知っておきたい!「EC多店舗展開」の2022年度最新動向
皆さま、こんにちは。D2C・ECマーケティング支援を手がける「株式会社いつも」で執行役員を務めております高木修です。今回は、ECでの多店舗展開を行う上で、3大モールや自社ECサイトに続く、新たな展開先として注目される売り場についてのお話となります。これまでは、次のステップとして4番手、5番手のモールに出店するケースが見られていましたが、ここにきて、「クラウドファンディング」「LINEギフト」「ふるさと納税」「SNS」といった売り場を選ぶ企業も増えております。多様化する多店舗展開の選択肢について、それぞれどのようなメリットや成功事例があるのか、解説していきたいと思います。
新商品販売に特化したクラウドファンディング
まずは、「Makuake(マクアケ)」や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」に代表されるクラウドファンディングサイトについてです。以前のように知名度のある芸能人に限られた形の利用ではなく、メーカーさんのような一企業が一つの案件で数千万円を集めたという事例も聞くようになり、非常に環境が変わってきたと捉えています。
基本的にクラウドファンディングは他の売り場にはまだ登録していない新商品を扱うところです。そのため特徴的な機能性であったり、新しいコンセプトを持っているような商品がよく見られます。今は、食品や家電、雑貨など色々なジャンルが取り扱われており、顧客としても新しい商品を応援したいという比較的お金に余裕のある富裕層が集まっているようです。
マクアケのプレスリリースより引用(https://cp-mk-1.makuake.com/present_202203/)
以前は、実現したい夢に向かって、その支持を集めるために利用されている印象でしたが、今は新商品をぶつけるための最適な売り場という形になっている面があります。中には自社ECサイトよりもクラウドファンディングの方が売れているという事例も聞きます。
利用が拡大している理由には、もちろん売り上げが上がることがありますが、それ以外にも予約販売ができるという点です。通販において在庫のリスクがなく予約の形で新商品を販売できることは非常に魅力です。加えて、手数料についても20%以内のところが多く、コストメリットはあるでしょう。
また、前述の通り、顧客に富裕層が多いため、先進的なアイテムに興味を持っているということで、SNSとの相性が非常に良いと考えられます。販売される商品は何がしかの開発ストーリーなどを持って、それに共感した人が購入するという流れですから、話題としてSNSでも共有されやすくなる下地があります。実際に、クラウンドファンディングでその商品の販売を知らなかった顧客が、後にSNSで認知して公式サイトやモールで発売された際に改めて購入したという流れもあるようで、後々の販売拡大につながる効果も期待できます。新商品販売に特化した売り場と言えるでしょう。
LINEギフトの利用シーンに変化も
そして、次に取り上げたいのがLINEギフトです。こちらは食品ギフトなどが多いのですが、以前はコーヒーショップといったリアルでの飲食ギフトのイメージが強くありました。しかし、今ではリアルショップの商品をギフトとして贈れることが認知されはじめて、食品やスイーツ、花、酒類などがギフト利用としての選択肢に入ってきています。
そもそもの利用者が多いということも特徴ですが、リアルと連携していることでギフトとしての利用ハードルがそこまで高くないという点は大きいでしょう。加えて、ヤフーとも提携しているため、「Yahoo!ショッピング」に出店すれば、LINEギフトにもすぐ出店できるスキームにもなっているので、参加しやすいということは見逃せません。もちろん、総合モールではないため、すべてのジャンルを扱っているわけではあいませんが、特化している市場として注目されています。
ふるさと納税のメリットに注目
もう一つがふるさと納税の存在です。ここは本当に市場が大きく伸びていて、食品会社の利用がこれまでも多かったのですが、最近はインテリアなど少しずつ種類も増えています。一番の利用メリットはやはり、商品が値引き販売なく定価で売れることです。
基本的に、(自社の拠点などがある)市町村に申請して、その自治体が出店しているふるさと納税の各サイトで商品が扱われるという流れです。当社のクライアントで、上位4つのふるさと納税サイトに出店している自治体さんで取り組んだ事例があります。ふるさと納税サイトで、露出を高める際、広告を出せるのは出店者である自治体のため、商品を提供している企業が直接出稿することはできません。そこで、自社ECのハウスリストに向けて、販売が伸び悩んでいたふるさと納税サイトへの誘導を図るような告知を行いました。その結果、徐々に送客が伸ばすことができ、外部からでもきちんと露出を増やすことで売り上げを高めることができることが分かったのです。
また別のクライアントである大手化粧品メーカーの事例ですが、こちらもメディアで取り上げられるほど大きく伸びました。面白かったのが、この事例ではふるさと納税サイトとそのクライアントの自社ECサイトとの間でカニバリが起きなかったことです。
これはおそらく、顧客がそれぞれの売り場を利用する目的が違うからだと思います。自社ECサイトでは普段使いの商品を購入して、ふるさと納税ではせっかくだから滅多に買わない高価な商品を買おうという心理が働いているのではないでしょうか。顧客の方できちんと使い分けができているということです。
いずれにしても、食品でなくても化粧品のような商材でもふるさと納税で高いニーズがあったので、メーカーなどはぜひやってみるべきです。
インスタ経由の販売は今後も拡大へ
そして最後がSNSです。最近はやはりインスタグラム経由の売り上げがとても伸びています。インスタはたくさんの機能を持っていて使い方も様々あるのですが、大きくは2つの機能が使われています。まず、「タイムライン」機能で、ここに出てくる商品については、今はカタログ化している状況です。商品の紐づけの難易度が高くて挫折している会社もあるのですが、ここを乗り越えればインスタショッピングができるようになり、商品を探している人をうまく取り込めます。以前はアパレルが強かったのですが、今は飲食店などでも取り入れられているようです。また、「ストーリーズ」の機能ですが、これはプッシュ型なので、セールなどの告知をメルマガ代わりに行えるという形です。
インスタ自体のコンセプトが、好きなモノをもっと好きになるといった内容のため、そこを理解した形で投稿するといいでしょう。基本的にそのブランドを好きな人が見に来るわけですから、非常に購入につながりやすいと言えるでしょう。インスタ経由の販売は今後も大きくなっていくと思います。
拡大市場を見逃さない出店戦略を
まとめとなりますが、今まではECで売り上げを伸ばす際に、3大モールの次は、別のモールに出すという流れがありました。確かに売り上げは増えるので、やり方として正しい面もありますが、今、伸びている次の市場が出てきているので、そこを攻めることが大事になります。自社にとって新しい市場はどのようなメリットがあるのかを見極める作業は必要です。今一度、出店戦略を見直して、多店舗展開の新しいイメージを考えなければいけない時代になったのではないでしょうか。
※この記事は宏文出版株式会社の月刊ネット販売2022年5月号掲載の記事を基に再構成したものです。
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EC多店舗展開に関するよくある質問
- ECでの多店舗展開を行う上で、3大モール&自社ECに続く、新たな展開先とは?
- 「クラウドファンディング」「LINEギフト」「ふるさと納税」「SNS」といった売り場を選ぶ企業も増えております。
- ECでの多店舗展開においての考え方とは?
- まずはモール以外にも伸びている次の市場が出てきているので、そこを攻めることが大事になります。
また自社にとって新しい市場はどのようなメリットがあるのかを見極める作業は必要です。今一度、出店戦略を見直して、多店舗展開の新しいイメージを考えなければいけない時代になってきております。