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「ブランドスイッチの法則」を著者が解説 ~「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなる~

「ブランドスイッチの法則」を著者が解説 ~「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなる~

いつも.のEコマース戦略コンサルタント 田中宏樹の初となる著書「ブランドスイッチの法則」の解説と本の中では書ききれなかった執筆背景について解説しました。

著書「ブランドスイッチの法則」の執筆背景

「ブランドスイッチの法則」を著者が解説 ~「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなる~

――まず、書籍を執筆した背景について教えてください。

EC運営において、「HOW TO」ではなく、ノウハウの本質をまとめたかった背景があります。心理学や行動経済学がECビジネスに応用できるにもかかわらず、これらをまとめた実践的な情報は意外にも少ないのが現状です。手法を紹介している本はたくさんありますが、どれも「著者が独自のノウハウを持っているからこそ成り立つ」という前提で、実際は現場担当者のセンスに任せるといった感じがありました。

本来は、様々な知識と個々の経験が結びつき、それが体系的なノウハウとなることが多いです。そこで、僕のコンサルティング経験を融合させながらこれらの情報を整理することで、より本質的な情報を提供できるのではないかと思い、執筆に至りました。

――「HOW TO」と「ノウハウの本質」にはどんな違いがあるのでしょうか?

例えば、「リピート率」。
現場担当者の中には、リピート率は上がり続けるものと信じている人が多いです。でも、リピート率の正体は、その商品・ブランドが好きかそうでないかだけなんです。しかし、ブランド側は「自分たちの商品は買われているんだから好きだろう」という前提でリピート率が上がると考えているわけです。

自分の生活に置き換えてみましょう。20歳の時に買っていたシャンプーを30歳になった今も使っているでしょうか。40歳になった時も使い続けるでしょうか。新ブランドはどんどん出てきますし、ライフステージや悩みも変わりますから、上がり続けるわけがないんです。

3ヶ月前のリピート率が20%だとして、キャンペーンで特典をつけたり、安くしたりすることで、理論上は一時的に数%上げることはできますが、それは「本質的にリピート率が上がった」とは言わないですよね。買った人は使った後に「お得だから買ってみたけど、私には必要ないかな」と気付くわけです。(これを本書では「知覚価値」と呼んでいます。)

本書P.8に記載本書P.8に記載

事前期待値のコントロールは価値が上がる可能性も非常に高いので必要ですが、それが結果的に顧客満足を下げる可能性もあるわけです。よく現場では、「100人中20人しかリピートしていないので理論上あと10人は増やせるだろう(HOW TO)」という会話がされます。データだけを見るとそういう考え方になりますが、実際にリピート率を決めるのは競合との関係や顧客の非合理的な行動に左右されるわけです。このように、リピート率がなぜ上がらないのか(ノウハウの本質)を言語化できる人は少ないのです。

書籍出版を通じて多くの方にお伝えしたかったこと

――書籍ではどんなことを伝えているのでしょうか?

お伝えしたい大きなテーマは、「『売れている商品』は、なぜ売れているのか?」の答えです。

本書ではまず、第1章として「ブランドスイッチとは何か?」について解説しています。ブランドスイッチが起こる背景やそれを踏まえた戦略の重要性、そして「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなる時代にブランドが考えるべきことをお伝えしています。第2章と第3章では、消費者がブランドを選ぶ基準や商品を買わないシンプルな理由を消費者の心理行動と実際のデータを用いて解説し、第4章から第6章で、前章を踏まえて購入意思を最大化する方法や他社へのブランドスイッチを防ぐ方法、ECサイトでも使える心理テクニックを利用しながら、商品満足度ではなく全体の満足度を向上するための考え方を提唱しています。第7章と第8章では、成功するブランドのマインドやそのために必要なチーム作りについても触れています。

ECでモノを売るということは、パーセンテージの掛け算なんです。ファーストビューで好印象を持っている人が、前のページやコンテンツよりも1~2%良かったら、そのままスクロールしてくれる可能性も上がりますね。キャッチコピーだけでなく、視覚の印象やフォントの大きさでクリック率も変わりますし、何%の人がどこで離脱したのか、全部掛け算で仕掛けが出来上がっています。これらの掛け算にこだわっていくと売上が上がるということを、私のコンサルティング実戦経験や実際のデータを用いて解説しています。

――何故「ブランドスイッチ」を題材にしたのでしょうか?

消費者行動は常にブランドスイッチの連続だからです。
例えば、育毛シャンプーを使っていたけど、育毛剤を試してみたり、発毛剤にしてみたり、専門のクリニックに行く場合もありますね。ブランドスイッチはプロダクト同士だけで発生するものではありません。

ブランドスイッチする消費者の本当な理由は、「今より良くしたい、幸せになりたい」なんです。そして、人それぞれにブランドスイッチする理由があります。ブランド側は常にこれと向き合っていくことが大切です。ブランドスイッチされる可能性を1個でも2個でも多く知っておけば、マーケティング上有利ですし、リスク回避に先手を打てます。

結局、このブランドが一番好きだと思っていない限り、消費者はブランドスイッチします。恋愛や人間関係には道徳がありますが、消費財にはないと心得ておくべきです(笑)

――「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなるとはどういうことでしょうか?

よくマーケティングとプロダクトアウトの両軸で会話されることが多いですが、大切なのは「どのように商品を売ったら選ばれやすくなるか」にフォーカスしてマーケティングが設計されていることです。売れていないブランドに共通する点で言うと、「どうしたらもっと効率的に売れますか?」「広告費は何千万しかないけど、これぐらいの売り上げにいきたいです」という会話から入ることが多いです。

別に間違いではないのですが、何故この商品を売るのかという動機や、この商品が何に役立つのか、幸せにしてくれるのかが消費者に伝わっていないんですね。そういった態度はページ上に反映されていたりします。先ほど話していたパーセンテージの掛け算がここでマイナスポイントになるし、ここから周辺のものにも影響していきます。結果的に、「理由がよく分からないけど選ばれにくいブランド」が生まれてしまいます。

主語がブランドになってしまっている考え方だと、マーケティングやページにどうしても出てしまうんですよ。消費者に「自分に必要なブランドなんだ」と思ってもらえるようなやり方に変えていかなければなりません。

マーケティングに関わる読者へメッセージ

「ブランドスイッチの法則」を著者が解説 ~「ブランド」が主語のマーケティングは通用しなくなる~

『売れている商品は、なぜ売れているのか?』の答えはズバリ、消費者側にどう思われたいかを考えているか否かです。

僕自身、リピート率を上げるために200を超えるブランドで試行錯誤した結果に行き着くまでに6年の歳月をかけています。その裏では色んなCRMを組んで分析して、「うわ。こんなにやっても意外と変わらないんだ」という結論を何度も何度も繰り返してきたので自信をもって言えます。もちろんこの記事を読んでくださっている皆さんも、色んな観点で研究していらっしゃると思います。本書を答え合わせに使ったり、施策の判断材料として使ったりしてもらえたら嬉しいです。

起きている事象には何かしらの理由があります。ですから、成功するブランドになるために必要なチーム力として、関わるメンバー全員が曖昧な会話を卒業して、バナー1つ作る際にも何のためにやっているのかを言語化できるようにすることが大切です。

ECはチームです。運営自体は一人でもできますが、必ずそこには協力者がいます。製造する人がいて、運送する人がいて、消費者がいる。消費者と一緒にブランドを作るという流れでD2Cという言葉ができましたが、まだまだブランドが主語になっている会社は多いと思います。

ECという分野と心理学をしっかりと融合させた本として手に取って頂けたらと思います。この本が消費者主語のブランドを考えるきっかけとなれれば嬉しいです。

著者情報

田中
田中宏樹(たなか ひろき)
株式会社いつも Eコマース戦略コンサルタント

株式会社いつもが行う運営代行・運営サポートにおいて、年商 200 億円を超えるブランドから年商 1,000 万円のブランドまで、累計 200 を超えるブランドのコンサルティングを担当。独自メソッドを導入しながら店舗の売上を着実に伸ばしている。執筆に関わった書籍として『EC 担当者 プロになるための教科書』(マイナビ出版)などがある。

関連情報

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書籍「ブランドスイッチの法則」の紹介 :https://itsumo365.co.jp/books/brand-switch.html
取材・講演についてのお問合せ :https://itsumo365.co.jp/contact_03.html

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