公開日:2021年2月24日

『買い物ゼロ秒時代の未来地図』著者が解説(前編)~直近1年の買い物の変化と新キーワード~

買い物ゼロ秒時代の未来地図』の著者 でいつも.取締役 副社長 望月 智之が前著『2025年、人は「買い物」をしなくなる』に続く二冊目となる新著書の内容と本の中では書ききれなかった「買い物の近未来」に関してインタビュー形式で解説します。

本記事は、前編と後編に分けてお送りします。前編では、同著書の執筆の背景や意図、直近1年での買い物の変化、新たな買い物の仕方のキーワードなどについてお送りします。

『買い物ゼロ秒時代の未来地図』の執筆の背景

執筆の意図は?

望月 まずは執筆の背景ですが、一冊目の主題が「2025年、人は買い物をしなくなる」というテーマでした。実店舗での買い物自体にまだストレスがあり、デジタル時代とかスマートフォンが普及することによって、買い物の仕方がどんどん変わって行くという話をまとめています。

2冊目については1冊目の反響もあって、読者の方から「もっと買い物って楽しい部分があるよね」というご意見をいただき、確かにそれは仰る通りだなと思うことがありました。
そこで今回の主題としては、自動化する買い物、どんどん効率化する買い物の中にも楽しい買い物ってあるのではないか、というところをひとつの主題にしています。

読者の方が仰る通り、買い物には楽しい面もありますが、普段頻繁に買う日用品などは、より便利に買いたいという面もあり、この2つが共存しています。その楽しい買い物は今どうなっていて、これからどうなっていくかということについて、アメリカと中国の事例を中心に書かせて頂いたというのが執筆の背景になります。

書籍のタイトルは、「買い物ゼロ秒時代の未来地図」ですが副題を「2025年、人は買い物をしなくなる〈生活者編〉」としました。

この意図としては、今回コロナのこともありまして、デジタル化がより早く進んだということをどなたも感じていると思います。これから買い物自体がどうなっていくのか、それを「未来地図」という形で皆さんに提示できればと考えました。今後の予測的なところも含めて解説をしていければと思ってこのタイトルにしたわけです。

実際ここ1年で買い物はどう変化したか?

望月 まさに2020年、実店舗の買い物の弱さとか不便さがかなり顕著になったのかなと思っています。元々、海外のトレンドを見ていると実店舗の閉店とか閉業とか、不況はずっと言われていて、これは日本においても水面下で進んでいました。これがコロナで一気に進み、恐らくコロナが収まったとしても、Eコマースで買うことは増えていくでしょう。そういった実店舗自体の買い物の弱さとか、そういった店舗が本当になくなっていくのかというところの捉え方をまた発見する1年だったかなと思っています。

もう一つは、「やっぱり買い物自体、面白いよね、楽しいよね」という再発見もありました。例えば昨秋ころコロナが一旦収束しかかったときに、皆さん店舗に行ったりとか地方の旅館とか観光に行く動きがありましたよね。買い物の中にある楽しさを皆さんやっぱり知っていて、そこは改めて発見されたのかなと思っています。

新たな買い物の仕方のキーワード

6つの買い物の仕方とは、どのようなものか?

望月 詳細は著書をご覧いただければと思いますが、そのなかでデジタル時代の買い物をテーマに6つの買い物の仕方というのを提示しています。

これまで買い物は、ウィンドウショッピングをするというのが代表格だったと思いますが、このデジタル時代において、ウィンドウショッピングというのはほぼ消えたと私は思っています。店舗に行って何か新しい商品がないかとか、フラフラして発見したら楽しいみたいなことはオフライン上では見られなくなりました。

逆にオンライン上にそういった楽しみが移っていたりとか、ウィンドウショッピングにおける不便さみたいなのがデジタル上の買い物に起こってきていて、それを今回私なりに6つに区分しています。

例えばウィッシュリストショッピングと定義しているものがあります。皆さんがオンラインで買い物する際、迷った商品があったら一旦買い物かごに入れたままにしたり、アパレルなどではウィッシュリストというお気に入り登録をして、後で見返したりとかする習慣がすでに普通にやられていると思います。これはオフラインのウィンドウショッピング時代にはとてもできないことでしたよね。

お店を超えて物を持ち歩くこともできないですし、そういったものがデジタル時代においては当たり前に起こっています。その中で企業さんやメーカーさんがどうやってその消費者に対応していくのか、そうしたことをデジタル時代における買い物として典型的なものとして、6つ提示しています。

言葉にしてみれば、当然みなさん生活の中でされていることなので、ごく普通のことなのですが、こういう買い物の仕方に対してのマーケティングとか販売の方法というのが対応できているかと言うと、今がまさに変わり目なので、これからまだまだ変革できる可能性があるのではないかと思っています。

発見系コマースと目的系コマースとは?

望月 発見系・目的系コマースは、前著にも提示しましたが、ほとんどの買い物は自動化されていて、必要だと思った瞬間には届いているぐらいの便利さが求められています。お店にわざわざ10分・20分かけて行くのは面倒くさいですし、それを持って帰ってくるのも面倒くさいという商品が多くて、これが私が定義してる目的系と言われるものです。

発見系と呼んでいるものは、自分でも普段ここ今1年ぐらいで買ったものを改めて見てみると、必ずしも自分が必要だと思って買ったものばかりではなくて、たまたま見たとか、人に「こんな商品があって良かった」と聞いたりして、だから「買ってみたい」と思って買ったものが当然たくさんあるわけです。そういったものが私の中で、発見系コマースという風に定義しています。

なぜわざわざこの2つを、この本の中で定義しているかと言うと、実は買い物ってその物自体が必要だから買っているというよりも、買い物自体に1つの目的というか楽しみがあって、それに基づいて人って買い物をしているんですよね。

これは、本の中でも「ショッピングパーパス」という風に定義しているのですけれど、例えば恋人や友人と買い物に出かけるときに、自分の物ではなくて恋人とか友達に買ってあげるという場合の「買い物」は、自分が欲しい物を買う訳ではなくて、相手が喜んでくれることだったり、一緒に買い物に行くという事自体を楽しんでいたりしますよね。

そういった買う物というよりも、買う行為自体に目的や価値があるという風に捉えています。それが楽しい買い物だったりすると、発見系ということになります。普段自分が買い物をする時、日常使うものがなくなったら買ったり、補充目的で買うことが多いわけですけれど、そういった買い物の仕方を定義したいというところで、2つ提示させて頂いております。

後編につづく

『買い物ゼロ秒時代の未来地図――2025年、人は「買い物」をしなくなる〈生活者編〉』
著者:望月智之
編:クロスメディア・パブリッシング
定価:本体1,628円(税込)
発売:2021年1月29日

【目次】
・第1章:2020年、私たちの買い物はこう変わった
・第2章:生活者をつなぐ口コミはどう進化したか
・第3章:EC先進国の米中で今、起こっていること
・第4章:リーディングカンパニーが最前線で仕掛けていること
・第5章:2030年、買い物の未来

詳細はこちら

望月智之
望月智之
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。
東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつも を共同創業。
自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費の専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、ブランド企業に対するデジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

番組ナビゲーターを務めるニッポン放送「望月智之 イノベーターズ・クロス」のほか、J-WAVE、東洋経済オンライン、ダイヤモンド・オンラインなど、メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。著書に『2025年、人は「買い物」をしなくなる』、『買い物ゼロ秒時代の未来地図』がある。
サービス資料4点セット