ベストセラー本「2025年、人は「買い物」をしなくなる」の出版背景
なぜ、「2025年、人は「買い物」をしなくなる」を出版したのか?
「新買い物論」を提唱する著者が語る
いつも.取締役副社長の望月です。「2025年、人は「買い物」をしなくなる」というタイトルで書籍を出版しました。出版に至った背景を中心に、今感じることをお伝えします。
書籍出版を通じて多くの方にお伝えしたかったこと
「小売・メーカー・ECで今まさに起きているイノベーションを伝える」ということが本書のテーマです。
「デジタルシェルフの衝撃」というキーワードを通して、マーケッターではない、学生・主婦・新社会人のような方からすべてのビジネスパーソンの方々にも、消費の変遷やトレンドをわかりやすくお伝えするため、あえて難しい話はゼロにしました。
私は、ECが大好きです。これから日本のECが更に盛り上がる一助になればと思います。
『ショッピング体験の発展で、人々は「買い物」をしなくなる―。』
これが本書の書き出しです。人々の生活の中で、買い物は欠かせない経済活動の一つ。買い物なしでは、生活に必要な衣服や食材、電化製品も手に入らず、企業だってビジネスが成り立ちません。そんな中、買い物をしなくなるなどと言うと、「ショッピング体験をしているのに『買い物がなくなる』とはどういうことだ」と矛盾を感じる人だっているでしょう。しかし、間違いなくその時代は訪れると予測しています。それも、遠い未来ではなく、近い未来に。
日本でネットショッピングを利用する世帯が1割を超えたのは2005年のこと。私はその翌年の2006年からEC(Eコマース=電子商取引)におけるマーケティングの仕事に携わっています。そんな私が本書を出版するきっかけとなったのは、デジタル先進国である米国・中国の定期的な視察を通して、“デジタルシフト”はここまで進むものかと衝撃を受けたことがきっかけとなりました。
米・中・日で起きている実店舗の減少とEコマースの関係、そしてAmazon・D2C・サブスクリプションの波や5G・AIなどのテクノロジーがもたらす変化など、ポイントとなるキーワードを網羅しながら、「EC×デジタルマーケティング」というカテゴリの専門家として、今伝えたいことを本書に込めました。
これから始まる新たな『棚』の奪い合い、これまで100年続いた店舗の棚で商品を買ってもらうという小売の常識とは大きく変化するそのインパクトを本書のテーマとしてお伝えしたいと思います。
本書でお伝えしたいこと
本書ではまず、第1章として「買い物」という行為の面倒な部分を排除し、ショッピング体験を進化させることで、人々が「買い物」をしなくなると考えるその理由を、皆様にも具体的にイメージして頂ける形でお伝えします。さらに次の章からは、これまでの「買い物」がどう発展してきたのか、今、何が起こっているのか、そして次に何が起こるのかについて述べていきます。
第2章では、「買い物」の発展を過去から現在まで一気におさらいすることで、消費者や企業の変化にスポットを当てて解説します。第3章では、世界のリーディングカンパニーの事例をもとに、これからの日本でどのような「棚の奪い合い」が行われるのかを読み解き、第4章では弊社が提唱する、スマホを中心に、あらゆるデバイスが商品棚となる「デジタルシェルフ(棚)」という概念を多角的に説明しながら、デジタルシェルフシフトのインパクトと影響について予測していきます。そして、第5章で人々が「買い物」をしなくなったその先の未来についても触れています。
「デジタルシェルフ」について
これまでマーケティングの世界で商品が並べられる「棚(シェルフ)」は、実際の店舗にあるのが当たり前でした。都心の一等地にある百貨店、109・パルコなどの都市型専門店、イオンやセブン&アイグループなどの郊外型GMS・ホームセンター・ドラッグストアから、近年ではイオンモール・ららぽーとなどの大型郊外モール、ユニクロ・ニトリなどの郊外型専門店が該当します。
そこから2000年前後に多くのEコマースが登場し、PCの中に「デジタル棚」が出来上がり、今や日本でも小売消費全体の10%弱にまで広がっています。さらにその「デジタル棚」は消費者の「手のひら」であるスマホへと移行しているのです。スマホ消費が広がったわずか10年で大きく消費行動は変わってしまいました。例えば、今まで定期的に買い物をしていた実店舗ですが、「そういえば、最近、〇〇〇に行かなくなったよね」もしくは「ショッピングモールには行くが、映画見たり・フードコートで食事はするけど、その場で商品を買うことは少なくなったよね」などと感じている方も多いのではないでしょうか。
もちろんこれらの動きは我々も数字で捉えており、頭では分かっていた事です。しかし、米国・中国での視察では、その想像を遥かに超える所までデジタルシフトは進んでおり、そのリアルさに衝撃を受けることとなります。これが本書のタイトルに「デジタルシェルフの衝撃」を入れた背景にあります。
皆さんのまわりでも、このような劇的な変化の一端は感じられるようになっているはずです。これまで百貨店やブランド専門店で買い物をしていた人が、ショッピングアプリで検索し、おすすめ商品・セール商品に刺激を受けながらネットショッピングするようになり、ネットでのカード決済や電子マネーなど、現金払い以外の決済方法で支払うようになりました。音楽や映画も定額制の配信サービスを利用し、車を持たない代わりにカーシェアサービスを利用する人も増えています。ネットオークションやフリーマーケットアプリで中古品を売買し、商品の実物を見ずにネットの口コミを参考にして購入することも当たり前のように行われています。すでに10年前とは明らかに買い物の仕方が変わっているのです。
アメリカで先行している変化
ここ数年でEC消費比率が15%に近づいたアメリカでは、百貨店・スーパー・専門店といった小売業界が試練に直面しているのも、これらが対応しきれないスピードで変化しているからだといえるでしょう。
例えば、「検索する」という概念は当たり前のものとなっていますが、これもいずれなくなるかもしれません。サブスクリプションのように勝手に商品が届くこともそうですが、Amazon Echoに代表される音声認識デバイスや、IoT家電など、あらゆる生活の情報が吸い上げられ、検索の概念を薄れさせる方向へと作用しているのです。
生活で不足した商品を補充する際にも、店舗へ買いに行く機会は減っていますが、今後はわざわざその商品を「検索すること」も、スマホで商品名を入力することすらなくなり、音声認識デバイスに「いつもの注文して」と伝えるだけになるのです。他にも、AIから「このような商品はどうですか?」とレコメンドされたものを購入するようにもなっていくでしょう。こういったショッピング体験が当たり前になれば、PC・スマホの「デジタル棚」すら一等地ではなくなる時代になることが予測できます。
従来の「買い物」という概念が変わる
このように、従来の「買い物」という概念はとてつもないスピードで変化し、売り手も次々と変化を起こす社会に対応せざるを得なくなるのです。本書のタイトルでも「2025年、人は、買い物をしなくなる」としておりますが、従来の「実際お店に行く、お店で商品を探す、お店で接客を受ける、お店でお金を払う、商品を持ち帰る、お店のファンになってリピート訪問する」という「買い物行動」をしなくなるという意味で提言させていただきました。デジタルシェルフの進化により多くの商品行動が「実際のお店に行く回数が減る、アプリ・SNSで商品を知る、デジタル情報で商品詳細を理解する、口コミを見る、電子決済で支払う、商品が家に届く、コンビニに取りにいく、「いつもの」でリピート購入する」という全く違うスタイルになっていくことは確実となります。
メーカー・ブランドのマーケティング手法も変わる
このような流れは商品開発にも大きな影響を及ぼします。これまでは売る側がマーケティングデータ・消費者ニーズ調査・商品開発者のアイデアや仮説をもとに、「次はこういう商品が欲しいでしょ?(いい商品ができたので、買ってくださいね!)」と商品開発したものを、そのまま莫大なコストをかけて宣伝し、実店舗の棚を確保してきました。しかし、今後はダイレクトに消費者が欲しいものを作るという動きが活発になります。変化の激しい若者のニーズを掴むため、SNSやECプラットフォームのレビューなどから、欲しいもの・着想・改善意見を吸い上げてそのまま作る方が、莫大な広告費用をかけたマーケティングよりも売れてしまうような結果も出てきているのです。
また、投資判断に影響する分析手法も大きく変わります。従来のPOSデータを中心とした実店舗販売動向やシェアだけでなく、大手ECプラットフォームのシェア、SNS・レビューなどの口コミデータなども含めた分析が必須となります。
以前、あるメーカーからの依頼を受け、実店舗で販売せず、ネット経由のみで商品を売る「オンラインブランド」というコンセプトを形にするべく、何度もアメリカに渡り調査を進めました。アメリカではちょうど、無名のメーカーが広告費を使わずに大手メーカーを苦戦させているという現状があり、実際に500社ほど無名ベンチャーのメーカーを調べてみると、日本の大手メーカーとは異なるアプローチをしていました。
彼らは若者が直接メーカーから商品を買ったり、「こういう商品をつくってほしい」といった意見を拾い上げたりすることに積極的で、ネット上で影響力を持つインフルエンサーの活用もうまく、SNSでインフルエンサーが商品を紹介すれば、それが飛ぶように売れているのです。日本に戻った私は、さっそくこれらを参考に「オンラインブランド」の専門支援部署を立ち上げ、マーケティングに取り掛かった結果、支援したブランドは、わずか1年という短い期間で、それまで実店舗で売れていたギネス販売記録を破るほど売れたのです。
買い手と売り手の変化が何をもたらすのか
買い手のショッピング体験の変化は、売り手の販売戦略にも大きな変革を迫る時代には、例えば楽天市場・Amazon・Instagram・Twitterなどの良い棚(デジタルシェルフの一等地)を戦略的に取りに行く必要があります。
デジタル化・EC化の先進国である、アメリカ・中国で起きている「店舗棚の減少」「DtoCモデルの台頭」「デジタル棚へのシフト」ですが、ここにきて日本の小売業界の動きを見ても、大手アパレル企業の200店舗以上の閉店・赤字決算、大手小売企業の2000人以上削減などにより、急速に実店舗棚が減少しデジタル棚へのシフトが起きています。また、ユニクロやニトリといった製造小売系の企業は、自社商品でEC比率を10%程度まで引き上げています。
イオンや大手コンビニはPB商品強化が続く中で、メーカー・ブランド商品が実店舗で優遇される状況は無くなってきていることからも、メーカー・ブランドはDtoCモデルへ変革しながら、自らデジタルシェルフの一等地を確保する必要がでています。
もはやショッピングの選択権はマス広告を打つ大手メーカーや有名ブランドではなく、消費者が握ると言って良いでしょう。しかも遠い未来の話ではなく、ECとマーケティングの最前線で既に実感としてそう感じているのです。私はこれからも、マーケティングの最前線からその変化を確かめ、さまざまな情報発信をしていこうと思っています。まずは本書にて私が感じた「デジタルシェルフの衝撃」とその温度感を感じて頂ければ幸いです。
「2025年、人は「買い物」をしなくなる」¥1,628(税込み)
[著者]望月 智之(株式会社いつも.共同創業者 取締役副社長)
創業以来現在まで数多くの企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、ブランド企業に対するデジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。
関連情報
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書籍「2025年、人は「買い物」をしなくなる」の紹介:https://itsumo365.co.jp/books/2025.html
[著者]望月 智之の紹介:https://itsumo365.co.jp/blog/author/mochizuki/
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