど、日本の地方特産の農産物のブランド化の取り組みが成果を挙げつつあることが注目されます。(参照:農林水産省「2021年の農林水産物・食品の輸出実績について」2022年2月4日)
半面で、ブランドが場合によっては負のイメージや誤解を与える恐れがあるような場合には、あえて輸出先の市場では商標や名称を変更するなどの対策をとることもありえます。
商標の抜け駆け出願対策
加えて、ブランドに関しては知的財産侵害や模倣品などの問題があります。特に、海外において、正当な権利を有しない他者によって商標が出願・登録される「商標の抜け駆け出願」(冒認商標)への対策が喫緊の課題です。
商標の保護は世界的に属地主義が採用されており、海外で商標を保護するには、その国で商標登録をしなければならないことを改めて認識しておきましょう。
インターネットによる情報収集が活発な現代では、外国で自身の商標が他人によって先取りされ、その結果、海外進出の妨げとなるリスクもありますので十分に注意をしましょう。
今回ご紹介した戦略以外にも、SWOT分析(強み 、弱み 、機会 、脅威 の4つのカテゴリーで要因分析)やPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、差別化戦略(他社との明らかな特異性を作り出すことで、競争優位を築く戦略)、PEST分析(政治、経済、社会、技術)など数多くの分析枠組みが存在します。
輸出展開する際には、不確実性の高い当該市場のあらゆるマーケティングに係る情報を分析して、取引を進めましょう。
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