公開日:2024年8月15日

ライブコマースの実施方法を知る

ライブコマースの実施方法を知る

中国で盛り上がりを見せているライブコマースですが、日本では2010年代後半から広まり始めたと言われています。中国の規模には及びませんが、日本でも2020年代に入りコロナを経てライブコマースが着実に広まりつつあります。時間の経過とともに、事例を目にする機会が増えてきました。

これまでの流れから推測すると、今後企業にとってライブコマースは間違いなく重要な販売手段の一つとなるでしょう。そこで、当社ではライブコマースをテーマに複数回にわたって連載を行うことにしました。初回となる本記事では「ライブコマースの実施方法」についてです。既に実施済みか未実施かにかかわらず、皆様のお役に立てるコンテンツをお届けできればと思います。

ライブコマースの実施スタイル


EC事業者がライブコマースを実施する場合、SaaS型(外部事業者のサービス利用)、または自社完結型(システムを自社で用意)といった二択で語られることが多いように見受けられます。しかしながら、実際には単なる二択というわけではありません。

実際にライブコマースが行われている方法を具体的に整理してみると、次の①~⑤に示すように、企業には5つの選択肢が用意されていることがわかります。各社それぞれが自社の思惑に則って、5つの選択肢のなかから適切な方法を選ぶことができます。

■ライブコマース実施の5つの方法

②SaaS型、③自社完結型について、消費者はその違いを意識することはありません。しかしそれを除けば、①はSNSでの利用、④は既存ECモール上での利用、⑤は専用のライブコマースモールにアクセスしての利用と言ったように、消費者からみた利用方法は異なります。次の項ではこれらの①~⑤について、その特徴を整理してみましょう。

それぞれの特徴とは?


①~⑤について、以下の通りそれぞれの特徴をまとめてみました。

①SNS型

Instagram、Tik Tok、YouTube等を用いたライブ配信を通じて自社商品の購入を喚起する手法です。特徴は、それらのSNSツールは消費者、企業双方にとって身近な存在であり、利用のハードルが低い点でしょう。

YouTube Liveは2011年からライブストリーミングサービスがはじまり、またInsta Liveは2016年からストーリーズにライブ動画機能が追加されるなど、早い段階でライブ配信が可能となっています。歴史が長くハードルも低いため、これまでに多くの企業やブランドがSNSでのライブ配信を行っていることでしょう。

SNS型の留意点ですが、あくまでもSNS型は「ライブ配信」であり決済機能は持っていません。よって、ライブ配信から販売に誘導したい場合には別途ECサイトのリンクを表示して案内する等の対応が必要になります。

②SaaS型

ライブコマース機能を提供する外部事業者のソフトウエアサービスをSaaS(Software as a Service)、つまりクラウドとして利用するスタイルです。自社サイトに大きな変更を加える必要がないので、比較的手軽に利用できるとされています。月単位で利用料金を支払う形となりますので初期費用を抑えたい企業向きとも言えます。

SaaS型で利用するため、機能は基本的にソフトウエアを提供する外部事業者に依存します。機能について細かなカスタマイズのリクエストが無ければ、SaaS型で十分かもしれません。詳しくはSaaSのサービスを提供する事業者の情報をご参照ください。

③自社完結型

自社サイトにライブコマース機能を有するソフトウエアをインストールし自社完結で行うスタイルです。いわゆる“オンプレミス”というものになります。自社完結ですので、カスタマイズなどの自由度が高まります。ソフトウエアの保守費用は除き、②SaaS型の様に月額利用料金を支払う必要はありません。

導入費用やメンテンナンスコストはかかりますが、企業ポリシーとしてITシステムを全て自己完結で運用したい企業にとっては適した方法でしょう。

④既存モール併設型

たとえば楽天は「楽天市場ショッピングチャンネル」というライブコマースを行っています。同様にau PAYマーケットは「ライブTV」、Qoo10は「Qoo10 Live Studio」というライブコマースを行っています。

留意点として、これらのライブコマースを活用するためにはそもそも出店していることが前提です。出店していればその延長線上に各モールが用意しているサービスを活用することができます。

⑤専用モール型

専用モール型とは、ライブコマースに特化した専用のモールを指します。専用モールでは複数のライブコマースが同時に進行しており、利用者はそのなかから気に入った配信を視聴することができます(※ライブコマースの実施状況については各モールによって異なります)。

ライブコマースに特化していますので、利用者から見ると分かりやすい点が特徴と言えるでしょう。一方でライブコマースを実施したい企業側からすると、あたかも楽天市場に出店するような感覚で専用モールを活用することができます。

専用モール型への着目


以上の①~⑤のなかで、本記事では専用モール型へ着目してみたいと思います。専用モール型の特徴は次の点と考えられます。

(1)本場中国では専用モール型が一般的

ライブコマースの本場中国において、とても人気の高いライブコマースに「Douyin(抖音・ドゥイン)」および「Kuaishou(快手・クアイショウ)」がというものがあります。なお、前者はいわゆるTik Tokの中国本家版にあたります。(※Tik TokはDouyinを運営するバイトダンス社が中国以外の海外版に展開している名称です。)

両者は共にショート動画の投稿・共有サイトとして有名であり、提供する機能の一つとしてライブコマースを行うことができるようになっています。ライブコマースで人気の高い両者は共にプラットフォーム企業です。膨大な数のライブコマースがDouyin、Kuaishouに集積して行われていることから、本家中国でのライブコマースは、あたかも専用モールと同様のスタイルであると言えます。

(2)専用モールとしてのブランディング効果

企業がライブコマースを行う際には、例えばSNSやメールマガジン、独自のスマホアプリなどを通じて顧客に告知を行い、集客することが一般的です。それらを駆使しながら各社各様に集客を行っていることでしょう。

専用モール上でライブコマースを行う際も同様です。しかし専用モールの場合、個々の企業によるライブコマース実施の認知とは別に、専用モールとしての認知度によって集客できるというメリットが考えられます。ライブコマースに関心をもってアクセスしてきた消費者を取り込むこともできるでしょう。この点が他とは異なる専用モールの特徴です。

(3)ライバー参画による相乗効果への期待

ライブコマースを実施する際、自社のスタッフによって進行するケース以外に、外部からライバー(インフルエンサー)を招いて進行するケースがあります。①~④のケースでもライバーによって進行されることはあります。

しかし専用モールでライバーが実演する場合、様々な企業(ショップ)がモール内に集積しているため、販売成績が良かったライバーに対する企業からの注目度が高まります。その結果ライバー活用の機運の高まりも期待できます。

この事象はより有能なライバーが特定の専用モールに集まる効果も産み出すため、企業側にとっては売上拡大への期待へとつながります(イメージ図参照)。これらが相乗効果を産むことができれば、モール側にとっては利用企業の増加や集客力、ブランディングの向上を期待できるようになるでしょう。

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