公開日:2021年11月24日

【D2C・EC業界動向】アメリカEC市場の戦略から学ぶ今後の日本市場のポイント

みなさん、こんにちは。D2C・ECコンサルティングを提供する株式会社いつものコンサルタントです。

アメリカは、世界第2位のD2C・EC市場規模を誇っています。アメリカの2020年のD2C・EC市場規模は7,945億ドルで、日本の1,413億ドルの約5.6倍です(経済産業省・令和2年度電子商取引に関する市場調査)。

また、市場規模だけでなく、アメリカのD2C・EC市場は、日本と比べて2年先を行っていると言われています。

アメリカのD2C・EC市場の現状を知れば、世界最先端の事情が分かるほか、今後の日本の市場動向も予測可能です。今回は世界最先端のD2C・EC業界事情と、今後の日本のD2C・EC市場の動向を知りたいという方のために、現在のアメリカのD2C・EC業界や市場の特徴について説明していきます。

アメリカのEC市場の現状を把握しよう!

まずはアメリカのEC市場規模から見ていきましょう。

参考:経済産業省/令和2年度電子商取引に関する市場調査/2021年7月
出典:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf

アメリカのBtoCーEC市場は世界第2位の市場規模であり、2019年は6,017億USドル、2020年は7,945億USドルとなっています。

1位の中国とは約3倍の開きがありますが、3位以下の国々の市場規模を大きく上回っており、年々成長を続けています。

またEC市場規模と合わせて確認したいのが「EC化率」(全商取引のうちEC市場にて取引される割合)です。

EC化率を調べることで、その国のEC化への姿勢・積極性を考察したり、分野・ジャンル別のEC化率から今後の動向のヒントを得たりすることができます。

参考:経済産業省/令和2年度電子商取引に関する市場調査/2021年7月
出典:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf

2018年第1四半期に9.6%だったEC化率は2020年第4四半期において14.0%と4.4ポイント増となり、とりわけ2020年第2四半期には一時16.1%を記録するなど、高いEC化率を維持しています(日本のEC化率は2018年時点で6.22%、2020年は8.08%、1.86ポイント増であり、アメリカの伸長率の高さが窺える)。

レポート(「令和2年度電子商取引に関する市場調査」)では2020年第2四半期のEC化率について、「新型コロナウイルス感染拡大の影響による小売実店舗の閉鎖等によって急速なECへのチャネルシフトを経験した」為としています(p.121)。

その後のEC化率の推移を見るとやや下降気味ではあるものの、年平均約1.0ポイント増程の成長率だったEC化率は、2020年第4四半期時点で約2.0ポイント増の結果を生んでいます。

新型コロナウイルス感染症蔓延による外出規制などが、従来のライフスタイルに大きな変化を及ぼしたと推測できるでしょう。

参考:Rertail Indicators Branch, U.S. Census Bureau,February 19,2021より推計
注:調整前の単純集計値

また商材別のEC市場規模を見ると、「家具・建材・電子機器」のジャンルが前年比59.9%の拡大を記録しており、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響も受けて、居住空間の改善・充実度向上に取り組んだユーザーが増えたことが分かります。

「家具・建材・電子機器」のジャンル程ではありませんが、「衣類・雑貨」といったD2C・アパレル分野に関係するジャンルでも大きく市場規模が拡大しています。

いわゆる「巣ごもり需要」に追随する形で、従来オフライン販売が主流だったジャンルにもEC化の流れが出ているといえます。

さらにアメリカのEC市場の現状を知る上で欠かせないのが「ECサイト(ECモール)の市場規模ランキング」です。

アメリカの大手リサーチ会社「eMarketer」の「Top 10 US Retailers, Ranked by Retail Ecommerce Share, 2021」によると、アメリカのEC市場におけるシェアはAmazonが41.4%、2位のウォルマートが7.2%、3位のeBayが4.3%という結果になっており、2020年時点のアメリカEC市場におけるシェアはAmazonが圧倒的だということが分っています。

越境ECとして有名な「eBay」でさえ、EC市場の4.3%のシェアということからも、AmazonのEC市場シェアがいかに圧倒的かが分かるのではないでしょうか。

これまでの内容を要約すると、アメリカのEC市場の現状は以下のようになります。

  • アメリカのEC市場規模は世界第2位
  • 新型コロナウイルス感染症蔓延の影響も受け、EC化率は年成長2.0ポイント増
  • EC市場シェアはAmazonが41.4%で、2位のウォルマート(7.2%)に差をつけている

これらの内容を踏まえた上で、次の章に移りましょう。

結論!アメリカEC市場から学ぶ今後のポイント4つ

アメリカのEC市場規模の大きさ、成長率の高さを確認しましたが、アメリカのEC市場から日本が学ぶべき市場動向には一体どのようなものがあるのでしょうか。

詳細は後述していますが、結論からいうと以下の4つに分類できます。

  1. Amazon中心で回るアメリカEC市場
  2. 世界で注目される越境ECマーケットプレイス「eBay」
  3. 新たな勢力!Googleショッピング広告が注目
  4. 日本でも拡大中!アメリカで盛り上がるD2C市場

先述したように、アメリカのEC市場は「Amazon一強」の状態が維持されているような状況です。

しかしAmazonの一強状態はEC市場に限った話であり、オフラインを含めた小売全体の売上ランキングでは「ウォルマート」がトップを独走しています。

両社はそれぞれオンライン・オフラインの施策に力を入れており、小売市場全体における売上向上と、EC市場シェアの拡大に努めていると考察できます。

またこれからのECビジネスは国内の市場規模・シェアだけでなく、海外ユーザーに向けた施策(越境EC)も展開していかなければなりません。

越境ECとして有名な「eBay」は世界190カ国に展開している巨大ECプラットフォームであり、個人・法人問わず様々な商品を出品、購入することができます。

アメリカのEC市場シェアでも第3位(4.3%:Top 10 US Retailers, Ranked by Retail Ecommerce Share, 2021 より)に入るeBayの今後の展開・発展にも注目する必要があるでしょう。

そして急速なEC市場の拡大、EC化率の上昇により、ECビジネスを行う事業者同士の競争が激化している現状があります。

アメリカではAmazonのEC市場シェアが圧倒的であるため、集客力を高める意味合いからAmazonプラットフォーム上にショップを構えるブランドも少なくありません。

しかし様々な事業者がECビジネスに参入してきた結果、既存の集客施策や販売手法で生き残れない事業者が出てきたのも事実です。

アメリカではこうした市場のうねりの中で、D2C(Direct to Consumer)という新しい販売戦略を持ったブランドが多く誕生しています。

D2Cブランドは「サステナビリティ」や「ブランドの共創性」をキーワードにコアなファンを獲得し、EC市場上で徐々にシェアを拡大している注目の存在といえるでしょう。

以上のアメリカEC市場の動向から、日本のEC市場の未来を考えることで、ECビジネスを行う事業者が今取るべきアクションが見えてきます。

アメリカとの共通点、異なる点を整理し、起こり得る変化を予測していきましょう。

Amazon中心で回るアメリカEC市場

アメリカの市場シェア38.7%!Amazonの圧倒的勢力

アメリカのD2C・EC市場の特徴の1つが、Amazonが圧倒的なシェアを占めているという点です。アメリカの大手リサーチ会社「eMarketer 」による「2020年のアメリカ企業のEコマース売上高ランキング上位10社(2020年2月)」の予測によると、EC市場シェアはAmazonが38.7%を占めており、2位以下の「Walmart(ウォルマート)」「eBay(イーベイ)」「Apple(アップル)」「The Home Depot(ホームデポ)」「Wayfair(ウェイフェアー)」「Best Buy(ベストバイ)」といった企業を大きく引き離しています。

図1:2020年のアメリカ企業のEコマース売上高ランキング上位10社(2020年2月)
出典:emarketer.com(Top 10 US Companies, Ranked By Retail Ecommerce Sales Share, 2020)

 

AmazonがD2C・ECの枠を超え、リアル小売業界にも進出!

D2C・EC市場で世界トップの座にいるAmazonは、リアルの小売業界への進出にも力を注いでいます。
Amazonは2017年に、食品小売業の大手である「ホールフーズ・マーケット」を買収しました。最近は生鮮食品の即時配送サービスを強化しているほか、試験的に無人店舗の運営も始めています。

このようにAmazonはD2C・ECの枠を超え、リアルへの影響力も強めているのです。

とはいえオフライン市場におけるAmazonのシェアは未だ低く、トップを独走するのは「ウォルマート」となっています。

オンライン・オフラインを含めた小売売上高ランキング(2020年度)ではウォルマートが大差をつけて2位のAmazonに勝利しており、Amazonの取り組みはまだ始まったばかりといえるでしょう。

出典:NRF/Top 100 Retailers 2021 List/2021年9月27日更新
https://nrf.com/resources/top-retailers/top-100-retailers/top-100-retailers-2021-list

Amazonは広告!?アメリカD2C・EC事業者のAmazon活用方法

アメリカの多くの事業者は、膨大な顧客を持つAmazonを広告媒体として活用することで売上を伸ばそうとしています。Amazonに広告を掲載して、マーケットプレイス内の自社ショップに誘導するのはもちろん、Amazon広告から外部の自社ECサイトにユーザーを集める動きも広がっています。

Amazonは、アメリカのD2C・EC市場シェアの約4割を占めているだけでなく、有料会員プログラムである「Amazonプライム」でも2億人以上(Amazon公式)という顧客基盤を持っています。膨大な数の見込み客が集まるAmazonは、今やショッピング広告のプラットフォームとしても大きな役割を担っているのです。

世界で注目される越境ECマーケットプレイス「eBay」

eBayはAmazonが創業された同年1995年にアメリカでオークションサイトとして設立され、現在では世界最大規模のマーケットプレイスです。eBayの市場規模は、2020年ではアメリカのD2C・EC市場で3位、ヨーロッパのD2C・EC市場ではAmazonに次ぐ2位のシェアを誇っています。
eBayの特徴は大きく分けて2つあります。1つ目は、法人に限らず個人でも出品できることから様々な商品が販売されており、現在では15億商品がeBayから世界中に出品されています。
2つ目は、 全世界190カ国に展開しており、世界中で法人・個人問わずeBayで商品の売買が行われています。
これら2つの特徴から、越境ECを目指す世界中の企業にとっては、eBayは海外の販路拡大を目指す上で重要なマーケットプレイスと言えるでしょう。
売上高ではAmazonに届きませんが、掲載商品数・出品国数ではeBayの方が圧倒的に多いことから、今後もeBayの動向を注目していきましょう。

新たな勢力!Googleショッピング広告が注目

世界中で「Googleショッピング広告」の利用が進んでいます。

Googleショッピング広告とは、Googleの検索結果に検索したキーワードに関連する商品の画像や価格、スペックなどが表示される「検索連動型広告」です。

EC専門メディア「Digital Commerce 360」の「How Google Shopping can help retailers reach the world’s web shoppers」によると、広告主は、有料検索広告やテキスト広告よりもGoogleショッピング広告に多くの支出を費やしていることが分かっています。

支出増加は有料検索広告が昨年比17%増、Googleショッピング広告が昨年比24%です。

さらに有料検索広告などのテキスト広告よりも、Googleショッピング広告の方が30%程コンバージョン率が高いことが分かっています。

これはGoogleショッピング広告が画像ベースのフォーマットであることに起因しており、特にテキスト広告がアプローチしにくい越境販売での普及が見込まれています。

ショッピングが目的のユーザーにとって、キーワードにマッチした商品の画像や価格が直接表示されるGoogleショッピング広告は利便性が高いといえます。

eBayと同様に、国外のEC市場へとアプローチする際の足がかりとして今後注視すべき存在といえるでしょう。

日本でも拡大中!アメリカで盛り上がるD2C市場

小売業界の衰退から生き残りをかけた戦略がD2C

アメリカでは現在、ブランドメーカーが自社の製品をサイトなどで直接販売する「D2C(Direct to Consumer)」が活発化しています。アメリカでD2Cが広がっている背景には、Amazonの台頭により、量販店が次々に駆逐されている現実があります。
ブランドメーカーは、本来の商品の売り先である量販的の衰退を受けて、エンドユーザーに直接商品を販売するD2Cによって生き残りを図っているのです。アメリカでD2Cを採り入れているブランドメーカーの成功事例については、以下の記事をご覧ください。
【調査報告】米国と日本のDtoC(D2C)の違い。ネット直販時代にどう対応するか?

ブランドメーカーが活用するD2CではSNS活用がポイント!

D2Cを採り入れているブランドメーカーでは、直販の強みを活かし、顧客データをマーケティングや「CRM(Consumer Relationship Manegement)」に活用しています。CRMとは「顧客関係管理」のことで、顧客の情報を管理することで、それぞれの顧客に商品販売の最適なアプローチを取る手法です。
一人ひとりの顧客に最適なアプローチを取ることにより、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益である「LTV(Life Time Value)」を高められるのがD2Cの特徴の一つです。

D2Cのもう一つの特徴は、プロモーションに従来のテレビCMやWeb広告よりも、SNSを積極的に活用している点にあります。D2Cの主なターゲットは、人口ボリュームが多く、消費意欲も高い「ミレニアル世代」です。ミレニアル世代はデジタルネイティブでもあり、スマホやSNSを日常的に使っているため、SNSを活用したプロモーションが有効だと言われています。

ここまでSNS活用の重要性を説明してきましたが、D2CにおけるSNSの具体的な活用法についての情報を探すことは簡単ではありません。

株式会社いつもは、D2Cにおけるアメリカ・日本のブランドメーカーのSNS活用事例から、SNS媒体別の事例まで以下の記事で紹介していますので併せてご覧ください。

SNSをフル活用してD2Cを成功させる具体的方法まとめ

アメリカから推測する日本の今後のEC市場動向

アメリカのEC市場動向から、日本でも今後EC市場の拡大・競争激化が推測されます。

日本ではアメリカのような「EC市場におけるAmazonのシェア」や「ウォルマートの独走状態」はありませんが、徐々にD2CブランドのEC市場におけるシェア拡大や、新しい販売手法の登場を経験することになるでしょう。

EC事業者はこうした市場動向を注視し、D2Cブランドの立ち上げや、新しい販売手法の実践など、様々な方法を検討していく必要があるといえます。

まとめ

世界第2位のD2C・EC市場規模を誇るアメリカ市場には、以下4つの特徴があります。

1)Amazonを中心に回っている

2)掲載商品数・出品国数が最大規模のeBayが存在する

3)Googleショッピング広告が注目されている

4)D2Cが活発化している

これらのうち、Googleショッピング広告やD2C・ECは日本のEC市場でも注目されています。また、Amazonに限らず世界に台頭するeBayからの注目も目が離せません。日本の2年先を行くと言われているアメリカでGoogleショッピング広告やD2C、eBayが活発化している以上、2年後の日本でも同じような状況が起こるかもしれません。日本のEC市場には「楽天市場」があるため、日本のAmazonがアメリカのように圧倒的なシェアを得る確率は低いと言えます。しかし、だからこそ現在の日本では、Amazonでの競争率もアメリカほど高くはありません。

長期的に考えて、今のうちにAmazonを活用しておくのも有効な手段の一つだと言えるでしょう。


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