公開日:2017年7月13日

規模の大きな事業者が陥りやすい基幹システムの落とし穴

今回は、これまでBtoBで事業を行ってきたメーカーや卸の企業様がBtoCに進出した際に陥りがちなシステムの落とし穴についてご紹介しましょう。

BtoBで事業を行ってきた多くの企業様では、その規模の大きさから自社で基幹システムを持っていることが多く、そのシステムをそのままBtoC ECでも使用するケースが多く見られます。

BtoBでは、お客様によって掛け率を確認して決済を行ったり、どこの会社にまとめて配送するのかなど、『特定のお客様に対して、お客様毎に異なる値段で、お客様毎に個別の納品方法、決済方法で商品を売る』形態です。

しかし、BtoCのECとなると、『不特定多数のお客様に商品を売る』事となり、基本は「オーダーに対して誰にでも同じ値段で同じ待遇で商品を売る」形態が基本となります。ただし、顔も見た事も話をした事も無い方がお客様となるため、送り先の住所に間違いがないか、カートで入力された個人のクレジットカードが使えるのかといった受注ごとの確認作業は逆に重要となります。

またBtoBの営業、特にルート営業などにおいては、在庫を確認する事がお客様とのコミュニケーションとなっている場合がありますが、BtoCの場合は「在庫はサイト表記上の通りに存在していて、期限通りに出荷をする事が当たり前」となっており、在庫を確認する事に時間を費やして発送出来ない事は、お客様の不信にしか繋がりません。ECではオーダーに対して自動で正確に商品が引き当たる事、在庫数は瞬時に最新の物に更新される事がとても重要となります。

受注決済~売り上がるまでの流れが「BtoB」と「BtoC EC」はそもそも違うので、基幹システムがマッチしておらず、「基幹システムで対応できない業務を手動で対応する」といったことが発生してしまうのです。

事例:「BtoC」に進出したが、「BtoB」の業務フローのままで対応し、売上が伸び悩んでしまった企業

それでも日々積み重なる売上と顧客数に、何とか手動で対応していくことになるのですが、実際にはBtoBからBtoCに進出したものの、全然売上にならず、何が問題なのかが分からないといった事態が起こっているのです。

今回は基幹システムを例に取ってお話をさせて頂きますが、例えば売上伝票を起票する際に「顧客台帳」の登録有無をする必要がある場合が多く存在しますが、前述の通りECは不特定多数のお客様に商品を買って頂くので、そもそも顧客名簿を参照していません。逆にほとんどのお客様が新規ですから、こういった場合にいちいち顧客台帳に新規顧客として住所や電話番号を登録する事が手間であり、決済方法などBtoCは買い物毎に違う事も普通で、それを登録する事自体無意味だったりします。これは受注処理の担当者の大きな負担となります。

また、入出金もお客様毎に確認したりしません。決済を代行する会社や運送会社からの決められた期間の入金を一括で確認するようになっています。納品後にお客様毎に入金を確認して催促する行為自体がそもそも無いのです。これは経理担当者の負担となります。

イチ企業様の具体例ですが、とある企業は「出荷が1日10件しか出来ない」「物流倉庫に問題があると報告があがった」として、調査を行わせて頂きましたが、実際には物流倉庫側には全く問題が見つかりませんでした。むしろ「出荷指示が来ないし、遅い」と言っています。弊社で調査をさせて頂くと、実際には物流倉庫側の問題ではなく、受注から出荷までの業務フロー、基幹システムとのアンマッチに見えない課題を多く見つける事が出来ました

その課題とは、これまで通りBtoB業務フローを踏襲しているため、数多くの手作業に追われ、更に各部署基幹システムにお伺いを立てる必要があり、とてもBtoC ECの件数に対応できるものではなかったのです。

カートに注文が入ると、まず売上伝票を手動で作成、経理提出用に印刷までして、ECサイトの在庫は「前日のデータ」のため、正確な在庫は倉庫に問合せないと分からず、全注文分の在庫を電話で確認します。在庫があった場合お客様にようやく「注文受付」のメールが送信出来てやっとお客様に取引完了を約束出来ますが、しかし業務はこれだけでは終わりません。送り状や納品書も手動で作成・発行して倉庫に郵送します。なぜなら倉庫にはカートの受注データをそのまま取り込んで帳票するシステムが無く「電話で情報を交換するよりは確実だ」「FAXで送ると文字は霞んでミスになるし」「メールは倉庫業務担当がイチイチPCを所持していないので見れないため効率が悪い」などという理由です。また、普段は送り主をショップ名にするが、送り主と送り先が違う場合は送り主情報を表記する、などのBtoC特有の商習慣も更に業務を難しくしています。ようやく出荷指示を出すのですが、出荷後には基幹システムの売上伝票の数字やステータス更新まで行って、ようやく1取引が終わりです。ただでさえ煩雑な手作業が多い上に、各部署基幹システムにお伺いを立てる必要が多すぎて、1日10件程度の対応がやっとという状況だったのです

このような課題は「うちは業態や基幹システム的に仕方ない」と放置されている事も多いですが、実際受注管理システムを導入することでほとんどの業務を数万円以内で自動化することが可能だったりします。「基幹システム+EC受注管理システム」という組合せはもはやデファクトスタンダードとなりつつあり、売上/評価に繋がらない業務をなくそうと日々進化が進んでいます。受注後に在庫を自動で引き当てて、一括で納品書や送り状を帳票出来るのがECの標準です。それでもやはり「うちは無理だ」と思われるかもしれませんが、ECという販売チャネルを「1つのお店」「1人の顧客」「1つの銀行口座」と仮定して、基幹システムとの連携を想像すると出来ない事では無いという事もイメージして頂けるのでは無いでしょうか。

同じようなお悩みを持つ企業様からいつも.が相談を受けた際には、受注管理システム導入の提案を行い、膨大な手作業と紙ベースのやりとりを全て自動化、売上が見込める体制を築くことが出来ています。

幅広い視野を持つことで見つかる問題の本質

通常であれば上記の事例ような課題はすぐに発見できそうなものなのですが、規模の大きな会社になればなるほど、多くの部署にそれぞれの責任者を置いており、各部署の都合や些細な見落としが原因で、問題が表層化してこないという事が多くあります。

このように「何故かうまくいかない」という状況を打破するためには、あえて幅広い視野を持つ外部の目を入れることで一気に解決できる可能性があります

 

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