公開日:2022年3月8日

EC/D2C関連法制の基礎知識③~製造物責任(PL)法

EC/D2C関連法制の基礎知識③~製造物責任(PL)法

ECやD2Cに係るビジネスはB2B、B2CそしてC2Cとその形態を多様化しながらその取扱製品の種類・量ともに取引を拡大しています。またその拡大に伴い、様々な関連する法律による規制を受けるようにもなっています。

EC/D2C関連法制の基礎知識として、EC/D2Cを展開する上で注意すべき規制についてご紹介する本連載の第三回は製造物責任(PL)法についてご説明します。

製造物責任(PL)法

製品の欠陥によって人の生命、身体又は財産に被害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造業者等に対して損害賠償を求めることができるとする法律であり、1995年に施行されました。

製造物を「製造又は加工された動産」と定義しており、人為的な操作や処理が加えられ、引き渡された動産を対象としており、このため、不動産、電気、ソフトウェア、未加工農林畜水産物などは、この法律の対象にはなりません。

プライベートブランド商品やOEMで自社のブランドを付して製造させた場合でも、表示製造業者に該当し、製造物責任を負う対象となる場合があります

また、「業として輸入した者」もPL法における製造業者等に該当します。

無過失責任

無過失責任とは、製品に欠陥があり、その欠陥が原因で第三者が損害を受けた場合、製造業者等は過失がなくても、被害者に対して損害賠償責任を負うことを言います。

PL法制定以前は、民法の定めにより被害者は、製品の欠陥、企業の過失、欠陥と損害の間の因果関係の立証が必要でした。しかし、これには被害者が損害と過失の因果関係を立証する必要があり、製品に対する深い知識や情報が無ければ企業の責任の追求が難しいという問題がありました。

PL法では、損害があったこと、製品の欠陥、欠陥によって被害が生じた因果関係を立証できれば、製造者等の過失の有無に関わらず、被害者側が速やかに損害賠償の訴訟を起こすことができるようになりました。これにより、製造業者等は製品から表示まで、様々なレベルでの安全性への対応が求められることとなっています。

なお、PL法における「製品の欠陥」とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」とされ、製造物の特性や通常予見される使用形態、製造物を引き渡した時期などが考慮されます。

PL保険

PL法により、自社に直接の落ち度がなくても、製品を製造したり販売したりする業者が、巨額の損害賠償を負う恐れが発生したことからPL責任に対する対応策としてPL保険への関心が高まりました。

PL保険に加入していると、PL事故によって請求された損害賠償金や訴訟をするための費用などをカバーできるため、リスク管理策として活用されています。

事故発生地域を日本国内に限定したものが国内PL保険、輸出貨物に対する生産物責任を対象にしたものが輸出(海外)PL保険です。

国内PL保険

PL法が対象とする製造物の範囲について、製造・加工された動産に限定しているのに対して、国内PL保険は工業製品、農水産物等の全てが対象となり、完成品、未加工品、部品、原材料なども対象となります。また、仕事のミスに起因する賠償責任も保険の対象となるなど、国内PL保険はPL法に限らず、民法、商法等による損害賠償責任にも対応します。

国内PL保険の保険期間は原則1年で、保険期間中に発生した事故発生ベースでの損害賠償請求が対象となります。

賠償金はもちろん、保険会社の同意を得た訴訟費用及び弁護士費用であれば、勝訴、敗訴に関わらず保険の対象となります。

輸出PL保険

世界各国で通用している米国の保険約款(ISO)に準じた、英文の賠償責任保険証券が輸出PL保険です。

製造または販売した製品(部品含む)が原因で、海外で被害者に身体事故または財物損壊事故を発生させたことにより、法律上の賠償責任を負った場合に被る損害(損害賠償金のほか、訴訟諸費用も含む)をてん補するものです。

輸出PL保険では国内PL保険のように事故発生ベースではなく、賠償請求ベースで保険期間内において適用されます。

PL法は日米間でも被害者の立証責任に大きな違いがあり、一般に米国では被害者が提訴しやすく企業側の立証責任がより重く、その上、陪審員制のため被害者に有利と言われています。また、その内容によっては保険支払いが免責となる場合もあります。このように、各国によってその規定する内容と求められるリスク管理は異なりますので、事前によく確認をしておきましょう。

以上、EC/D2Cを展開する上で注意すべき規制としてPL法についてお伝えしました。

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