知っておきたい! 2022年度版ソーシャルコマースの最新動向
皆さま、こんにちは。EC事業の総合支援を行う「株式会社いつも」で執行役員を務めております立川哲夫です。今回は、新しい潮流として注目される「ソーシャルコマース(クリエイターエコノミー)」の動向を中心に触れていきたいと思います。CtoCやPtoCも含めた内容にはなるかと思いますが、クリエイターやYouTuber(ユーチューバー)、TikToker(ティックトッカー)など、企業ではなく特定の「個人」に勧められた商品を購入するという流れは、今後広がりを見せていくことが予想されます。通販業界に及ぼす影響などについても考えていきたいと思います。
先行するビームスやワークマン
B印MARKET(https://www.fashionsnap.com/article/2022-02-17/bjirushi-market/)
※画像はビームスのリリースより引用
先日、ビームスさんが、自社のスタッフ個人がセレクトしたお勧め商品を販売するサイト「B印MARKET」を立ち上げました。
運営はビームスさんが行っているのですが、スタッフさんを“個人商店”の店主として位置付け、各々が勧める商品を紹介していくという内容です。「ビームスが勧める商品」ではなく、「ビームスの〇〇さんが勧める商品」と言う切り口で訴求しており、スタッフのキャラクター化ということでもあるのかなと思います。
また、ビームスさんの事例とは異なりますが、ワークマンさんでもアンバサダーを起用したマーケティングを積極的にされています。これは、キャンプや釣りなどアウトドアが好きな方のInstagram、TwitterやYouTubeなどで多くのフォロワーを持つ影響力のある方に商品を提供して広く紹介してもらい、そこから商品を知った消費者に購入してもらうという流れです。メーカーやブランド側が「これは良いですよ」というDtoCの形で勧めるのではなく、個人が勧めることで売りにつなげるということでしょう。時にはトップアンバサダーの方が「欲しい」と言われたアウトドア商品を忠実に取り入れて、実際に作って販売もしているようです。
購入に関しては、ワークマンさんの店舗や通販サイトで行っているため、まだ“企業目線”は残っていますが、これがゆくゆくはアンバサダー個人で企画して販売までもするようになるとPtoCの形により近くなるのかもしれません。ちなみに、PtoCはユーチューバーやインスタグラマーなど、事業者よりも個人に近い人が商品を企画・監修したりして、自分のブランドとしてお勧めし、そこから消費者が認知して購入するというものです。
ワークマンさんが取り組まれているモデルの場合、従来からあるアフィリエイトとの違いとしては、売れた分の成果報酬などをアンバサダーに支払っていないということです。純粋にワークマンさんのブランドが好きで支持しているアンバサダーさんに協力してもらい、商品サンプルを提供して使ってもらい、良いところだけではなく、改善案も含めて率直な意見を発信してもらっているということです。
人からのお勧め商品を買う割合が増加
これは昨年度、当社で20代~60代までの男女各100名程度(回答数1285人)に行った消費者調査ですが、そこで実に興味深い結果が出ております。
まず、「あなたの好きな有名人(芸能人やYouTuber、TikTokerなど)やSNSでの友人がおすすめする商品を買ったことはありますか」を聞いたところ、「よくある」との回答が2.6%、「ときどきある」が17.6%となり、2割程度が購入していることが分かりました。
回答を性別・年代別で見ていくと「よくある」とした回答の比率が一番高かったのは15~19歳の女性で13.1%。次いで20~29歳の男性で2.9%となりました。「ときどきある」との回答も15~19歳の女性がトップで43.0%となっています。若い世代で顕著となった一方、40代、50代、60代の男女ではこうした動きはほとんど見られませんでした。
さらに、この質問で「よくある」「ときどきある」と回答した人たちに「3年前に比べてその頻度に変化はありますか」と聞いたところ、「増えている」が53.7%と半数以上あることも分かりました。最も回答数が多かった15~19歳の女性で見ると、実に63.3%の人が増えたとしており、男性でも最も回答数が多かった15~19歳では45.7%が増えたと回答しています。
これは、ECにおいて若年層で「無検索」からの流入が増えているといことに関連しているのだと考えられます。ブランドや企業名などで商品検索して購入するのではなく、YouTubeやTikTokなどを見て「この人たちが勧めるなら買う」といったスキームの中で流入しているという動きが読み取れます。
CtoCやPtoCのプラットフォームが成熟
今回の話と大きく関連することとして、CtoCやPtoCを舞台にクリエイターブランドなどのECでの売り場が年々成長を続けているという状況があります。「ハンドメイド市場規模」と「オリジナル製品の受託製造」を合わせた2020年の市場規模について、顕在化している当社ではおよそ400億~600億円程度あると推計しております。
個人が手がけたもの、もっと分かりやすく言いますとこれまで芸能人などが「プロデュース」や「仕入れ」という形で企業側に立って販売していたような商品を、企業を介さずに自分たちで企画して創造し、直接売るようになっていっているということです。企業からすれば、それが数百億円の市場規模になっていると考えるととても脅威になると言えます。
この背景としては、CtoCやPtoCのプラットフォームが整備されてきていることがあります。個人で販売から決済まですべてを行うのは信用の問題やハードルもありましたが、「minne(ミンネ)」や「Creema(クリーマ)」、または「BASE (ベイス)」などのプラットフォームができたことで、その受け皿となっています。表現する場所や消費者との接点についても、YouTubeやTikTokなどが充実してきたため、経済圏として成長する環境が整ったと言えるでしょう。
「個人」を立てて売り出す方法
先ほどの調査結果でも見られたように、若年層が従来とは異なる買い物の仕方を続けていくようになると、GoogleやSNS、仮想モールを使って自分たちの売り場に引き込むというこれまでのやり方も見直す必要が出てきます。
その時に備えて、今から本当にフラットな関係性を保てる個人のアンバサダーさんと接点を持ったり、企業内でもスタッフ個人を軸とした情報発信に切り替えるなどの準備は必要となっていくでしょう。個人を立てる手法は、比較的、アパレル業界では進んでいる印象ですが、中には社長自身が前に出て販売するということも少なくないので、まだまだ「企業」としての発信とあまり変わりケースもあるのかもしれません。
以前から言われているように、「ライブコマース」は今後も伸びていく市場だと思いますし、消費者から支持を得ているスタッフなどがそうしたところで顔を出して販売していくことは一つの方法として考えてみても良いのではないでしょうか。
※この記事は宏文出版株式会社の月刊ネット販売2022年4月号掲載の記事を基に再構成したものです。
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ソーシャルコマースに関するよくある質問
- 2022年ソーシャルコマースの新しい流れとは?
- 商品検索して購入するのではなく、クリエイターやYouTuber(ユーチューバー)、TikToker(ティックトッカー)など、企業ではなくより特定の「個人」に勧められた商品を購入するという流れになってきている。
- ソーシャルコマースの企業の活用例とは?
- 一つはアンバサダーの活用です。ただしアフィリエイトなどとは違い、成果報酬などをアンバサダーに支払っていないということです。
純粋にブランドが好きで支持しているアンバサダーさんに協力してもらい、商品サンプルを提供して使ってもらい、良いところだけではなく、改善案も含めて率直な意見を発信してもらうという活用です。
その他詳しい記事はページにて。
https://itsumo365.co.jp/blog/post-18168/