公開日:2021年11月26日

拡大し続ける世界のEC市場と越境EC。規模拡大の背景に巣ごもり需要の急増が!

みなさんこんにちは。EC/D2Cコンサルティングを提供する株式会社いつものコンサルタントです。

世界規模でのパンデミックの影響により、外に出ずにネットを活用して買い物を行う「巣ごもり消費」が人々の経済活動の一環となりつつあります。

この影響は非常に大きく、世界のEC市場へ大幅な成長をもたらしています。

中でも越境EC市場は、「越境ECの認知度が上昇したこと」、「自国にはない商品が手にはいること」、「場合によっては自国よりも安価に商品を購入できること」などから、今後特に成長が見込まれています。

今回は世界1位の市場を持つ中国・アリババ。さらに世界2位のアメリカ・アマゾンの動きと共に、世界のEC市場の現状と今後の成長見込みについてご紹介します。

1) 世界EC市場の市場規模とEC化率

2020年以降、世界のEC市場はかつてない変化を経験しました。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、世界中の人々が外出を自粛したことから、「巣ごもり需要」が生まれ、実店舗売上と反比例してEC上での売上が増加したのです。

後述するように、日本では2020年の物販系分野BtoC-EC市場規模が12兆2,333億円(EC化率8.08%)を記録しており、2019年の10兆515億円(EC化率6.76%)から約2兆1,818億円の拡大、伸長率は21.71%となりました。コロナ禍の影響を受けて「サービス分野」は減少、「デジタル分野」は3,192億円の成長に留まっていますが、巣ごもり需要の追い風もあり、物販系分野のEC化率は例年の約0.5ポイント成長から、約1.3ポイント成長へと加速しています。
EC化率の成長度合いを踏まえ、市場規模は少なくとも「約1.2兆円の底上げを実現した」とされています。

参考:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

またアメリカでも2020年の第2四半期に小売実店舗の閉鎖や、外出制限・外出自粛の影響から、急速なデジタルシフトを経験しています。
つまり世界規模でほぼ同時期に「ECの売上が上がり、実店舗の売上が下がる」という現象が生まれ、小売業者やその他実店舗でBtoCビジネスを営む業者は経営レベルでの対応を迫られたのです。
アメリカのEC化率は2020年第1四半期まで11.8%だったものの、第2四半期で16.1%に増加、その後第3四半期で14.2%、第4四半期で14.0%と減少しましたが、年間約1.0%成長だったEC化率はコロナ禍の「巣ごもり需要」をきっかけに約2.0%成長となりました。とりわけ家具・建材・電子機器の売れ行きが良かったことを鑑みると、多くの人々が家の中での過ごしやすさ・快適性を意図してECプラットフォーム上で購入したと推測できます。

引用元:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」『商材別のEC市場規模』

同調査レポートによると、世界のBtoC-EC市場規模は、2019年3.35兆USドル(約328兆円)、2020年4.28兆USドル(約488兆円)、2021年は4.89兆USドル(約558兆円)の見込みとなっており、年間100兆円規模で今後も拡大が予想されています。
コロナ禍の巣ごもり需要で多くのユーザーがECプラットフォームに慣れ、ECプラットフォーム上での買い物を今後さらに様々な分野で求める声が挙がることでしょう。もはや全ての事業者にとって、EC市場の拡大は無視できないものとなったといえます。

1-1) ますます成長する世界のEC市場

今後も世界のEC市場規模は拡大が見込まれています。経産省の同調査によると、世界のBtoC-EC市場のEC化率は、2024年には21.8%まで上昇すると予測されています。今以上にECでの販売が前提とされていくことになることでしょう。

また市場規模も2022年の約688兆円から、2024年には約811兆円への成長が見込まれています。特に小売分野のEC化が今後も進むと予測されており、小売業者はECへの参入が必須となっていきます。

1-2) EC市場規模は中国が圧倒!中国とアメリカが世界を牽引

2020年の国別のEC市場規模を見てみましょう。経産省の同調査によると、世界のEC市場で最も売上が高いのは中国です。

引用:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

中国のEC市場規模が2019年で1兆8,015億USドル(約206兆円)だったのに対して、2020年は2兆2,970億USドル(約262兆円)と約28%の増加率です。

一方、2位のアメリカは前年比32%増と増加率こそ高いものの、売上は7,945億USドル(約90兆円)。中国市場と比較すると1/3程度となっており、規模で比較すると中国が圧倒していることが分かります。
中国とアメリカの2カ国が世界のEC市場の約8割を占めるという結果で、3位のイギリス以下の国を大きく引き離す結果となっているのです。

1-3) EC化率も中国が圧勝!アメリカは「巣ごもり需要」で急激なデジタルシフトを経験

引用元:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

引用元:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

気になるEC化率も中国がアメリカに圧勝しています。

先述したように、アメリカは2020年第2四半期にコロナ禍の巣ごもり需要を背景に急速なデジタルシフトを経験しましたが、それでも中国のEC化率には及びません。EC市場規模世界第2位のアメリカのEC化率は一時16.1%を記録しますが、同時期の中国のEC化率は31.3%、2020年第4四半期でも31.6%と、31%台をキープしています。この数値は中国国内における商取引のうち、実に3分の1がECプラットフォーム上で取引されていることを意味しており、中国におけるECの浸透度合いがいかに圧倒的なものかが分かる結果となりました。

また中国におけるECの浸透度合いが分かるデータとして、「商材別のEC市場規模前年比伸び率」があります。

引用元:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

この表は中国における商材別EC市場規模について、2020年を基準に前年比での伸び率を表したものです。全ての商材で市場規模が拡大しているのが分かりますが、特に「家具、建材、ガーデニング用品等」の伸び率が高くなっています。同様の現象は先述した「アメリカの商材別EC市場規模」でもみられ、コロナ禍の巣ごもり需要(居住空間への投資として家具、建材、ガーデニング用品等を購入したい、といった需要)から伸びた商材だといえるでしょう。

また、このデータで注目したいのが「化粧品」と「食品」です。日本ではEC市場で成長率が低い「食品・化粧品」が、中国では約30%程の伸び率を達成しました。

例えば、中国のAlibabaグループが運営する「盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)」などでは、以前からオフラインとオンラインを融合した新しい小売事業を展開していました。
この盒馬鮮生では、コロナ禍以前から「ECで注文した商品を半径3Km以内であれば最短30分で配送するサービス」を展開しています。(盒馬鮮生HP 参考)

しかし生鮮ECサービス分野は中国でも不調で、消費者はECプラットフォーム上で生鮮食品を購入することはあまりございませんでした。こうした中、コロナ禍の厳しい外出規制を機に、自由に外出できない消費者の居住団地の前にサービスステーションを設置し、食品や日用品を受け渡す施策を展開しました。食品や日用品を実店舗で購入できなくなったタイミングで、実績とユーザーの信頼を積み上げECプラットフォーム利用率は急増したといいます。

これに対して日本では中国ほど厳しい外出規制がなかったために、日本食品や化粧品といった商材のEC化が進まなかったと推測できます。とはいえコロナ禍以前からECプラットフォームを活用した販売戦略を採用しているAlibabaグループ・盒馬鮮生の取組事例には学べることが多いにあるでしょう。

2) 日本でもEC市場が拡大

世界のEC市場の変化と同様に、日本のEC市場も2020年から大きな変化がありました。

経産省の同調査によると、世界のEC市場の中での日本の順位は、市場規模の順位は前年と変わらず4位です。しかし成長率は、2018年から2019年が9.2%増であったのに対して、2019年から2020年では21.7%と大幅に増加しました。2016年から2019年までの平均成長率は1桁台後半であったので、日本でも巣ごもり需要によって約10%程度が底上げされた計算となります。

また日本のEC市場規模は2019年の1,235億USドル(約15兆6,000億円)から、2020年には1,413億USドル(約17兆9,000億円)となっており、日本円にして4兆円弱の市場規模拡大となりました。トップを独走する中国やアメリカには遠く及びませんが、日本のEC市場も着実に市場規模を拡大しています。

以下の表は2020年度の日本のネット通販(EC)売上高ランキングを示したものです。アメリカのEC市場でトップを独走する「Amazon」が日本のEC市場でも独走状態であり、「楽天市場」は1,500億円で第5位となっています。

引用元:日本ネット経済新聞「2021年度版 ネット通販売上高TOP500」(10位まで抜粋)

今後も拡大を続けていくと予想される日本のEC市場ですが、経産省の同調査によると、「食品、飲料、酒類」や「化粧品、医薬品」といった商材でEC化率が伸び悩んでいます。これらの商材はコロナ禍の外出規制の影響を受けつつも、実店舗での購入が続いた商材といえるでしょう。他の商材に比べて遅れを取っていることは確かですが、捉え方によっては「伸びしろが大きい」ということでもあります。各商材を取り扱う食品業界の今後の成長、施策展開に注目しましょう。

出典:経産省「電子商取引に関する実態調査」2021年7月、より弊社が加工作成

2-1) スマートフォン経由のEC利用が50%越え!今後の鍵はリレーション!?

EC市場の現状として、今までPCからECサイトを利用していたユーザーが減り、スマホ経由のユーザーが増加しています。
2020年には、スマートフォン経由のユーザーは50.9%となり、過半数を上回りました。今後もこの流れはさらに進んでいくものと予測されています。

スマホアプリを訴求することで、従来のメール通知とは異なったアプリ内での通知を可能にし、消費者とのより強いリレーション(関係)を構築することが期待されています。

引用元:経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」p.63

3)  越境EC市場は50兆円規模へ!毎時の平均成長率は30%以上!?

越境ECとは、自国から海外に対してECを通じて商品を販売することを指します。
経産省の同調査によると、越境ECの市場規模は、2019年時は7,800億USドル(約89兆円)と推察され、2026年には4兆8,200億USドル(約550兆円)とも言われています。
これは、毎年の平均成長率にすると約30%であり、世界のEC市場の成長規模を上回るペースです。

このような成長率が推察される背景には、「越境ECの認知度が上昇したこと」、「自国にはない商品が手にはいること」、「場合によっては自国よりも安価に商品を購入できること」などが挙げられます。

4)  Alibaba、Amazonが市場を席巻!今後の動きは?

世界のEC市場規模・EC化率を確認し、中国とアメリカの二強状況が続いていることが分かりましたが、その二国のなかで一際大きな存在となっているのが中国の「Alibaba」と、アメリカの「Amazon」です。両企業の国内における圧倒的なECシェアが分かるデータが以下となります。

eMarketerが報告したレポート(Top 10 US Retailers, Ranked by Retail Ecommerce Share, 2021)によると、2020年のアメリカEC市場シェアは以下のような結果となっています。

アメリカでECプラットフォームといえば「Amazon」といわれるほど、AmazonのEC市場での存在感は絶対的です。アメリカのオフライン店舗では大手小売チェーン「Walmart(ウォルマート)」が優勢ですが、ECシェアではAmazonが41.4%、Walmartが7.2%と約6倍の開きがあります。その下の越境ECプラットフォーム「eBay」で4.3、iPhoneで有名な「Apple」で3.8%となっていることから、Amazonがどれだけ圧倒的なシェアを誇っているか、お分かりいただけるのではないでしょうか。

また同じくeMarketerが報告したレポート(Top 6 Companies in China, Ranked by Retail Ecommerce Sales Share, 2021)では、2020年の中国EC市場シェアは以下のような結果となっています。

中国でもアメリカのように「Alibaba」(47.1%)がトップを独走しています。2位の「JD.com」が16.9%、3位の「Pinduoduo」が13.2%と健闘しているものの、その開きは約3倍あり、中国におけるAlibabaのシェア率の高さが分かるでしょう。Alibabaは先述したOMO型小売店舗「盒馬鮮生」を運営している企業で、中国の様々な地域にサービスを拡大しています。世界のEC市場でも圧倒的な市場規模を誇る中国のなかで、さらに独走状態となっているAlibaba。今後の経営戦略、施策展開から目が離せません。

4-1) Alibabaの今後の動き

日本貿易振興機構が2021年6月に発表した「中国 EC 市場と活用方法」によると、世界最大手の流通を誇るAlibabaは、2019年に同国の大手ECプラットフォームKaolaを買収しました。この結果、売上は約741億USドル(約7兆8,000億円)となり、同国シェアはAlibabaグループが約半数を占めることとなりました。

4-2) Amazonの今後の動き

一方、Amazonは豪州のSelz(セルズ)の買収や、日本の日本貿易振興機構(ジェトロ)との連携など、海外ECのプラットフォームの確立と越境ECの強化など多角的な裾野の拡大を図っています。

まとめ

これからも大きな成長が見込まれる世界のEC市場そして、越境EC市場。

巣ごもり需要の世界的な増加は、2020年度に日本へも高い成長率の要因となりました。今後国内ではリレーションの構築、海外へは越境ECへの挑戦が鍵になりそうです。

日本が持っている物流の力や商品力を活かして越境ECに挑戦することができれば、より高い成長率を見込めるはずです。ぜひ他国のデータを参考に、海外進出に取り組んでみてください。

世界のEC市場に関するよくある質問

成長する世界のEC市場のトップは?
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