【今から始める】楽天店舗担当者の教育方法
楽天市場の店舗担当者を教育する際、1年前の知識はもう正しくない」ということが珍しくありません。特に最近の楽天市場では、ガイドラインの対応や新広告、新分析機能などの最新の情報を正しく理解して運用していくことが求められます。
そのため、新人やアルバイトの教育はもちろん中堅社員にも再教育の必要があります。しかしながら、教育にかけている時間は短期的に見ると利益につながりません。
「早く育てて戦力にしなくてはいけない」
「しかしミスをなくすためにも正確に理解させる」
これらを解決するためには、「教育スケジュールを組み、EC運営を順序立てて教えること」が重要です。
そのために企業・EC事業者は、自店舗運営の作業工数を可視化し、運営に必要な人材リソースを確認しなけばなりません。
EC担当者が必要とされる理由
ECサイトを運営する担当者は、専任の方を1名以上確保することをおすすめします。
実際にお客様からも、「数年前までは業務の合間で管理できていたEC運営も、ここ最近は1日何時間も費やす必要が出てきた」という声を伺います。
なぜEC担当者が専任で1名以上必要とされるのでしょうか?
EC市場拡大に伴い店舗出店も加速している
経済産業省が公表した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、日本のBtoC-EC市場規模(物販系分野)は、2020年の12 兆 2,333 億円(EC化率8.08%)から、2021年には13 兆 2,865 億円(EC化率8.78%)へと拡大しています。
2019年以前は物販系分野のBtoC-EC市場規模は、年平均0.5ポイント上昇で推移して来ました。しかし、2019年から2020年の間は1.32ポイント増、2020年から2021年はさらに0.7ポイント増加しており、市場が今後も拡大していくことが予想されています。
今まで「EC市場に参入していたものの、リアル店舗より施策の優先度が低かった」といったEC事業者も力を入れはじめ、ここ数年で様々なECプラットフォームに店舗を出店する企業も増えてきています。
EC市場規模の拡大は一見すると嬉しい兆候ですが、個別で見ていくと「新規参入企業の増加による顧客獲得コストの上昇」といった、マーケティング上のデメリットを発生させます。
競争が激化するEC市場では、新規顧客を獲得するために、各企業が広告の入札競争による見込み客の奪い合いとなるためです。
中小企業は正面から資金の潤沢な大企業に太刀打ちできないため、ニッチなキーワードで集客したり、既存顧客への対応を手厚くしてサービスの向上を図ったりする工夫が求められるのです。
ECサイト運営は業務量が多いが、人員は不足している
そしてEC運営担当者が必要とされるもう1つの理由が、「業務量に対して、人材リソースが足りていない」ことです。
EC運営担当者の仕事は、ECサイト構築や掲載商品の作成・管理といった「フロント業務」と、商品の受注管理や発送、カスタマー対応などを行う「バックヤード業務」に分かれます。
よく「EC運営の中で力を入れた方が良い業務はどれですか?」といった質問を受けますが、基本的にはEC事業をしっかりと成立させるため、「バックヤード業務を万全な状態に整えて、余ったリソースでフロント業務を補強していく」という回答になります。
しかし、先述したように、昨今のEC市場は競争が激化しているため、「バックヤード業務を万全にして、余ったリソースがあればフロント業務もやっておこう」といった状況で取り組んでいると、いつの間にか競合差は大きく開いてしまいます。
このような事態に陥らないために、バックヤード業務・フロント業務の施策をそれぞれ並行して進められるような体制を構築しましょう。
ここで一度、EC運営におけるフロント業務とバックヤード業務の内容を確認しておきましょう。
【フロント業務】
・ECサイト制作
・(CV向上のための)サイト導線改善
・商品写真作成・説明文作成などのコンテンツ管理
・販促施策関連
・広告管理
・検索エンジン対策
・口コミ管理
【バックヤード業務】
・ECサイトの商品登録・管理(フロントで行う場合あり)
・在庫管理
・梱包・発送
・返品対応
・クレーム対応
可視化しただけでも、EC運営は様々な業務で成り立っていることが分かります。
これらの業務をたった1人でこなすのは、プロでも至難の業といえるでしょう。
実際、ECサイトの運営では複数人体制で行われていることが多く、フロント業務・バックエンド業務それぞれに責任者が1人、2~3人のチーム体制をよく耳にします。
まずは自社のEC運営に必要な作業と工数を洗い出し、細かくタスク化して、作業担当者を分類するところから始めましょう。
(※もちろんEC運営に必要な人員数は、EC事業の規模によって変化します)
EC担当者の役割
EC担当者に求められる役割は主に2つです。
1つが、先ほど紹介した「フロント業務とバックヤード業務が円滑に進む体制づくり」で、もう1つが「自社ECサイトを分析し、施策を実行して売上アップを図ること」です。
まずEC事業を成立させるために、EC担当者はバックヤード業務の円滑化を図ります。
業務マニュアルがない場合は新たに作成する必要があるため、現在作業に当たっているスタッフにヒアリングし作業工数を可視化していきましょう。
その後に業務効率化を図る方法として、CRMツールの導入や、倉庫レイアウトの変更を検討していきます。
バックヤード業務が効率化された後に、もう1つの課題「自社ECサイトの売上アップ」に取りかかります。
分析をする際は初めに、流入キーワードごとのアクセス数・CV数・転換率を確認します。
各指標でカギとなっている流入キーワードを把握した上で施策を検討しましょう。
施策の例として、検索連動型広告(リスティング広告)の出稿や、特集記事を作成なども挙げられます。
EC事業がスタートしたばかりなら、フロント業務とバックエンド業務を円滑に遂行するだけで、売上は徐々に伸びていくことでしょう。
しかし、売上が月商300万、500万と伸びていくごとに、売上が伸び悩む「月商の壁」を経験することになります。
各EC店舗における売上が伸び悩む頃、EC担当者には「今あるアクセス数をどうやって売上へと繋げていくか(転換率アップの施策)」という課題が課せられ、施策を検討・実行していく必要が出てきます。
つまり、EC担当者の役割は、「EC運営の円滑化」から始まり、次に各EC店舗の規模や課題に応じた「売上アップの施策立案・実行」へと移っていくのです。
自社ECを含め、「EC運営担当者に求められていること」や「運営において注意しなければならないこと」などは下記の記事で詳しく紹介していますので、興味がある方はご一読いただければと思います。
関連記事:ECサイト担当者の業務内容と知っておきたい売上目標設定の考え方
楽天市場におけるEC担当者の業務上のポイント
ここからは「楽天市場のEC担当者」にスポットを当てて、運営のポイントを解説していきます。ポイントは下記の3点です。
- 検索最適化を意識した商品登録を行う
- 楽天RMSを活用する
- お気に入り機能を活用し、リピーターを獲得する
関連記事:【楽天出店の教科書!】楽天市場の出店の基本と成功事例
検索最適化を意識した商品登録を行う
実は、楽天市場における売上の約8割が検索から発生しています。
そこで、楽天市場のEC担当者は「検索最適化を意識した商品登録」を行うことが大切です。
楽天市場における検索最適化とは、楽天市場内の検索エンジンで特定のキーワードが検索された際に、自社商品が上位にランクインするように対策を行うことを意味します。
楽天市場で検索対象となる項目は下記といわれており、これらの項目に上位表示させたいキーワードを盛り込んでいきます。
- 商品名
- キャッチコピー
- 商品説明文
もちろん「狙っているキーワードを入れ込めば上位表示される」といったことはなく、商品の販売実績や口コミなども検索ランキングの評価対象となっています。
そのほか商品登録時に設定する「全商品ディレクトリID」と「タグID」も検索ランキングの評価対象です。
本来とは異なる全商品ディレクトリID、タグIDを設定すると、狙っているキーワードで上位表示されない事態に陥りますので、適切なIDを付与しましょう。
そしてもう1つ注意したいのが、上位表示を狙うキーワードは「単体キーワード」ではなく、「複合キーワード」を狙うことです。
例えば「ニューバランス」単体のキーワードには、「ニューバランス 996」や「ニューバランス 574」「ニューバランス サンダル」など、複数の検索意図が含まれているからです。
もし自店舗で取り扱っている商品が「ニューバランス996のキッズサイズ」しかない場合、様々な検索意図を含む「ニューバランス」で検索上位を取るのは難しいでしょう。
それよりも、「検索意図」と「上位表示させたい商品」がマッチするキーワード「ニューバランス 996 キッズ」を狙った方が、検索された際に上位にランクインする確率が高くなります。
楽天RMSを活用する
楽天市場に店舗を構えるEC事業者向けに、店舗運営システム(RMS)が提供されています。
楽天市場に店舗を出店しているEC事業者なら誰でも利用でき、楽天市場の店舗運営に必要な機能が1つのプラットフォームに集約されています。
【楽天RMSの5つの基本機能】
・店舗構築・・・テンプレートを使った商品登録・設定
・受注管理・・・注文内容の確認、決済状況、配送状況の確認
・メール配信・・・購入状況に応じたメルマガの配信
・データ分析・・・「アクセス数」「転換率」「客単価」の切り口から分析
・広告配信・・・楽天RPP広告(検索連動型広告)などの各種広告を出稿
楽天RMSの優れている点は、ECサイトの運営に必要な店舗構築機能や受注管理機能だけでなく、顧客とプラスαの関係を築く上で欠かせないメール配信機能、データ分析機能、広告配信機能が搭載されていることです。
仮に自社ECサイトでこれらの施策を実行しようとすると、店舗構築と受注管理は同じシステムでも、メール配信、データ分析、広告配信は別システム・ツールで管理することもあるでしょう。
楽天RMSなら、それらのシステム・ツールのデータ連携や、不具合の調整などを行う手間が省けるため、EC運営の業務効率化が期待できます。
お気に入り機能を活用しリピーターを獲得する
楽天市場の店舗運営で、ぜひやってほしい効果の高い施策が「お気に入り機能の活用」です。
楽天市場では、ユーザーが気に入った商品に対して「お気に入り登録」をうことで、商品を購入しなくても「クーポン情報」「ポイントアップ」「値下げ」「スーパーDEALへの出品」などの通知を受け取ることができるようになります。
店舗側はこのお気に入り機能を活用して、自店舗の商品に興味があるユーザーを抽出し、商品購入へのアプローチを行うことが可能です。
例えば、「商品A」にお気に入り登録したユーザーが50人いる場合、ポイント変倍を2倍、3倍と増やすことで、購入率を上げられます。
ポイント変倍の倍率は、同じ商品を取り扱う競合商品のポイント変倍を確認し、それよりもユーザーにポイントが還元される倍率を設定しましょう。
また、「楽天市場の店舗をしばらく運営しているが、自店舗のお気に入り登録数が少ない」といった状況の店舗様は、一度「お気に入り商品登録ボタン」のテキストや色を確認しましょう。
店舗様によっては、デフォルト設定がユーザーに視認しにくいものであったり、お気に入り登録を誘発しないテキストだったりするため、しっかりと自店舗の商品や雰囲気に合ったカスタマイズを実行してください。
企業側がすべきこと
楽天市場における店舗運営を前に、EC事業者様がすべきことについて下記にまとめましたので、参考にしていただけますと幸いです。
- 社内体制を整備する
- マニュアルを作成する
- 教育スケジュールを立てる
社内体制を整備する
前述した通り、ECサイトの運営には様々な業務が必要であり、1人や2人で対応できる業務量ではありません。
まずはEC運営に必要な業務量を正しく認識し、自社リソースで充てるべき人材と予算を算出しましょう。
もし「作業者の数を増やせない」といった問題を抱えている場合は、「楽天RMSの各機能を使って効率化できる作業はないか」「外部ツールと連携して自動化できる作業はないか」といった切り口で検討してみるのも良いかもしれません。
マニュアルを作成する
ただし、楽天RMSがいくら便利とはいっても、楽天市場における店舗運営マニュアルがなければ、作業者ごとに業務品質のばらつきが発生します。
また、担当者の異動や退職によっても運営ノウハウが失われる可能性があるため、業務マニュアルはしっかりと作成して置くことが大切です。
作成するマニュアルは「今後も変化がない作業」「今後変化が予想される作業」「常に流動的な作業」といった形で分類し、「今後も変化がない作業」から順にマニュアル化していくことを意識しましょう。
教育スケジュールを立てる
社内整備を行い、マニュアル作成を行った後は、下記の順で教育スケジュールを立てていきましょう。
1.EC運営について(リアル店舗と異なる点、売上の公式など)
2.EC運営の基本業務の理解
3.自店舗特有の業務の理解
まずは、EC運営がリアル店舗の運営とどう違うのか?を理解してもらう必要があります。
そしてECサイト運営に欠かせない「売上の公式(売上=アクセス数×転換率×客単価)」も例題を用いながらしっかりと解説しなければなりません。
EC運営の概要をおさらいした後は、EC運営の業務について教育していきます。
先述したようなフロント業務、バックヤード業務などの分類を使って大枠を説明し、その後に個別業務を説明します。
すぐに自店舗特有の業務について教育しても良いですが、新たに業務が増える際や、施策の改善を行う際に「EC運営の共通言語」が少なければ、担当者間で認識のズレに繋がります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。EC担当者の必要性や役割、教育方法までを説明してまいりました。
EC担当者はまず自身の業務理解を深めることから取組んでみてください。その際、バックヤード業務→フロント業務の順に対策を強化していきましょう。
また、余裕が出てきた際は、既存業務を並行しながら、EC売上を上げる対策を講じていくことも重要です。
各業務へ取り組む際、マニュアルの作成も併せて進めておくとスムーズな教育体制も構築できるので意識してみてください。